
許可を受けた猟銃・空気銃と所持者
長野県中野市で発生した銃器を持った男による立てこもり事件。銃刀法では、銃や刀剣類を所持するには都道府県公安委員会の許可を受けることを義務付けている。銃所持には厳しい条件が課せられているが、今回の事件を受け銃規制の在り方を問う声が上がりそうだ。
県警によると、青木政憲容疑者は平成27年1月~31年2月、散弾銃など猟銃3丁、空気銃1丁の所持許可を受けた。所持目的は「狩猟」と「標的射撃」だった。
許可を受けるには、銃の取り扱い講座や試験、射撃場での実訓練のほか、申請時には医師の診断書添付が必要となる。毎年実施される一斉検査や3年に一度の更新手続きでは警察官が所持者に面談する。
銃に改造を施した場合やアルコール・麻薬などの中毒者、他人の生命や自殺をする恐れがあると認められる場合などは所持の許可が取り消される。令和3年は46件がその対象となった。
長崎県佐世保市で平成19年に起きた猟銃乱射殺傷事件では犯人が実弾計約2700発を所持していたことが判明。診断書添付などの規制強化の契機となった。
警察庁によると、許可を受けた猟銃・空気銃は事件前(18年末)に33万9109丁だったが、令和3年現在、17万7719丁と半減。昨年3月には、ボーガンと呼ばれるクロスボウ(洋弓銃)の所持を原則禁止し、許可制とする改正銃刀法も施行された。
所持者の言動が不審な場合は、近隣住人が地元の公安委員会に申し出ることができる銃刀法の規定もある。警察庁関係者は「住民から情報が寄せられれば積極的に動いている。説得して銃の所持をやめてもらう場合もある」と強調した。だが、所持者の調査には一定の時間がかかるといい、京都産業大の田村正博教授(警察行政法)は「すぐに許可を取り消せるわけではない。調査期間中は一時的に許可を停止し、銃を預かる制度を検討すべきだ」との見解を示した。