サイバーエージェント、電通を時価総額で一時逆転...国内広告会社トップの座、交代目前か

サイバーエージェント、電通を時価総額で一時逆転...国内広告会社トップの座、交代目前か

  • Business Journal
  • 更新日:2020/11/21
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サイバーエージェントの本社機能、メディア事業、ゲーム事業が入居しているAbema Towers(「Wikipedia」より/Bject)

ネット広告のサイバーエージェントの時価総額は7800億円。広告最大手、電通グループは1兆36億円(11月11日終値)。一時はサイバーの時価総額は電通に肉薄していたが、電通が1兆円の大台を回復し突き放した。

時価総額の逆転は、これまでも何度かあった。サイバーの時価総額は2020年4月4日、電通の時価総額を一時的に逆転した。サイバーが5134億円、電通は5127億円。4月4日の終値で再び電通の株価がサイバーを上回り、逆転は一時的なものに終った。

5月20日、サイバーの時価総額が終値ベースで初めて電通を逆転した。サイバー株は一時、前日比6%高の5370円まで買われ、18年11月以来の高値水準となった。終値ベースでの時価総額は6713億円。電通の6670億円を上回った。その後、電通が再逆転した。

10月21日、サイバーは株式分割を考慮した実質の上場来高値7030円をつけ、時価総額は8000億円を超えた。同日の終値を基準とした時価総額はサイバーが8571億円。電通は8897億円。サイバーが電通に、かなり肉薄した。

コロナの影響はあったが広告事業で増収増益を達成

サイバーは10月28日、2020年9月期連結決算を発表した。ライブ配信による決算説明会に登場した藤田晋社長は、「上場して20年を迎え、売上高は5000億円突破を目前にし、なお成長を続けている」と胸を張った。売上高は前期比5.5%増の4785億円、営業利益は9.9%増の338億円。前の期にあった減損損失がなくなったことから純利益は3.9倍の66億円だった。

サイバーの事業は広告とゲームとメディアの3本柱である。ネット広告代理店というよりも、コンテンツ会社、総合デジタル会社の側面が強くなっている。ネット広告はコロナで影響を受けたものの、売上高は5.0%増の2693億円、営業利益は7.3%増の210億円。売上高の全体に占める割合は56%、まさに大黒柱である。

稼ぎ頭はスマートフォンゲームである。新しいタイトルのヒットが寄与し、売上高は2.4%増の1558億円、営業利益は16.5%増の303億円。利益率が高いゲームがネット広告を営業利益で93億円もリードしている。ゲームが好調な業績を牽引した。

力を注いでいるのがインターネットテレビのメディア事業。毎年数百億円規模の投資を続けてきた。テレビ・ドラマ・動画配信サービスの「ABEMA(アベマ)」の「赤字幅は182億円まで減った」(藤田社長)と強調する。メディア事業全体の売上高は有料オンラインライブPayPerViewが支え、22.6%増の570億円と大きく伸びたが、営業損益段階では182億円の赤字が続いた。

最終損益は80億~100億円を予想

21年9月期の連結決算の売上高は前期比4.5%増の5000億円と大台に乗せる。営業利益には幅を持たせた。1.1%減~3%増の300億~350億円を見込む。純利益は21~51%増の80億~100億円になる見通し。年間配当は37円と前期比3円増。3期連続の増配を計画している。

スマートフォンゲームの成長に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだインターネット広告が回復するとみている。AI(人工知能)の活用に力を入れ、AIを使った広告が顧客の7割で導入されている。今後、バナー広告に使われる人物素材をAIが生み出すサービスを始める。商品や媒体の特性に合わせ、広告効果が高まるよう、AIが架空の人物をつくり、広告の運用を通じて架空の人物が成長していくという。まず100社で導入する。いずれ広告制作の全業務にAIを活用する。

16年にAIの研究機関「AI Lab」を設立。当初10人だった専門家は37人まで増えた。ネット広告とゲームで稼ぎ、ネットテレビに投資する戦略を続ける。「ABEMA」を含むメディア事業は先行投資で営業赤字が続くが、音楽ライブ配信など新しいサービスの貢献もあって赤字幅は縮小する。

電通の時価総額は1兆円を割り込む

電通は日本一の広告会社だ。電通グループは国内事業よりも海外事業(電通イ―ジス・ネットワーク社)のほうが売上高としては大きい。電通は、今や「世界の広告会社」なのである。しかし広告の王者の地位は揺らいできた。背景にあるのがネット広告の伸長だ。

電通によると、日本のネット広告市場は19年で前年比20%増の2兆1048億円となり、テレビ広告を上回った。テレビ、新聞、雑誌、ラジオの「マスコミ4媒体」を主力とする電通など大手広告代理店が、サイバーエージェントなどが展開するインターネット広告に主役の座を奪われたことを数字が証明した。広告市場の激変を象徴する出来事だった。

電通グループは1年前には時価総額が1兆円を超えていた。ところが、19年12月期(国際会計基準)は海外事業の「のれん」代の減損で上場来初の営業赤字に陥り、株価は今年に入り下落傾向が続いていた。20年上半期(1~6月期)の連結決算は、売上高にあたる収益は前年同期比7.6%減の4590億円、営業利益は59.0%増の287億円、最終損益は157億円の黒字(前年同期は12億円の赤字)だった。

コロナ禍で企業が広告出稿を絞る動きが広がり、テレビや新聞といった既存の媒体を中心に売り上げが減った。海外も欧米を中心に減収になった。出張費や交際費を抑制したほか、執行役員の報酬削減も実施し、販管費は3740億円と13%減らした。これで、ようやく営業増益にこぎつけた。

電通グループが11月11日、20年1~9月期の連結決算を発表した。売上高にあたる収益は前年同期比9.4%減の6763億円、営業利益は50.1%減の185億円、純利益は2.2倍の102億円だった。企業の広告出稿が減った。媒体別の売上高はテレビが15%減の4268億円、新聞が23%減の416億円と大きく落ち込んだ。交通・レジャーや趣味・スポーツ用品の広告主からの出稿がいずれも20%を超す減少だった。

事業会社の電通で早期退職を募集し、退職加算金など構造改革費用225億円を計上した。出張費や交通費などのコスト抑制を進めた結果、特殊要因を除いた調整後の営業利益は1%減の758億円だという。営業減益だったが、コロナの影響で海外のM&A(合併・買収)に関する費用負担が減ったことや金融損益が65億円の黒字(前年同期は236億円の赤字)になったことが純利益を押し上げた。

未定としていた年間配当は71円25銭(前期は95円)とする。20年12月期通期の業績予想は引き続き「未定」とした。今年末をメドに40~59歳の社員230人が早期退職する。退職した人は個人事業主となり、電通が100%出資する新会社と業務委託契約を結び、最長10年間にわたり、一定の仕事を受託できるという。勤続20年以上などの社員約2800人を対象に希望を募った。平均で社員時代の50~60%を報酬として支払うとしている。

サイバーが時価総額「1兆円クラブ」入りする日

サイバーは世界の電通と競り合うところまで力をつけてきた。「ABEMA」への巨額の長期投資を疑問視する声や、ネット広告事業の過当競争を不安視する意見はあるが、日本を代表するIT企業として存在感を高めている。収益が振れやすいスマホゲームで、大きな誤算が起こらない限り、成長は続くだろう。

「時価総額1兆円クラブ」入りが見えてきた。サイバーエージェントと電通グルーブの関係が完全逆転するターニングポイントになるかもしれない。サイバーは、いつ「1兆円クラブ」入りを果たすことになるのか。21年9月期の決算が試金石となる。

(文=編集部)

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