
病院を変えるには(写真/Getty Images)
病気の治療で重要なのは医師とのコミュニケーション。もしも、医師が提示した治療や薬に納得がいかないという場合、その意見をしっかり伝えても受け入れてもらえないこともある、そんなときは、医師や病院そのものを替えることも視野に入れるべきだ。東京医療センター内科医長の尾藤誠司さんが言う。
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「治療の変更や中止を依頼したときに、頭ごなしに怒る医師なら、替えた方がいい。反対に、何らかの選択肢を示してくれるなら、いい医師だといえます」
別の病院に移るか検討する場合、セカンドオピニオンを取ることがあるが、それを嫌がる医師も替えた方がいいと東京医療保健大学副学長の小西敏郎さんは話す。
「特に外科医は、自分の手術でぜひ病気を治してあげたいという気持ちが強いあまりに“ほかの病院に行ってほしくない”という態度をとることもあります。
また、大きな病院では院内の先生同士でディスカッションができるので、転院しなくても希望する治療法を別の先生が担当してくれる可能性があります。
そのため、医師や病院を替えたいときは、『こういう理由でこの治療法を受けたいから、別の医師にお願いしたい』と正直に伝えるのがいちばんです」(小西さん)
ストレートに話すのが難しいなら、環境を理由にするのもひとつの手だ。
「大きな病院では担当医の曜日や時間が決まっているので、『水曜日の通院が難しくなった』などと伝えれば、担当医を替えてもらえます。個人のクリニックなら『距離的に通うのがつらくなってきた』という言い訳をして、転院するのもアリです」(尾崎さん)
精神科医の和田秀樹さんは、病院を替えることを必要以上に怖がる必要はないとアドバイスする。
「いい医師でも相性が悪い人は必ずいる。だから、自分の意見を伝えることを恐れないでほしい。
入院中の転院は難しいものの、自主退院はできます。医師が最も恐れるのは患者から訴訟を起こされること。“何かあったら闘うぞ”という姿勢を持っておくことが、受けたくない医療から身を守るための防御手段になります」(和田さん)
治療の目的を自分で説明できるか
不要な治療を断ることと同じくらい大切なのは、正しい情報を精査し、客観的に自分を見つめることだ。島根大学医学部附属病院 臨床研究センター教授の大野智さんが言う。
「最近はインターネットを見れば、不安になることもたくさん書かれています。他人の意見にまどわされずに、情報を取捨選択し、自分が何にいちばん困っているのかを考えてください。自分を冷静に、時として批判的に見ることです」(大野さん)
留意すべきは、がんをはじめとした大きな病気を治療する際に受ける「代替療法」に伴う弊害だ。
「健康食品や温泉療法、アロマテラピーなどの代替療法を受ける人も少なくありませんが、健康被害・経済被害・機会損失の3つのリスクを伴うものは避けるべきです。
特に健康被害は意外と多く、がん患者を対象とした調査では、医師に黙ってのんでいる健康食品によって、5%の患者に実際に健康被害が起きていることがわかっています。
また、代替療法は健康保険の対象外なので全額自己負担。死ぬまでずっとお金を使い続けることになるので、始める前にかかる費用をよく考えましょう。
加えて何より問題なのは、代替療法のために標準治療を拒否したり治療の開始が遅れたりして、得られたはずの利益を失うことです。標準治療を否定する代替療法にだけは、近づかないでほしい」(大野さん)
つまり、情報を取捨選択して正しい知識をつけることが無駄な治療を断ることにつながるのだ。
「1つの判断基準は、いま自分が受けている治療やのんでいる薬の目的を自分で説明できるかどうか。『よくわからないけれど、医師から言われたからのんでいる』という状況は、情報はもちろん、医師とのコミュニケーションも足りていません」(尾藤さん)
正しい知識と断り方を知って、今年は「主体的な患者」になろう。
※女性セブン2023年2月2日号
NEWSポストセブン