「縮小は必至?」人事部門の既存業務に淘汰の嵐

「縮小は必至?」人事部門の既存業務に淘汰の嵐

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2023/03/19
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日本企業の人事部門は変革を迫られている(写真:CORA/PIXTA)

働き方改革・ジョブ型雇用・賃上げなどの課題が目白押しの昨今。日本企業の人事部門は、フル回転で課題に対処しており、社内で以前よりも存在感が高まっているように見えます。

ところが、長期的にはジョブ型雇用(以下「ジョブ型」)の浸透やAIの発達によって、採用・教育・異動・評価・報酬といった業務が人事部門からなくなり、日本でも人事部門が消滅してしまうという予測があります。今回は、将来の人事部門のあり方について考えてみましょう。

アメリカ企業には人事部門がない?

日本企業の中には、アメリカで一般的なジョブ型の導入を進めているところがあります。ジョブ型になると、次のように人事部門の業務がなくなっていきます。

① 採用

ジョブ型は、「新しい営業所を作るので営業担当者が5人必要」という具合に必要な人材を必要な時に必要な数だけ採用する欠員採用が基本です。欠員採用は、経験者の中途採用が主体で、現在の日本でもそうであるように各事業部門が採用活動を主体的に行います。

② 教育

ジョブ型では、即戦力を中途採用するので、日本のように手間暇かけて新人教育をしません。同期という概念がなく、階層別教育もありません。業務遂行のために教育が必要になったら、各事業部門の中で実施します。

③ 異動

ジョブ型では、採用段階で応募者に入社後どの職場でどのジョブを担当してもらうのか明示して雇用契約を交わします。したがって、日本のように会社側が辞令1つで従業員を異動させるということはなく、異動という考え方はありません。

④ 評価・報酬

ジョブ型では、ジョブに値段をつけて雇用し、会社がその従業員を必要だと思えば同じ報酬で続けてもらい、必要ないと思ったら辞めてもらいます。日本のパート・アルバイトと同じように、評価や定期昇給はありません。

このように、ジョブ型になると、いま人事部門が担っている業務の多くがなくなります。実際にアメリカでは、かなり大きな規模の企業でも、各部門の中に人事担当者が少数いるだけで、専門の人事部門が存在しないというケースが珍しくありません。

では、人事部門が将来消滅するという予測について、当の人事部門関係者はどう考えているのでしょうか。今回、大手企業の人事部門関係者32名にアンケートをしました。結果は以下の通りです。

なくなる 4名

なくならない 21名

わからない 7名

さすがに、自分の職場がなくなってしまうという悲観論は少数派でした。このうち、まず「わからない」という回答から。人事部門が縮小トレンドにあることは認めつつも、将来の姿を測りかねているようでした。

「トレンドとしては、人事関連業務は確実に縮小していくのでしょうが、完全に人事関連業務がなくなるかというと、そうでもないのかなと思います。ただ、どういう業務が残るんだと聞かれると、具体的にはイメージができない。『よくわからない』というのが率直なところです」(食品・マネジャー)

「採用や評価・異動を担当していますが、人に関するデータを扱う業務なので、私のような若輩者が適当に勘でやるよりも、AIがやったほうがずっと正確だし効率的だと思います。ではAIがどこまで発達し、完全に人事担当者に取って代わるかというと、そこはちょっと予測できません」(建設・担当者)

人事部門が拡大するという見解も

次に、最も多かった「なくならない」という回答。人事部門は業務・陣容をかなり縮小するものの、一定の機能を維持して何とか生き残るだろう、という意見がたくさん聞かれました。

「人事制度は社会・経済や国民生活とも深く結びついており、国によって大きな違いがあります。方向としてはアメリカに近づくとしても、完全にアメリカと同じになることはないでしょう。新卒一括採用も評価制度もある“日本式のジョブ型”というところに落ち着いて、人事関連業務はある程度、部内に残ると予想しています」(エネルギー・役員)

「ジョブ型になったらオペレーションは事業部門に移りますが、制度設計など企画機能は確実に残るでしょう。また、AIが浸透しても、人がやったほうが良いことがたくさんあるはずです。かなりこじんまりした部門になりますが、残った役割をしっかり果たせば、経営者や従業員への影響力をかなり維持できると思います」(素材・マネジャー)

一方、ほとんど回答者が人事部門の縮小や消滅を予想していたのに対し、人事部門がさらに業務・陣容を拡大していくという予想が、少数ながらありました。

「AIが浸透するほど、人でなければ提供できない人事関連サービスがクローズアップされるようになると思います。たとえば、健康管理、メンタルヘルスケア、福利厚生、キャリア支援などは、昔は人事部門では傍流の仕事だったようですが、今後は中核業務になっていくのではないでしょうか」(商社・担当者)

コンサルタントが人事担当者のライバルに?

最後に、最も少なかった「なくなる」という回答。実際になくなるという予測ではなく、人事部門を解体するつもりで抜本的な改革に取り組む必要があるという危機感を表明していました。

「社内の各事業部門は、事業環境の変化に対応して猛烈な勢いで改革を進めているのに、人事部門には人事考課や異動、あるいは組合対策で社員ににらみを利かせようという昔ながらの“人事屋”が多すぎます。人事部門が10年後もいまと同じ仕事をやっていて、それが許されているようなら、わが社はちょっとお先真っ暗です」(機械・マネジャー)

「人事部門には、向こう5年以内にすべての人事関連業務をなくすか、事業部門や外注先に移管するように、と指示しました。どうしても残したい業務があったら話は聞くから説明しろ、と言っていますが、今のところまともな説明は上がってきていません。本当になくなるかどうか、楽しみにしています」(サービス・役員)

では、激変するこれからの人事部門において、人事担当者にはどういう能力・スキルが求められるのでしょうか。

「人事制度や人材戦略を企画する機能は必須で、今後の人事部門の中核業務になるでしょう。人事担当者がこの機能を果たすには、自社の経営戦略への深い理解と戦略立案能力が求められます。もっとも、社外の人事コンサルタントを雇えば済むという考え方もあるわけで、今後は人事コンサルタントが人事担当者のライバルになるかもしれません」(金融・部長)

「各部門に人事関連業務を移管すると、各部門にいる人事担当者からの相談に乗ってアドバイスをすることが求められます。人事担当者は、人事の知識だけでなく、各事業部門の事業と人を知る必要があります。ただ当社では、コスト削減で事業所の人事ポストを減らしたため、本社勤務経験しかなく、事業や人を知らない頭でっかちな若手が増えています」(電機・マネジャー)

人事関連の知識だけでなく、全社の経営戦略を知り、各部門の事業や人も知るというのは、かなりハードルが高いこと。社員教育を担っている人事部門の担当者が、実は最も高度な教育を必要としているのかもしれません。

(日沖 健:経営コンサルタント)

日沖 健

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