『大奥』傷ついた堀田真由を福士蒼汰が包み込む ドラマオリジナルの和歌が示す恋の始まり

『大奥』傷ついた堀田真由を福士蒼汰が包み込む ドラマオリジナルの和歌が示す恋の始まり

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  • 更新日:2023/01/25
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『大奥』写真提供=NHK

自分にしがみつき、泣きじゃくる家光(堀田真由)を有功(福士蒼汰)はしっかり抱きとめる。NHKドラマ10『大奥』第3話では、彼らの「二羽の傷つき凍えた雛が、互いに身を寄せ合うがごとき恋の始まり」が描かれた。

参考:【写真】猫の“若紫”を可愛がる有功(福士蒼汰)

亡き父の身代わりをさせられている家光と、無理やり還俗させられ大奥入りを果たした元僧侶の有功。徳川の世を存続するための生贄にされた2人の距離を縮めたのは、“若紫”と名付けられた一匹の猫だった。

若紫とはご存知の通り、『源氏物語』で光源氏に見初められ、理想の女性として育てられる少女の名だ。有功は家光から贈られた猫に「若紫のごとく私に懐いてくれますように」という思いを込め、その名を授けた。そんな若紫をかわいがり、また有功に対する興味の表れか、『源氏物語』を読み始める家光の健気さがとても愛おしく思える。

家光は8代将軍・吉宗(冨永愛)のように政事に携わっているわけじゃない。だから、教養などは必要とみなされず、身に付けてもらう機会がなかったのだろう。家光の“七色飯”に関する考察にそこはかとない知性を感じさせるが、周りは誰も彼女自身を知ろうとはしなかった。春日局(斉藤由貴)は家光にただ子供を産ませようと必死で、将軍の父となり、権力を得ようとする御中臈たちは彼女を心で見下しながらも、その相手に選ばれるためなら汚い手も使う。

そんな中、徳川の子を成すための道具ではなく、ただひとりの人間として接してくれる有功と家光は出会った。『源氏物語』に興味を持っただけで、それはそれは嬉しそうな顔を見せてくれる人だ。有功との何気ない会話で、家光の抱えるであろう深い傷が少しずつ癒えていくのを感じた。だが、その矢先に刀で切られた若紫の亡骸が見つかり、家光と有功の関係が揺らいでいく。

それは有功が家光との仲を深めていることに危機感を抱き、彼を亡き者にしようとする御中臈の角南(田中幸太朗)を貶めるために玉栄(奥智哉)が仕掛けた罠だった。何の罪も無い若紫を手にかけるなど到底許されないことではあるが、玉栄なりに必死で有功を守ろうとした結果であり、攻めきれない部分もある。

家康の時代から続く泰平の世を維持するという名目で、春日局がやってきたことは大奥内部に戦乱をもたらした。悲しみや怒りが、人から人へと伝染していく。その連鎖を断ち切ろうと、自分の鬱憤を晴らすために誰かを傷つけることを厭わない家光に「甘えてるんやない」と厳しい言葉を投げかける有功。しかし、家光は有功も想像できないほどの壮絶な人生を歩んできた。母親を殺され、髪を切られ、男のなりをさせられ、彼女はあらゆる尊厳を全て奪われたといっても過言ではない。

まともに向き合ったら狂ってしまいそうだから、家光は怒りや哄笑でその痛みをコーティングする。その今にも傷が剥き出しそうで見ていられないほどの痛々しさを全身で表現する堀田。事前インタビューで本人が「限りなく家光と近づけているのを感じた」と語っていたように、様々な色が混じり、何色とも判別がつかない複雑な家光の感情と一つに重なり合うその演技に心が大きく揺さぶられる(※)。だからこそ、そんな家光に有功が可憐な打掛を羽織らせ、「千恵」と本来の名で呼んだ時はこちらまで救われたような気分になった。有功を演じる福士の慈愛に満ちた瞳がまた涙を誘う。

<凍え雛 一羽身を寄せ 坊主雛 千の恵や 功有らんと願ふ>

有功が千恵に送ったドラマオリジナルの和歌に描かれているように、どうか2人身を寄せ合うことで生まれる幸せが延々と続くことを願わずにはいられない。

参照

※ https://realsound.jp/movie/2023/01/post-1236070.html

(苫とり子)

苫とり子

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