新型コロナの変異株、実はそれほど「凶暴化しない」といえる、意外すぎるワケ

新型コロナの変異株、実はそれほど「凶暴化しない」といえる、意外すぎるワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/10/15
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10月に入ってからの感染者数の激減のいっぽう、来たるべき冬を前に、新たな変異株の出現による感染の次なる流行の懸念が消えません。テレビ各局がことさらに恐怖をあおる「変異株」について、その真の姿とはどんなものなのでしょうか。

米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)出身のウイルス学研究者で、医師の本間真二郎さんは、10月8日に新著『新型コロナ ワクチンよりも大切なこと』を出版しました。

ウイルスをよく知る本間医師によれば、「変異株の素顔」は伝えられていることとは異なる、別な表情も見えてきました。

変異が重症化度や致命率に関係しているとは限らない

テレビや新聞など影響力の大きなマスメディアでは、新型コロナウイルスの新しい変異株が見つかるたびに、

「従来のものよりも感染力がはるかに高い」
「増殖能力も高い」
「重症化する可能性が高い」
「自宅における死亡者も増加している」

などという紹介がなされ、さらには、「ワクチンが効かなくなる……」といった観測を伝え、「変異株は本当に恐ろしい」と、国民の不安をあおるような報道が見られます。

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しかし、結論から申し上げると、感染力が高いことが必ずしも重症化度や致命率(死亡率)の上昇と関係しているとは限りません。ウイルスの変異というものは、伝えられているイメージとは異なり、ウイルス学的にはなんら特別なことではありません。

ここではウイルスの変異や変異株というものについてわかりやすく説明していきます。

ウイルスが変異することは、ウイルスの進化と考えていいでしょう。

すべての生物は遺伝子としてDNAをもっていますが、生物と非生物の間とされているウイルスには、遺伝子としてDNAをもつもの(DNAウイルス)と、RNAをもつもの(RNAウイルス)があります。新型コロナウイルスはRNAウイルスの仲間です。そしてRNAウイルスは、DNAウイルスに比べて、とても変異が速いという特徴があります。

新型コロナウイルスも日々進化し、次々と遺伝子が変化した新しいウイルス(ウイルス株)が登場しています。世界じゅうの研究機関から検出されたこれらの遺伝子が、変異した新型コロナウイルスの新しいウイルス株として、いくつかの国際機関に登録されていきます。

これらのデータを見ると、新型コロナウイルスが次々と進化して、世界じゅうに広まっていくのがよくわかります。

ウイルスにとって変異はあたりまえの日常的なこと

まず、ヒトなどDNAをもつ生物の遺伝子はほとんど変化しませんが、ウイルスの遺伝子の変異はウイルスにとっては、あたりまえの日常的なことになります。ウイルスが変異した場合に通常見られる変化は、以下の点になります。

●変異により性質は「凶悪」になる場合も、「穏やか」になる場合もある
●ただし通常、その性質は大きくは変わらない
●「凶悪なウイルス」は変異すると、おおむね性質がマイルドになる

多くの場合、変異してもそのウイルスとしてのおおまかな性質は、すぐに大きく変わることはありません。たとえば、インフルエンザウイルスはどんなに変異しても、インフルエンザウイルスであり、強い風邪の症状をおこすウイルスです。

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エボラウイルス(感染者の数人にひとりが死亡する、とても致命率が高いウイルス)や、麻疹ウイルス(空気感染するとても強い感染力をもつウイルス)のように、その性質が「凶悪」に変わることはないということです。

変異のスピードはインフルエンザの10分の1

インフルエンザウイルスは変異の速いウイルスの代表です。

どのくらい速いかというと、ひとりの感染した人の体内で、大量に増えると数百種類にも変異しているほどです。極端な話、ひとりの人に感染して次の人にうつるときには、「すでに違う遺伝子をもつウイルス」になっていることもあるということです。

新型コロナウイルスは遺伝子の修復酵素(変異をもとに戻す酵素)をもちますので、変異のスピードは「インフルエンザウイルスの10分の1ほど」と見られています。それでも15人ほどに感染が広がると、おそらくは1回ほどの頻度でウイルス変異があるのではないかとも考えられています。

専門的な表現となりますが、現在、新型コロナウイルスの変異速度は、「約25塩基/ゲノム/年」と推定されています。ゲノムとはDNAのすべての遺伝情報です。

1年間で約25か所が変異するという意味となりますが、このペースでは、1年間で25か所が変異したとしても、新型コロナウイルスゲノム(SARS-Cov-2ゲノム)の全長(塩基を表す単位で約2万9900bp〈ベースペア=塩基対〉とされる)の約0.08%であり、この程度の変異では通常ウイルスの性質に大きな変化は表れません。

私の研究していたノロウイルスは、ゲノムの約30%(新型コロナウイルスの約350倍強の変異)以上に、変異したウイルスが何百万株も登録されています。そのうえで、これらのノロウイルスの変異株がはげしく凶悪(感染発症で重症化しやすい)になったり、逆に穏やか(感染しても軽症)になったりすることはありません。

どこまで変異してもノロウイルスはノロウイルスであり、胃腸炎(下痢や嘔吐、腹痛などの症状が出る)をおこすウイルスのままです。

ウイルスの致命率が高いと、ウイルスも生き残れない

ウイルスによる致命率(死亡率)が高く、すぐに感染した人が亡くなってしまうような「凶悪なウイルス」の場合、ウイルス自身も生きることができなくなります。そのため、たいていの場合、じょじょに「性質」がマイルドになっていく傾向にあります。生き残れなければ、ウイルスにとっても都合が悪いからです。

ですから、多くのウイルスでは変異すると感染力(感染が拡大する力)は高くなるのですが、重症化度(病気自体の重篤度)は低くなることが多いのです。

正確には、ほんのわずかでも感染力が高くなる変異がおこった場合、急速にその株が広まり、感染流行全体に占める割合も高くなるのです。極端な場合にはその後の流行は、その株だけが広がっていきます。

つまり、新型コロナウイルスで今のところ報告されているウイルスの変異は、インフルエンザほど速いペースではなく、新型コロナウイルスのさらに新型が次々と出現するような変異ではありません。

ひとつの同じ型のなかで、こまかい変異をしているものがあたりまえに生まれていて、それが数百種類確認されたということなのです。

新型コロナの変異株は「凶悪化」していない

私は実際、いちばん大きな海外データベースであるドイツの「GISAID」の新型コロナウイルス遺伝子のデータベースを使って、世界じゅうから報告された新型コロナウイルスの全ウイルス(総数18万3422ウイルス)の遺伝子変異を独自に解析してみました。もっとも重要な「凶悪化」の目安である致命率(死亡率)と、その変異が関係するのかどうかを判断するためです。

結論はとてもシンプルでした。

「現在までに新型コロナウイルスのたくさんの遺伝子変異が報告されてきたが、遺伝子の違いにより重症化度、致命率に大きな違いは認められない」

これが私の印象です。

いっぽうで、感染力が高いことが必ずしも重症化度や致命率(死亡率)の上昇と関係しているとは限りません。

感染率が高く軽症であれば、極端に感染を防ごうとするより、「自然に感染して免疫がついたほうがいい」ということにもつながる可能性はあります。

また、これらの解析から、次のことがつかめました。

●変異株の出現により、重症化度に大きな違いはない。
●日本を含めたアジア全域では、欧米に比べて致命率(死亡率)が極端に低い。
●その背景は、遺伝子変異によるものではない。
●また、新型コロナウイルスのなんらかの「軽症型」が先行したためでもない。
●今後、海外から変異したウイルスが入ってきても、日本での致命率(死亡率)が欧米のように大きく増加することはおそらくないと推定される。

新型コロナウイルスは変異のしやすいRNAウイルスの仲間です。

変異により、新しいウイルス株が出現してくるというあたりまえのことが、あたりまえにおきているのであり、新しい変異株が見つかるたびに、ことさら大騒ぎする必要はないと思っています。

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新型コロナ ワクチンよりも大切なこと
本間真二郎(著)1650円(税込)講談社ビーシー/講談社
米国・NIH(アメリカ国立衛生研究所)出身のウイルス学研究者で、栃木県那須烏山の自然派医師が提唱する、「自己軸」からの感染対策のすべて。ワクチンという「他者軸」にすべてを託すのではなく、「免疫力」と「抵抗力」「解毒力」を生活のなかで高めていくために、私たちが見つめ直すこと――。

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