
"損保ジャパン本社に立ち入る金融庁の職員ら=2023年9月19日午前9時55分、東京都新宿区、柴田悠貴撮影"
中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求問題で、金融庁は19日午前、保険代理店としての同社と損害保険ジャパンに対し、保険業法に基づく立ち入り検査を始めた。検査期間は数カ月かかるとみられている。金融庁はどういう目的で検査に入り、検査官らは現場で何をするのか。事前に日付まで予告したのはなぜなのか。
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「ただ今より金融庁検査を行います。ヨロシクね」 歌舞伎俳優の片岡愛之助さん演じる、金融庁の黒崎駿一主任検査官らが東京中央銀行を訪れ、出迎えた頭取らに言い放つ――。
2013年に放映された人気ドラマ「半沢直樹」の一幕だ。黒崎検査官はときに嫌みや難癖を言いながら銀行の実態を調べ上げる。
では、実際の検査ではどうなのか。
ドラマと同じように主任検査官が任命され、検査部隊を指揮する。検査部隊は、立ち入り先の企業の一室に拠点を構え、書類や電子データを確認したり、幹部らに聞き取りをしたりして、問題の実態把握を進める。
金融機関が健全な業務運営をできているのかや、顧客保護が徹底されているのかを調べるのが目的だ。銀行法や保険業法などでは、こうした観点から必要な場合、金融庁が立ち入り検査できると定められている。
立ち入りは予告なしでも可能だが、たいていのケースでは事前に通知する。今回も両社に事前に伝えており、鈴木俊一金融相は今月12日の閣議後会見で、19日に立ち入り検査を始める予定だと明らかにした。
警察・検察など司法当局による強制的な捜査と違い、検査は金融機関の理解と協力があって実施できる、との前提からだ。
通告後、立ち入り検査までの間、不都合な資料を廃棄したり隠したりすれば、処分はより重くなる可能性がある。
検査では、削除されたメールなどを復元する「デジタルフォレンジック」も駆使する。こうした隠蔽(いんぺい)行為が発覚すれば、「検査忌避」として行政処分や刑事罰の対象にもなりうる。