経産省、世紀の大失策...無茶苦茶なコロナ対策のせいで、日本は衰退へ

経産省、世紀の大失策...無茶苦茶なコロナ対策のせいで、日本は衰退へ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/10/18
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新型コロナウィルスは、日本経済に大打撃を与えた。1ヵ月以上の自粛期間が原因となって、一部の業種では倒産も相次いでいる。日本政府は感染の実態を正確に把握できていなかったばかりか、有事の経済政策でも後手に回ったと、経済アナリストの森永卓郎氏は指摘する。そんな森永氏の新刊『なぜ日本経済は後手に回るのか』から、責任の一端を担う経済産業省の失策について一部編集のうえ紹介する。

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過去の栄光にすがる経済産業省

経済産業省は、かつて通商産業省と呼ばれ、絶大な権力を握っていた。それは、「産業政策」を握っていたからだ。産業政策=インダストリアル・ポリシーという言葉は、かつて海外では通用しない言葉だった。自由主義経済では、経済活動を直接政府がコントロールすることなど、あり得ないからだ。

しかし、1980年代までの日本では、産業は通商産業省の指揮下に置かれていた。たとえば、終戦直後に日本では、傾斜生産方式という産業政策が採られた。1946年から1949年までは、経済復興に必要な諸物資のうち石炭、鉄など、基礎素材産業の供給力回復が急務であるという観点から、それら部門に資金、人材、資材などを重点投入する産業政策が採られたのだ。その産業政策の指揮を執ったのが通商産業省だった。

その後も通産省は、1960年から10年ごとに「通商産業ビジョン」を発表し、日本の産業構造そのものを動かしていった。1960年代ビジョンでは、(1)国民の所得水準が増大したときに需要の伸長が大きくなる、(2)生産性上昇の可能性が高く、強い国際競争力を確保できるという理由で、軽工業に代わる重化学工業を産業政策の中心に据えた。

続く、70年代ビジョンでは、環境に優しく、勤労者にも優しい産業として、自動車、コンピューター、情報処理、通信、ロボット、ファッションなどの知識集約型産業を重点育成の分野として選んだ。いまから50年も前に、こうした産業に着目していた経済産業省の先見性の高さは、驚くべきものだ。そして、そうした産業がすべて経済産業省の行政指導の下で発展していったから、経済産業省の威光は計り知れないほど大きくなっていた。

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経済産業省[Photo by gettyimages]

通産省時代の驚くべき横暴

そのことを示すエピソードとして、これも時効だろうから書いておこうと思う。私は、1984年から1986年まで経済企画庁(現・内閣府経済社会総合研究所)に勤務していた。経済企画庁というのは、役所間の利害を調整する調整官庁だ。だから、直接の利権を持っていない。

年度末が近づいたころ、出張旅費の予算が余った。そこで、課長補佐から「ボクは鳥取に行ったことがないから、君と2人で鳥取に出張に行きたいので、準備をしてくれ」と頼まれた。ところが、年度末は役人にとって最も忙しい時期だ。平日に鳥取に行く時間的余裕はなく、行くとすれば、週末に出かけるしかなかった。当時でも、物見遊山の出張はご法度だった。

しかし、週末に出かけると、企業は休んでいるから、出張の名目を作れない。そのことを課長補佐に言うと、「君は使えないね」と笑顔で言いながら、知り合いの通商産業省の役人に電話をかけた。その結果、我々が訪れる週末に、鳥取の家電メーカーの工場が稼働することになったのだ。もちろん、従業員は休日出勤だ。経済産業省は、そんなことが朝飯前でできてしまうほど、産業界に強い権限を持っていたのだ。

もう一つだけエピソードを紹介しよう。夜遅くなって、通商産業省の役人が、所管する業界の企業に電話をかけて、こう言う。「今日は仕事が立て込んで、終電までに帰れそうにないんだよね」。すると、1時間ほどで、その会社から大きな寿司桶と束になったタクシー券が届けられた。私自身の目でみた光景だ。

ところが、そんな通商産業省の威光が、1980年頃から、少しずつ衰え始めた。グローバル化と規制緩和の流れのなかで、日本の経済にも新自由主義が浸透してきたからだ。新自由主義では、民間事業への政府の介入はできるだけ小さくするというのが原則だ。だから通商産業省が行ってきた産業政策は、とんでもないということになる。通商産業省は、地盤沈下を始め、最早不要になったと言う人まで出てきたのだ。

元首相秘書官・今井尚哉氏の失策

しかし、2001年に経済産業省に改称された通商産業省は、思わぬ形で復権する。それが、安倍政権の誕生だった。安倍総理は、自民党のなかでは珍しい「反財務省」の政治家だ。それは、消費税増税を2度も延期したことからも明らかだ。

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安倍晋三前総理[Photo by gettyimages]

安倍政権誕生前までは、首相官邸は財務省が仕切っていた。しかし、安倍総理が反財務省であることに乗じて、経済産業省が首相官邸の実質的な支配権を掌握したのだ。その象徴が今井尚哉政務秘書官だ。

今井尚哉氏は、2012年に就任して以降、8年近くにわたって総理秘書官を務め続けるだけでなく、2019年には総理大臣補佐官も兼務で任命されている。総理大臣補佐官というのは、本来、総理大臣側近の国会議員が務める仕事だ。その職務に役人の今井氏を任命したのは、今井氏の処遇を改善するためだと言われている。それくらい、安倍総理から絶大な信頼を寄せられているのだ。

しかし、長期間、権力を握り続けると、そこには必ず慢心が生まれる。本来、公僕であるはずの今井氏は、国の基本戦略を一手に掌握するようになったのだ。

明確な証拠はないのだが、「不評3点セット」と呼ばれた、アベノマスク、星野源氏の歌に合わせた総理の動画、そして30万円給付は、すべて今井氏の発案だとする見方が、報道関係者のなかでは、強く信じられている。私もそうだと考えている。

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30万円の給付政策を発表した岸田文雄元政調会長[Photo by gettyimages]

良識ある人物が干された…

古賀茂明氏の名前を覚えているだろうか。2011年に『日本中枢の崩壊』という官僚機構を批判した著書がベストセラーになり、一躍メディアの寵児となった元経済産業省の官僚だ。

実は、古賀氏は、私がシンクタンクで働いていたときのクライアントだった。当時から10年に1人の逸材と呼ばれていて、厳しい仕事の発注をしてきたのだが、私は古賀氏が好きだった。できないことを決して要求しないからだ。頭の悪い官僚は、実現不可能な要求をしてくるのだが、古賀氏は不可能一歩手前をいつも指示してきたのだ。

そんな縁で、先日(新型コロナウイルス感染拡大前)、古賀氏と食事をする機会があったのだが、驚くことに、2019年秋に朝日放送のレギュラーが終了して、いま古賀氏にはテレビ・ラジオのレギュラーが1本もなくなってしまったのだそうだ。

古賀氏の主張は、突飛なものではない。平和主義を掲げ、利権や癒着や腐敗の根絶を主張する。国民の多くが共感することばかりだ。それなのに古賀氏がなぜ干されてしまったのか。私は、政府の痛いところを突いてしまったからだと考えている。たとえば、原発はもう要らないとか、官僚が利権をむさぼっているとか、安倍政権は独裁だといった話は、政府の逆鱗に触れてしまうのだ。

唯一の救いは、週刊誌2誌がいまでも古賀氏の連載を続けていることだ。その一つ、週刊朝日の連載で古賀氏は経済産業省に対してこんな分析をしている。

1980年代以降、経産省の産業政策は失敗続き。日本の産業は世界に遅れ、日本株式会社の先導役だった経産省には何も期待されなくなった。失業寸前の経産省は、毎年、新しい事業を立ち上げ、中身がなくても、何とか立派に見せて予算を確保する。おもてなし規格認証、プレミアムフライデーなど。クールジャパンでは巨額ファンドを作ったがほぼ全滅。

それでも毎年新事業で自転車操業。これを支えるチャラ男は今や経産省の屋台骨なのだ。だからチャラ男は出世する。そして、チャラ男を支えるのがお祭り屋の電通。企画段階からチャラ男に新事業を仕込み、その事業を請け負う。チャラ男はそのほうが面倒でないし恩も売れるから電通を重用する。

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電通本社の様子[Photo by gettyimages]

安倍総理と経産省の関係は、チャラ男と電通の関係と相似形だ。中身はなくてもやってる感で国民を欺くパフォーマンス内閣。気の利いたアイデアをでっちあげるのは、財務省では無理だ。結局、経産省内閣と言われてもチャラ男の役所に頼らざるを得ない。安倍総理や昭恵夫人もチャラ男とチャラ子。

電通、経産省、安倍政権という3チャラトリオに国を委ねた国民の悲劇はいつ終わるのだろうか。

『週刊朝日』 2020年7月3日号

この記事が評判となり、直後に古賀氏は霞が関の官僚像に関して、多くの取材を受けることになったという。そこで翌週の週刊朝日の連載でも、古賀氏は、こんな指摘をしている。

しかも、最近は、前近代的な職場環境を嫌って官僚よりも外資に優秀な人材が流れ、二流人材が役所に集まる。5〜6年働いて、箔をつけて辞めようという確信犯的チャラ男たちも増える。

一方で、今は少数派となった真面目な官僚たちは「弱い人間」だ。国民のことよりも上に媚びたほうが得だとなれば、正しい道から外れてしまうことも多い。

だからこそ、国のリーダーは、自らを強く律し、国民のために身を投げ出す覚悟を示さなければ、官僚たちを正しい道に導くことができない。

しかし、残念ながら、官僚たちは、安倍総理が非常に不真面目で「えこひいき」な人間だと見抜き、出世のためにはそこに取り入るしかないと考えている。「バカで怠慢、えこひいきのチャラ男」官僚たちが羽目を外し、この国を滅ぼす。

それを止めるには、安倍総理以外のリーダーを選ぶしかない。

『週刊朝日』 2020年7月10日号

古賀氏が週刊朝日の連載で、「チャラ男」と糾弾しているのは、前田泰宏中小企業庁長官のことだが、私はチャラ男中のチャラ男は、いまや影の総理として君臨する今井尚哉総理秘書官だと思う。彼の思い付きとも言える政策によって、日本のコロナ対策は、めちゃくちゃになってしまったからだ。

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