「成長企業のための法人カード」の急成長、世界を変えるべく向き合った誠実さ UPSIDER宮城徹

「成長企業のための法人カード」の急成長、世界を変えるべく向き合った誠実さ UPSIDER宮城徹

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/11/28
No image

発売中のForbes JAPAN2023年1月号の特集「日本の起業家ランキング2023」で10位に輝いたのは、法人カード事業を手がけるUPSIDERの宮城徹。

コンサバな事業計画から一転して、大きな成長投資へ。小さなカード会社が変わることができたきっかけは、投資家からの痛烈な一言だった。

2022年10月に複数の大手金融機関からの融資で467億円の資金調達を行ったUPSIDER。同年5月にシリーズCで約150億円(54億円の第三者割当増資と約100億円の追加融資枠)を調達して、創業からの累計調達額が200億円規模になったばかりだった。

スタートアップとしては非常に大規模な資金調達にも思えるが、創業者で代表取締役の宮城徹は「法人カードをはじめとする成長企業のための決済サービスを提供している当社にとっては、事業モデル上、必要な措置でしかないとも言えます」と冷静だ。

顧客の数が増え、彼らの事業がそれぞれ大きくなるにつれ、1社あたりの決済額も高額になっていく。もくろみ通りに成長企業の利用が拡大すれば、サービス全体の決済額も指数関数的に増えていく。UPSIDER側の立て替え資金需要も同じように増えるわけだ。

同社の法人カードサービスの決済額はこの1年で10倍以上に成長している。累計決済額は約500億円、導入社数は月間1000社を超えるペースで増加。

「法人間の決済は国内だけでも年間1000兆円以上。それに比べれば豆粒のような規模です」と謙遜するが、事業がうまくいかなくなったユーザーの貸し倒れリスクなどは吸収できる規模になったと見ている。法人間取引におけるカード決済の利用が順調に拡大している実感があり、市場環境も良好だ。

最大数億円の利用限度額や、API連携による会計ソフトへの利用明細の自動反映、効率とガバナンスを両立した柔軟な権限設定を含むWeb機能などがセールスポイント。UPSIDERのサービスが介在することで、与信管理を含む取り引きコストや業務負荷を下げたり、従来は取引対象にならなかった企業間での取引が生まれたりするなど、新しい可能性を開く決済ソリューションとして評価されている手応えがある。

ただし、価値の本質は、個別の機能の優位性にはないと宮城は言う。

「真の差別化要素は、優秀なエンジニアの採用を含むサービス開発への投資により、財務経理業務の課題解決に貢献できるソフトウェアソリューションを実現し、それを週次のペースで進化させ続けていること。決済はそのなかのひとつの機能でしかないんです。そうした世界観で得られる体験こそが唯一無二ものだと思っています」。

「スタートアップはタイミングがすべて」
急成長企業を冷静にハンドリングしているように見える宮城だが、実はスタートアップ経営者としてのスタンスは1年少し前に大きく変わった。

ターニングポイントは21年8月。当時も売り上げや決済額は順調に成長していたが、広告宣伝費は1円も使わず、人件費を抑え、オフィスは数人で満員の狭い部屋をひとつ借りていただけだった。「事業計画もコンサバで、黒字を出して事業をやっていくのは当然だよねというのが経営陣とのコンセンサスでもありました」と振り返る。

しかし、支援を受けていた投資家に、「決済のあり方を変える新しいインフラをつくることを目指して創業したのに、このままだと小さいカード会社で終わるんじゃない?」と強烈なパンチを浴びた。一瞬、心の中で強く反発したが、うなずかざるをえなかった。

「勘違いしていたなと反省したのは、自分に実力があれば、努力さえすれば、時間をかければ、それなりの事業がつくれるとどこかで思っていたことです。でも、世の中を本当に変えるスタートアップって、タイミングがすべて。逃したチャンスは二度とめぐってこない。しかるべきタイミングで波に乗るためには、大きな事業を早くつくって備えるべきだと気づいたんです」

次の週には、大きな成長投資にシフトすると決め、採用も拡大。広告やキャンペーン施策、新規事業の立ち上げと矢継ぎ早に進めた。20億円のシリーズBラウンドの調達は翌9月に実行というスピード感だった。成長カーブもそこから一気に急角度になった。

そして宮城は、爆発的な成長には、顧客やパートナー企業を含むエコシステムの力が不可欠であるということに、より自覚的になった。

UPSIDERの成長を左右するのは、ひとえに顧客のビジネスの成長度合いだ。単に決済サービスを使ってもらうだけでなく、顧客の事業運営やファイナンス全体を支援するなど、「カスタマーサクセス」的な取り組みも進めているという。

大学時代も前職のマッキンゼー・アンド・カンパニーでも、机上であれこれ考える前に、直感で動いて得た体験をもとにロジックを組み立てること、そして目の前の縁を大事にすることで道を開いてきた。UPSIDERの創業経営者としても、出資者や協業する金融機関、そして顧客に誠実に向き合うことで自分自身が心底納得できる経営方針に行きついた。

当面の目標として、法人間決済の課題を網羅的に解決するワンストップソリューションを開発し、最終的には法人向け金融商品のオープンなプラットフォームにまで発展させる構想だ。やはり多くの人を巻き込み、いかにエコシステムを活性化するかがカギになる。

宮城 徹◎東京大学卒。2014年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、東京支社、ロンドン支社にて大手金融機関の全社変革プロジェクトに従事。18年にUPSIDERを創業した。

No image

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加