
青葉真司被告(2020年5月)
2019年7月、京都市伏見区の京都アニメーションの第1スタジオにガソリンをまいて放火し、36人を殺害した罪などに問われている青葉真司被告(45)の裁判で、被告人質問が続いています。青葉被告が京アニに抱いていた「憧れ」が「恨み」に変化していく経緯、そして、事件当時の心境などについて、本人が語っています。
■小説を書き始めたきっかけ

青葉真司被告(9月11日 廷内イラスト)
11日に行われた被告人質問で青葉被告は職を転々とした後に無職になり、生活保護を受給していたと話し、何に対してもやる気が起きない中で、15年ほど前に小説を書き始める出来事があったと明かしました。青葉被告は捜査段階で犯行動機について、京アニに自身の書いた小説を盗まれたなどと語っていますが、京アニ側は盗作を否定しています。
法廷で青葉被告は「昼夜逆転の生活になり、あの時に京都アニメーションのアニメを初めて見て、小説を書き始めました」と話し、弁護人から「1日のうちに小説を書く時間は?」と質問されると「考える時間は24時間365日です」と答えました。
■強まる京アニへの思い しかしコンクール落選

青葉真司被告(9月13日 廷内イラスト)
京アニの作品をきっかけに小説家を志したという青葉被告。13日の被告人質問では”転機”となる出来事が明かされます。京アニへの思いが強まっていく中、青葉被告は7年前に自らが書いた小説を京アニ主催のコンクールに応募します。
法廷で弁護人から「京アニに長編小説と短編小説の2作を応募していますね。結果はどうでしたか?」と質問された際、青葉被告は「落選になります」「裏切られた気持ちになりました。当時は頑張って書いた小説だから、どうして通らなかったのかとがっかりした気持ちです」と語りました。
翌年に小説が落選した後、青葉被告は京アニとのかかわりを断つために、小説のアイデア帳を燃やすことを決意したといいます。青葉被告は当時を振り返り「京アニとも関りを持ちたくないと考えていました。10年間ずっとコツコツと小説のアイデアを書き留めていたのを燃やして、自分の意思表示をしようと」と語りました。
その後、青葉被告は事件の1年前にテレビで偶然京アニの作品を見たときに「自身の小説のアイデアが盗用されている」と考えたと語りました。検察側はこれまでに青葉被告がコンクール落選後に、「10年をかけた渾身の力作、金字塔を落選させられた上、小説のアイデアを盗用されたという妄想を募らせた」と指摘しています。京アニへの思いは「憧れ」から「失望」そして「怒り」へと変化していきます。
■「京アニに爆発物をもって突っ込む」などと投稿
青葉被告はインターネット掲示板に「爆発物もって京アニ突っ込む」「無差別テロ」などと京アニへの「怒り」とも思える過激な内容を投稿していました。この時の心境については「最後の段階までいくことの直前の段階だと思います」と振り返っています。
■埼玉から京都に向かっているころに“放火”を思い立つ

青葉真司被告(9月14日 廷内イラスト)
14日の被告人質問では事件直前と事件当時の心境が明かされました。弁護士から「事件を起こした大きなきっかけは何だったか」と聞かれると、青葉被告は「京アニの小説コンクールに落選したこと」と改めて説明。そして、「原稿を落とされたり、内容をパクられたり、一番根に持つ部分が大きかった。最後に一番狙いたいのはどこかと言われると、京アニになったのが本音になります」と話しました。
青葉被告は事件3日前、当時住んでいた埼玉県から京都に向かっていて、そのころに放火を思い立ったといいます。京都に到着後、京アニ第一スタジオを下見しましたが、通行人に場所は聞きませんでした。その理由として「やろうとしていることがよからぬことなので、人との接触を最小限にしようと思った」と説明。
■京アニ第1スタジオで「放火するかどうか迷った」

事件前に防犯カメラに映った青葉真司被告
そして犯行当日。第一スタジオに到着した後、ガソリンが入った携行缶などを床に置いて、実際に放火するかどうか迷ったといいます。その理由について青葉被告は「やることが好ましくないので、自分も実行するか否か考えた記憶があります」としました。ためらいの気持ちがありながらも「京アニをどうしても許せない」と感じ、犯行を実行します。法廷で身振り手振りを交えスタジオ内でガソリンをまいた様子を話し、放火した当時の心境について「パクったりしてくるのをやめさせるには、スタジオ一帯をつぶすくらいじゃないと、という考えはありました」と語りました。

京都地方裁判所
裁判では弁護側は青葉被告が事件当時、妄想性障害の影響で、心神喪失か心神耗弱状態だったとして無罪などを主張。一方、検察側は「妄想に支配された犯行ではない」として完全責任能力があったと主張。刑事責任能力の有無やその程度が争点となっています。19日にも、前週に引き続き検察側による被告人質問が行われる予定です。
関西テレビ