「派遣社員、彼氏なし、忘れられない元カレ&身体だけの関係あり」OLの恋愛マンガに共感する女子たち

「派遣社員、彼氏なし、忘れられない元カレ&身体だけの関係あり」OLの恋愛マンガに共感する女子たち

  • 文春オンライン
  • 更新日:2020/09/17

一晩で2.7万いいね! 彼氏なし、セフレあり、派遣社員女子のマンガが「わかりみが深い」わけから続く

「このマンガの1話を読む」

「派遣社員、彼氏なし、忘れられない元カレ&身体だけの関係あり」という女子を描いたマンガが、SNSを中心に「わかりみが深い」「めちゃくちゃ私で死にそう」など、若い女子たちから共感を集めている。

なぜこの作品が、同世代の女子たちから熱い支持を受けるのか。

インスタグラムのフォロワーが14万人を誇り、「文春オンライン」での連載が、このたび最終回を迎えた『明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません。』の作者・ふせでぃ氏に聞いた。

(取材・文 粟生こずえ)

明日、世界が滅びるかもなので、毎日を大事にしたい

——タイトルはどんなふうに決めたんですか?

ふせでぃ 『明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません。』は、台風の日に生まれたフレーズなんですよ。去年の10月に個展をやってたんですが、大型の台風が来ちゃって、帰らないとやばい、という話で個展を早じまいすることになって。その日、この本の担当さんが会場にたどり着いた時に見た、一番大きなイラストに書いてあった言葉がもともとの言葉なんですよ。

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2019年に行われた個展の様子。一番下に「明日世界が終わる可能性があるので本日は帰りません。」というコメントのついたイラストがある。

ふせでぃ あの時は……「こんな状況だし、今日はもう遊んじゃおう」というテンションで書いたんですよ。でも、最終的にこれをタイトルにする決め手になったのはコロナです。

——状況的にぴったりな言葉ですね。

ふせでぃ コロナで街に出られなくなってしまって……、いつこの状況が収束するかわからなくて後悔したんです。もっと遊んでおけばよかったって。好きなバンドのライブに行っておけばよかった。友だちと「ごはん行こうね」とか約束してたのも、それっきりになってしまうかもしれない。こういうことって本当にあるんだと実感しました。『明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません。』は今の気持ちにも、ストーリーにも合っているし。

——この作品では「タイミングを自分で選択する」ことが大きなテーマですしね。

ふせでぃ 「帰りません」という宣言は自分の意思。自分の意思で積極的に今日という日を選んでいこうよと。

主人公に「好きなら自分からもっと積極的に示せ」と説教したかった

——特に力を入れて描いたシーンは?

ふせでぃ アキちゃんが夏樹くんに告白する場面です。夏樹くんもアキちゃんのこと好きだったのに……。「彼は私のことなんて特別に好きじゃない」と決めつけていて、じつは自分のほうから突き放してたことにアキちゃんが気づけてよかったなと。

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——失恋はしたけれど、そのことに「気づくことができた」シーンととらえているわけですね。

ふせでぃ 好きなら自分からもっと積極的に示せばよかったと学ぶ。それって大事なことだと思うんです。

——うーん。夏樹くんと心が通い合って、ここでうまくいくかと思ったんですけどねぇ。

ふせでぃ 世の中、なんでもちょっとしたタイミングで運命が分かれることが多いなと日頃から思っていて。「あれが1日早かったら違う結果になっていたはず」みたいなことってありますよね。私も後悔がいっぱいあるんで(笑)。

——でも、その「失敗」が、別の良い出会いのきっかけにもなりえるわけで。読み手にもそういう希望を感じさせると思います。

ふせでぃ ラストをどうするかはずいぶん悩んだんですよ。でも、この作品では救いを描きたかった。ここから主人公を救うにはどうしたらいいかなっていろいろ考えて……仕事で出世してみるとか、新しい道を見つけるとか。でも、恋愛の葛藤の救いがないまま、男性不信のまま終わるのは嫌だなと思ったんです。

——キズついたアキちゃんが努力する姿が健気で泣けます! 悲しみを自力で乗り越えていく強さを感じました。

ふせでぃ 「苦しいだろうけど克服してくれ」という一心でしたね。

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——いろいろなことが起こって、さまざまな感情と成長が描かれていて。全1巻にして読みごたえのあるドラマでした。

武蔵美大に入った当初は、家電のデザインをやりたかったんです

ふせでぃ 「つらい目にあってもヒロインは前に進んでいく」「最後には救われる」というゴールは決めてあったので。

——そんなラストを経て、コロナもあったりで、新しく描いてみたいことが生まれたりしたのでは?

ふせでぃ はい。じつはもう描き始めてます。どこに発表するとか、そういう予定は決まってないんですけど。おそらく「ふせでぃさん感」はゼロです。これまでの作品でやらなかったことをやってみています。

——ちょっとだけキーワードを教えてもらえませんか?

ふせでぃ SFですね。この現実を見て、描くしかないという話。

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——うーん。漫画家になるつもりはなかったそうですが、資質としてはめちゃくちゃ作家向きですよね。自分の中からわきあがるテーマがあって、それを形作っていけるのは生粋の作家。なるべくして漫画家になったと思います。

ふせでぃ 作ることが好きなんですよね。武蔵美大に入った当初は、家電のデザインをやりたかったんです。ソニーとかパナソニックに入りたくて。でも、入学して立体構成をやってみたら早々に「ちょっと違うな」と思ってしまった。結局、在学中はテキスタイルデザインを専門にして、せっせと布を染めていたんですが。

——それを仕事にしようとは思わなかったんですね。

ふせでぃ やっぱり素材と向き合えなかったんです。工芸工業デザインでは木とか土、ガラスとか扱う素材の選択肢がいろいろあって。その中で一番平面に近い布を選んだんですが、やっぱり違った。素材の魅力を引き出すというのが、自分に合わなかった。自分の手で線を引くのが好きなだけなのかなと思って、イラストレーターを目指すことにしたんです。

デッサンで生まれた「ふせでぃさんの中の人」と「それを見つめる自分」

——ものの考え方などで影響を受けた存在はいますか?

ふせでぃ 手塚治虫先生の『火の鳥』には影響されているかもしれません。小学校の図書室にあって。それから、自分にとって大きいのはデッサンです。美大受験に必要なので、毎日予備校でデッサンをやらされていて。デッサンは絵を描く練習だけど、自分のことを客観視する練習でもあるんです。デッサンをやる時は、頻繁に立ち上がって、引いて見るんです。

——自分の絵を、距離をとって見るということ?

ふせでぃ それもあるし、周囲の人と見比べる意味もあります。みんな同じ対象物を見て、「せーの」で描き始めるのに、みんな違う絵になるんですよね。うまい人と比べて、なんで自分はこんなに下手なのか。どう下手なのかを見つけなきゃいけない。そして、どうやって解決するかを考える。「なぞなぞ探し」をずっとやってる感じ。

——自分で「問い」を見つけて、「答え」も自分で出すんですね。どこがダメなのか解消するには「理由」も見つけなきゃならない。

ふせでぃ それには一回自分から離れないとダメなんですよね。デッサンは精神的な、人間的な訓練になったと思います。デッサンをやるといろんなことがわかるんです。

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——デッサンの経験が、感覚的に描く「ふせでぃさん」と、客観視する「ふせでぃさん」を生んだのかもしれないですね。

ふせでぃ そうかもしれません。実作業する自分に、「今ペース遅いよ」とか「好きなとこばっか描きこみすぎだからもっと全体見て手を動かしてね」って言うもうひとりの自分……。デッサンは、自分を見つめる訓練で、生きていることすべてにおいて使える技術だと思います。

——今日は興味深いエピソードをたくさん聞かせていただき、いろいろ納得しました! ふせでぃ先生がこれからどんな主人公、どんな物語を描いていくのかとても楽しみです。

ふせでぃ 男の子の主人公とかも描いてみたいですね。今マンガを描くことがすごく楽しいので、いっぱい描きたいです。なんだかマンガを描いてないと落ち着かないみたいになりつつあります。いろんなことをお話ししましたけど、作品の受け取り方はそれぞれだと思っています。私の作品から、少しでも何かを感じてもらえたらうれしいです。

(ふせでぃ)

ふせでぃ

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