触った瞬間にわかる!「iPhone 15」驚きの進化

触った瞬間にわかる!「iPhone 15」驚きの進化

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2023/09/19
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iPhone 15 Plus ピンク。エッジのデザイン変更でより握りやすく軽さを演出。カメラ機能は2倍クロップズームを含む大きな進化を遂げている(筆者撮影)

アップルは2023年9月22日から、主力製品であるスマートフォン「iPhone」の新モデル、iPhone 15シリーズを発売する。今回発売されるモデルと価格は以下の通りだ(価格はいずれも、税込)。

これら4つのモデルについて、発売に先駆けてレビューをお届けする。

iPhone 15 (6.1インチ、128GB) 12万4800円

iPhone 15 Plus(6.7インチ、128GB) 13万9800円

iPhone 15 Pro(6.1インチ、128GB) 15万9800円

iPhone 15 Pro Max(6.7インチ、256GB) 18万9800円

デザイン面やシリーズ構成などに大きな変更はないが、スタンダードモデル・Proモデルの双方で、見た目と持ち心地が大きく異なり、その変化の幅はモデル選択に影響を与えるほどだ。またスタンダードモデルであっても、意外なほどのカメラの進化を実感することができるだろう。

触れると決定的な進化を実感することになるのが、今回のiPhone 15シリーズ。買い換える予定がない人は、店頭などから遠ざかっていたほうがよいかもしれない。

見た目と持ち心地が大きく変化した

それでは、早速、デザインから見ていこう。

iPhone 15シリーズは、サイズ展開として、2022年モデルと同様に6.1インチと6.7インチで統一された。また2020年に登場したiPhone 12のデザイン、すなわち金属のフレームを、上下からガラスで挟む構造が踏襲された。

見た感じ、形状には大きな変化が見られないが、いずれのモデルも、握って持ち上げた瞬間の印象は、かなり大きく変わるものだ。手に取った瞬間、進化に気付かされ、魅力を伝えてくる「魔力」を帯びたデザインというべきだ。

スタンダードモデルとなるiPhone 15は、iPhone 14と握り比べてみても、思いのほか軽く感じる。数字のうえでは1g軽くなっているにすぎないが、高さが0.9mm、幅が0.1mm増加しているからか、数字以上に軽い印象を受ける。

そして今回のシリーズ全般に共通しているのが、エッジの処理の変更だ。これまでフラットさを強調すべく、金属フレームの角を強調してきた。iPhone 15ではその角を丸め、側面から背面へスムーズにつながる連続性を持たせている。これが、より手に馴染む握りやすさを作り出している。

淡い妖精のようなトーンを実現

デザイン面で、スタンダードモデルに用意された特別な要素は、背面ガラスのカラー処理だ。これまで、ガラスの背面に色付けして鮮やかな色を展開してきたが、今回は初めて、ガラスそのものに色付けする新しい処理が加えられた。表面のすりガラスの処理も相まって、淡い妖精のようなトーンを実現している。ガラスの厚みがあるカメラ部分は、自然と色が濃くなっている。

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iPhone 15 グリーン(左)と、iPhone 15 Plus ピンク。背面は光沢からすりガラスに変わった。ガラスそのものに色づけし、厚みで色の濃さが変わる美しい表現(筆者撮影)

毎日持ち歩くスマートフォンだからこそ、握り心地、色の表現といったわずかに見える変化を追求し、進化させた点は、アップルがiPhoneとユーザーを大切に扱っていることの表れ、と見て取れる。爽やかなミントのようなグリーン、そして主張しすぎないが毎日を楽しくしてくれるピンクは、今年のiPhoneを象徴するカラーとなりそうだ。

昨年のProモデルから採用された、画面の中にカメラやセンサーを仕込んだ「島」の非表示部分を作る「Dynamic Island」がスタンダードモデルにも採用された点も、デザイン上の変化だ。

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iPhone 15スタンダードモデルにも、Dynamic Islandが搭載され、さまざまな情報をスマートに表示してくれる(筆者撮影)

Suicaを改札でタッチするたびに、黒いピル型の領域が広がり、アニメーションで情報を伝えてくる。生き物のような動きは見ているだけで楽しく、音楽再生やタイマー、フードデリバリーの到着までの時間、飛行機のゲートが閉まるまでのカウントダウンなど、対応アプリが増加し、ちょっとした便利な演出が楽しめるだろう。

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iPhone 15 Pro ナチュラルチタニウム。チタンらしい落ち着いた光の反射とヘアライン加工が重厚感を演出、それでいて19gと見違える軽量化を実現した。ミュートスイッチはアクションボタンに変更されている(筆者撮影)

一方Proモデルは、これまでステンレスが採用されてきた金属フレームをチタンに変更し、ブラック、ホワイト、ブルーに加え、チタンの自然な色を生かした「ナチュラルチタニウム」というカラーを用意した。落ち着いた渋い輝きを見せる金属は、これまで鏡面仕上げだったProモデルに新しい表情を与えている。

チタンに変更したことで、6.1インチ・6.7インチともに19gの軽量化を実現した。206gだったiPhone 14 Proに比べ、iPhone 15 Proは9.2%も軽くなっており、持ち上げた瞬間から「軽さ」を強く実感できる。また、サイズも、高さ・幅ともに1.1mm小さくなった。

これまでProモデルを選んできた人にとっては、「Proなのにこんなに軽くて小さい」と違いを驚くほどに感じることになるだろう。筆者は6.7インチサイズを選んできたので、特に電車の中で片手で電子書籍を読む際に手首の疲れがグッと軽減されていることに気づく。

また、「Proモデルは重たすぎるから」と諦めてきた人にとっては、その理由が1つ取り除かれることになる。iPhone 15 Proはスタンダードモデルとの重量差を16gにまで縮小し、比べるとちょっと重いかな?という差にまで詰めてきたからだ。

ちなみに、発表会の際のハンズオン会場でも話題になっていたチタンフレームの指紋だが、レビューで試している期間においては、取れなくなるほど汚れることはなかった。ステンレスの鏡面仕上げの表面のほうが、より指紋が目立っていたように感じる。

限られた時間でできる限り触れなければならない、という世界中のプレスの熱気(と手汗)という、日常使いとは異なる状況だったことが原因だったのではないだろうか。

A17 Proチップのバッテリーのもちは?

アップルはスマートフォンの進化の要素に、バッテリー性能とカメラを必ず加える。

バッテリー性能についてはプロセッサーの省電力性が重要なカギとなっており、iPhone 15にはA16 Bionicを搭載し、処理性能を高めながらも、画面表示、機械学習処理、画像処理などを極力ソフトウェアではなくチップで処理することで、バッテリー持続時間を減らしている。

またiPhone 15 Proには新たにA17 Proチップを搭載した。このチップはMacBook Airに用いられたM1チップの性能に匹敵するスコアを叩き出すほど強力だ。3nmプロセスというより微細な構造を実現し、省電力性を高めながらMac並みの性能を引き出すことに成功している。

発売のタイミングではまだ試せないが、2023年末から2024年にかけて、ゲーム機やパソコン向けに開発されたゲームタイトルがそのままiPhone 15 Pro向けに移植されてくることになる。軽量化されたこともあり、ゲームを思い切り楽しみたい人は、6.7インチのiPhone 15 Pro Maxがおすすめとなる。

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iPhone 15のスタンダードモデルにも、2倍クロップズームが搭載された点が、カメラ機能の大きなニュースだ(筆者撮影)

iPhone 15には引き続き、超広角カメラとメインカメラの2つが搭載される。2023年モデルでは、広角カメラが4800万画素と、これまでの4倍の解像度をそなえた。そのセンサーから得られる画像を2400万画素として記録する。つまりこれまでのiPhoneよりもより高精細な写真が記録されることになる。

さらに、センサーが4800万画素になったことで、中央部分を切り出して2倍ズームの画像を1200万画素で記録することができるようになった。Proモデルのようにズームレンズは搭載されていないが、画像劣化がない2倍ズームの写真が撮影できるようになったことは、スタンダードモデルのカメラ性能にとって大幅な進化だ。

もちろん景色を映す際にもよいが、食べ物や小物など、手元を写すときにも、画像劣化がない2倍ズームは非常に便利に活用することができる。これまで、2倍ズームはProモデルにしか用意されていなかった機能だけに、カメラ性能のPro並みの充実は製品価値を大きく高めている。

「6つのレンズ」を切り替えるカメラ

iPhone 15 Proは、昨年と同じように、12mm超広角カメラ、4800万画素の24mmメインカメラ、77mm望遠カメラの3カメラ構成だ。しかしこの3つのカメラで、6つの単焦点レンズを切り替える感覚で利用できる。その秘密は、メインカメラの機能向上だ。

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iPhone 15 Proでは、標準のカメラモードの焦点距離を3種類から選べる(筆者撮影)

iPhone 15と同様、新世代のPhotonic Engineは、4800万画素の画像から1200万画素に切り出すのではなく、2400万画素にアップスケールして記録する方式をとった。アップルによると、センサーと画像処理エンジンの「スイートスポット」を探る過程で、そのような仕様になったという。1200万画素よりも高精細な画像記録が可能なことは言うまでもない。

そのアップスケールを取り入れることで、iPhone 15 Proでは、広角カメラを、24mm、28mm、35mmの3種類の焦点距離に切り替えることができるようになった。いずれも、一眼レフ・ミラーレスカメラでよく用いられるレンズで、切り替えておけば、次に起動する際に同じ設定で起動し、いずれの焦点距離でも2400万画素で記録される。なお超広角・2倍・望遠は1200万画素の記録となる。

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iPhone 15 Pro Maxのズーム展開。5倍ズームは明るいレンズと強力な手ぶれ補正で、暗いところでもブレずに撮影できる(筆者撮影)

iPhone 15 Pro Maxには、5倍の120mm望遠カメラが用意された。一般に、望遠レンズは暗く手ぶれしやすいのだが、iPhone 15 Pro Maxの5倍カメラはf2.8と明るく、手ぶれ補正が極めて強く効くため、安定した写真やビデオで、被写体を大写しにすることができる。ポートレートモードでの撮影ももちろん可能だ。

5倍ズームが使いやすいと感じた理由は、フォーカスが合う距離がメインカメラとほぼ同じである点だ。メインカメラで構えておいて、5倍ズームにしても、そのままピントを合わせて撮影ができる。そのため、筆者の場合はコケや花、昆虫といった微細な被写体の撮影に便利だったし、さまざま写真のアイデアを思い通りに試せるクリエイティブさがあった。

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iPhone 15 Pro Max 5倍望遠カメラで撮影した作例。提灯の細かい骨組みまで乱れなく描いている(筆者撮影)

また明るいレンズと手ぶれ補正によって、夜の望遠撮影も非常に有効だ。作例のためにお祭りを探して訪れたが、非常に良好な光の雰囲気を描き出してくれる。

悩ましいのが、6.1インチの小さなスクリーンを選ぶと3倍ズーム、6.7インチの大きなスクリーンを選ぶと5倍ズーム、と画面サイズと望遠カメラの倍率が連動してしまっている点だ。これは、望遠レンズに必要な「長さ」を稼ぐため、テトラプリズムデザインという、光を4回反射させてセンサーに届ける内部構造が必要なためで、大きなモデルにしかスペース的に収められなかったことが理由だろう。

Live Photosとポートレートモードの共存が実現

もう一つ、iPhone 15 Proシリーズにおいて、個人的には非常にありがたかった進化が、ポートレートモードだ。

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iPhone 15 Proでは、写真モードでも被写体以外をぼかすポートレートモードをONにできる。Live Photosとの共存も可能だ(筆者撮影)

これまで、通常の写真モードとポートレートモードは切り替えが必要だった。画像処理のパイプラインが分かれていたことが理由で、画像処理モードごと切り替えなければならなかったからだ。そのため、写真モードでカメラを設定して「やっぱりポートレートがいい」と思ったら、モードを切り替えて設定をすべてやり直さなければならない、という面倒臭さがあった。

iPhone 15 Proでは、画像処理パイプラインが統合されたことで、カメラモードでも被写体に人物・犬・猫があれば、画面に「f」ボタンが表示され、すぐにポートレートモードに切り替えることができるようになる。もし被写体に人物やペットがいなくても、画面をタップすれば「f」ボタンが現れるため、植物や料理も背景をぼかして撮影可能だ。

同時に、ポートレートモードは3秒の短い動画が付加されるLive Photosと共存できなかったが、こちらも共存可能になった。撮影した後からでも、どこにフォーカスを合わせるかを決めることができ、また目を瞑っていても、フレームをずらして目が開いている瞬間の写真が得られる。しかも背景がボケる。iPhone 15 Proは絶対に失敗写真が生まれないカメラとなりつつある。

iPhone 15 Proシリーズには、これまで消音スイッチだった部分が「アクションボタン」に改められた。購入時の設定では、アクションボタンを長押しすると、これまで同様に着信音の消音を切り替えられるが、それ以外の動作を割り当てることができる。

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アクションボタンはカスタマイズして、好みの機能を割り当てることができる(筆者撮影)

現在は、消音モード、好みの集中モードへの切り替え、カメラ起動と起動中のシャッターボタン、フラッシュライト点灯、ボイスメモ、カメラを用いた拡大鏡、ショートカット、アクセシビリティ、アクションなしに割り当てられる。今後のアップデートで翻訳機能の呼び出しにも利用できる。

個人的には、アクションボタンにカメラを割り当て、素早くカメラ起動と撮影を1つのボタンで実現できる点は非常に便利に感じた。ショートカットを組み合わせれば、家族に「帰宅します」という定型文をメッセージで送ったり、X(Twitter)などの好きなアプリを起動することもできるようになる。

USB-Cへの移行はスムーズか?

iPhone 15、iPhone 15 Proには、これまでのLightningに変わって、USB-Cコネクタが搭載された。こちらは標準的なコネクタとなっており、特にアップルは認証を行わず、充電ケーブルや外部機器の接続を許可するようになった。なおUSB-Cケーブルは1mのケーブルが1本付属してくるが、付属ケーブルでなくても問題はない。

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iPhone 15(上)とiPhone 14(下)。コネクタがLightningからUSB-Cに変更されている(筆者撮影)

20W以上の充電器を利用すると、30分で50%まで充電容量を回復する急速充電に対応する。ただし、最大の入力は27Wとこれまで通りだ。

他方、iPhoneのUSB-Cポートから4.5Wまでの出力を行うことができ、AirPodsケースやApple Watchなどの充電に、iPhoneの電源を使うこともできる。出かけてからAirPodsの充電が足りないことに気づく、という場面はよくあるが、その場合でもiPhoneとケーブルさえあれば、5分程度の充電で数時間の再生時間を確保できる。

例えば、パソコンなどに利用するUSB-Cハブをつなぎ、充電しながらHDMI端子でテレビに接続して大画面で映像を楽しむ、といった使い方も問題なくこなしてくれるようになる。またマイクや外部記憶装置のSSDなどを接続して動作させることもできるし、USB-C経由でハイレゾロスレスの高音質な音楽を楽しむことも可能になった。

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アップルの認証なしで、さまざまな周辺機器と接続し、そのまま利用できるようになる(筆者撮影)

11年間にわたって採用してきたLightningの廃止で、手元に用意しているLightningケーブルは利用できなくなってしまう。自宅用は付属品でいいとして、クルマの中や職場、カバンに入れて持ち運ぶためのケーブルは買い替えが必要になるし、Lightning端子に直接差し込むタイプのモバイルバッテリーやマイクなども利用できなくなってしまう点は注意が必要だ。

また、駅やホテルなどで充電用に用意されている端子は、四角い形状のUSB-Aであることが多く、付属のケーブルではiPhoneを充電できない。そのため、当分はUSB-AとUSB-Cの端子を持つケーブルを用意しておくと安心かもしれない。

一方、iPhoneをこれまで、MagSafe等のワイヤレスで充電してきた人にとっては、LightningからUSB-Cへのコネクタの移行の影響はほとんどないだろう。

iPhone 15 Proでは、iPhone 15の20倍の10Gbpsでのデータ転送が可能だ。 またiPhone 15 Proでのみ、4K/60fpsのProResビデオを、外部記憶装置に直接録画する機能を利用することができる。128GBのiPhone 15 Proは、本体には最高画質のビデオを録画できないが、外部ストレージには録画可能だ。

これからも、iOS 17での進化が続く

iPhone 15シリーズは、前評判でも、変化に乏しいモデルとみられてきた。しかし実機に触れると、さすがの一言。

煮物の面取りのように、エッジを丸めることで持ちやすさ、サイズ感をより向上させ、ガラスや金属といった素材とその加工の変更によって、軽さや色などの新しい価値を作り出すことに成功している。

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iPhone 15 Pro Max ブルーチタニウム。チタンへの塗装にも高度な技術が用いられており、チタンの輝きと鮮やかなブルーのマッチングが鮮烈(筆者撮影)

さらにカメラ機能も、シャッターを押すだけ、という使い勝手は変えず、スタンダードモデル、Proモデルともに、写真を撮ることの楽しさを広げる役割を、センサーだけでなく画像処理の方法の変更で作り出してきた。

実直な進化や成熟の部類での刷新ながら、これまでのiPhoneユーザーにこそ進化を、顧客体験に落とし込んで伝えている点は、巧みな製品作りを感じる。スマートフォン飽和の時代、既存顧客の満足度が、iPhoneプラットフォームに残り続けてくれるかどうかの境目となる。その点を理解した、「iPhoneユーザーのためのiPhone作り」にシフトしていることを強く感じる新製品だった。

日本時間9月19日から配信されたiOS 17との組み合わせで、夜寝るときに、iPhoneがベッドサイドの時計代わりになる「スタンバイ」や、iPhoneを近づけるだけで連絡先の交換ができるNameDrop、その交換する自分のカードを編集できるポスターなど、新しい機能が目白押しだ。

今後は機械学習処理を駆使したパーソナルな記録・日記を付けるための「ジャーナル」アプリの追加や、Proモデルでは2つのカメラを駆使した空間写真・空間ビデオの撮影に対応、2024年からアメリカで発売されるゴーグル型デバイスApple Vision Proで没入感ある写真やビデオを撮影できるようにもなる。

引き続き、プライバシーや環境など、アップルが取り組むあるべき姿の追求とともに、iPhoneのブランドと顧客を盤石なものに固める1台となるだろう。

(松村 太郎:ジャーナリスト)

松村 太郎

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