飛鳥井千砂『見つけたいのは、光。』現代女性が抱える悩みに焦点を当てた一冊【書評】

飛鳥井千砂『見つけたいのは、光。』現代女性が抱える悩みに焦点を当てた一冊【書評】

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  • 更新日:2022/09/23
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『見つけたいのは、光。』 飛鳥井千砂 ¥1870/幻冬舎

「行き詰まってる」と思ったときのお守りになる一冊

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がんばっているのに、なんだかずっと空回りしている気がする。誰も悪くないのに、周りが気になり、いら立ってしまう――。今月の一冊は、今の30~40代女性が、生活の中で抱えがちなモヤモヤに焦点を当てた小説。

主人公は亜希と茗子(めいこ)、二人の30代女性だ。亜希は1歳半の息子の育児に奮闘をしながら就活中。妊娠発覚と同時に、派遣切りにあったからだ。夫は優しくて育児にも前向きなものの、激務かつ給料の低い職場で働いているため、亜希も再就職先を決めないと、家計は苦しくなるばかりだ。

茗子は夫と二人暮らしの会社員。職場では産休・育休を取る人たちの、フォローを押しつけられる状況に疑問を感じている。

そんな異なる境遇の二人の共通のルーティンが、光さんという女性の育児ブログを読むこと。シングルマザーで二人の子どもたちを育てつつ、不動産業界でデベロッパーをしている光さん。彼女が発信する言葉に亜希は憧れと安堵を、茗子は苦々しい思いを募らせていく。そして、決して会うはずのなかった亜希と茗子は、光さんの失踪をきっかけに、知り合うことになる――。

30代半ばを過ぎた彼女たち二人は、世間一般ではまじめな生き方をしている。「それなのになぜ、報われない?」。彼女たちのフラストレーションは、同世代の身にとっては、他人事とは思えないはず。そして子どもがいる亜希、いない茗子、それぞれの思いは、「そうではない側」の人にとって、はっとさせられることも多い。

二人の生き方や戸惑いをきわだたせてくれるのが、ブロガー・光さんの存在だ。彼女のマイペースな考え方に触れることで、亜希と茗子の縮こまっていた感情や物の見方が、どう豊かに変わっていくのかが、この小説の読みどころ。育児や家事、仕事などの生活に追われ、「今の状態が一生続いたらどうしよう?」と追い詰められた気持ちになったら、ぜひ、この物語に触れてみたい。彼女たちの生きざまから、自分なりの希望の持ち方も、見えるはず!

『まず牛を球とします。』 柞刈湯葉 ¥1980/河出書房新社

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注目のSF作家の最新短編集。表題作は人類の願望や欲望が極端な形で実現した世界で起こる、遺伝子や生態系にまつわる物語。予想外の近未来、ありえたかもしれない過去、地球以外の星を舞台にした話など、ユニークなストーリが15作・一話完結で収録。隙間時間に読むと、いい気分転換に! 著者による、各作品の解題もこだわりがあって引き込まれます。

『100年後にはみんな死んでるから気にしないことにした』 なおにゃん ¥1430/KADOKAWA

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生きづらさを抱える人の心情に寄り添い、SNS上でも話題の絵本作家による、自伝的コミックエッセイ。周りの感情に振り回されやすいHSPという気質を持つ著者が、過去の体験を振り返りながら、自分を大切にして生きるヒントを伝授。ユーモアあるタイトルと、脱力したゆるいうさぎのイラストも癒しに!

『サステイナブルに家を建てる』 服部雄一郎 服部麻子 ¥1760/アノニマ・スタジオ

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高知在住の翻訳者・服部雄一郎さんと麻子さん夫妻が、約3年間にわたって環境に配慮しつつ何代も住み継いでいける家をゼロから作り上げた記録を一冊に。地元木材を使用したり、太陽や風などを生かした間取りづくりからエコなエネルギー活用法など、これからの家づくりを考えていく上での学びが満載。地球に優しい理想の暮らしを築くための第一歩としておすすめ!

取材・原文/石井絵里

こちらは2022年LEE10月号(9/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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