日大背任事件「モリカケ桜」超えも。選挙後の岸田政権に“アベ友”爆弾炸裂=原彰宏

日大背任事件「モリカケ桜」超えも。選挙後の岸田政権に“アベ友”爆弾炸裂=原彰宏

  • マネーボイス
  • 更新日:2021/10/14
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日本大学付属病院の建て替え工事をめぐり2億2,000万円を不正流出させた事件で、日大理事の井ノ口容疑者と、大阪の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本容疑者が逮捕されました。この籔本氏が安倍元首相の長年の友人である“アベ友”だと報じられ物議を醸しています。さらには捜査の過程で「政治家に渡した裏金」なるキーワードも飛び出し、岸田政権でも「モリカケ桜」に続く“アベ友”爆弾が炸裂する可能性があります。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

大学をめぐる資金不正は後を絶たない

日本一のマンモス大学「日本大学」の理事らが逮捕されました。大学の資金2億2,000万円を不正に流出させた背任の疑いが持たれています。

大学をめぐる資金の不正は、過去にもたくさんの事例があります。文部科学省ホームページの「研究機関における不正使用事案」というページに掲載されています。

架空取引、架空請求、カラ出張と、請求額の水増しなどにより、数十万円から100万円前半ぐらいの金額が多いですが、中には約1,000万円の旅費重複請求というのがあります。7年かけて積み上げた金額のようです。

また2019年12月に約5億円の架空取引等による不正がありますが、これも3年かけて、どちらかというと研究を維持させるための不正のように思えます。

直近では、近畿大学医学部で、経費不正受給の容疑で、法医学教室主任教授が、詐欺と有印私文書偽造・同行使の容疑で、大阪府警に逮捕されています。この教授は、大阪府警の要請で、死因究明のための司法解剖を約4,000件手がけていて、今年2月には、警察庁長官による民間人表彰では最高位の「警察協力章」も受けていたそうです。これが今年6月のことです。

億超えという大きな金額では、今年1月に、過去にあった事件の判決がくだされています。学校法人明浄(めいじょう)学院(大阪府熊取町)の土地売却の手付金21億円を着服したもので、業務上横領の罪に問われた法人元理事長の大橋美枝子被告に対する判決です。

坂口裕俊裁判長は「業務上横領の事案において最も高額な部類」と述べ、大阪地検は、懲役5年6カ月(求刑懲役7年)の実刑を言い渡しました。判決によると、被告が法人理事長に就任した翌月の2017年7月、明浄学院高校の土地の売買契約を大阪市の地場不動産大手プレサンスコーポレーション側と結び、プレサンスコーポレーション社側が法人口座に支払った手付金21億円を別口座に移して横領したものです。

判決は、被告が法人の経営権を得るために、プレサンスコーポレーション社元社長の山岸忍被告らと共謀したと認定されています。マンションの用地として学院の土地を取得したがっていた山岸被告から私的に資金を借り入れ、経営権を握った後、手付金を返済にあてる枠組みを発案して犯行を主導したとのことです。

政治家が関与?東京地検が動いた日本大学の資金不正流出問題

そして、いま話題になっているのが日本大学医学部附属板橋病院老朽化による建て替えにおける2億2,000万円の不正流出問題です。

さきほどの近畿大学の問題は、大阪府警捜査2課が動きましたが、日本大学の件では、東京地検特捜部が動いているのです。

東京地検特捜部は、政財界を巻き込む大きな汚職や不正、脱税などの事件を専門に捜査する東京地方検察庁の部署とされています。

かつて特捜部に勤務していたことがある弁護士の先生に聞いたことがあるのですが、政治家が絡むと金額に関係なく動くそうで、特定の政治家を狙うというよりも、調べているうちに政治家にたどり着いたら、気合を入れて動くものだということだそうです。

テレビなどで見られるような、正義感から政治案件を追いかけているわけではないそうですが、それでも政治家がからむ案件は、必死になると言っていました。

日本大学の資金不正流用という、一見、関係者の個人的な私用のように思えますが、9月8日、東京地検特捜部が、日大の本部、そして最高権力者である田中英寿理事長の自宅などを、背任容疑の関係先として家宅捜索したことに対して、田中理事長が「俺が逮捕されるようなことがあれば、今まで政治家に渡した裏金のことも全部ぶちまけてやる」と発言したことで、この問題の空気が一気に変わってきたのです。

資金不正還流の手口

いろんな所で報道されているので、問題の全容はご存知のとおりですが、この問題には、まず登場人物が2人出てきます。

日本大学理事の井ノ口忠男容疑者と、大阪の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳容疑者です。

今回「容疑者」となったのはこの2人ですが、2人の関係者として、理事長の田中英壽氏にも、特捜部の捜査が入ったということです。

お金の流れを追いかけると、こうなります。

日本大学は、株式会社日大事業部(日本大学子会社)に、日本大学医学部附属板橋病院建て替え業者選定を依頼します。

井ノ口日大理事は、株式会社日大事業部の取締役でもあります。

株式会社日大事業部とは、事業部は日大が100%出資して設立。各学部の設備や備品の調達などを手掛け、法人登記では「旅行業」「洗濯業」「冠婚葬祭業」「保険代理店業」「広告業」などと事業目的が多岐にわたっています。

選定された会社は、都内にある「佐藤総合計画」です。この選定段階で不正があったのです。

板橋病院の設計業者の選定は総合評価を競う「プロポーザル方式」で行われ、4社が参加しました。選定された佐藤総合計画は、選定委員会の評価点では1位ではなかったのですが、井ノ口取締役(日大理事)が日大関係者らに指示して評価点を改ざんして、佐藤総合計画社を受注させた疑いがあるのです。

佐藤総合計画は、2020年2月に26億6,123万円を提示し、その後の値引き交渉で3月に、24億4,000万円に決まったと、朝日新聞は報じています。

この業務委託で、日大から、決定した佐藤総合計画に先払いとして7億3,000万円が振り込まれます。その後、佐藤総合計画から、都内にある医療コンサルタント会社に2億2,000万円のお金が振り込まれます。

当初は3億6,000万円の要求だったそうです。手数料として15%要求した計算になります。

井ノ口容疑者が、佐藤総合計画からの手数料を、株式会社日大事業部にではなく、都内の医療コンサルティング会社に支払うように指示したようです。2020年8月のことです。

他方、日大事業部は日大から業務委託費として1億8,000万円の支払いを受けました。契約金の1.5%にあたる基本報酬と、値引き額の65%にあたる成果報酬を合わせた額だったということです。

この減額された2億2,000万円が「不要の支出」として、不正流用にあたるようです。

この2億2,000万円を受け取った医療コンサルティング会社の全株を所有しているのが、もうひとりの容疑者の薮本雅巳医療法人「錦秀会」前理事長です。

この医療コンサルティング会社は、どうやら実態のないペーパーカンパニーらしいのです。

そして、複数の会社を経由させて、井ノ口忠雄日大理事のもとに2,500万円が渡されました。

表面上、実際に実行したのは井ノ口容疑者ですが、佐藤総合計画選定の際に井ノ口容疑者は、薮本容疑者に相談していたようではあります。

井ノ口容疑者は昨年、医学部付属板橋病院(東京都板橋区)の建て替え工事を請け負う業者が決まる前に、通信アプリで「価格を探ります」などとメッセージで送信し、日大側の契約の条件などについて報告していたとのことで、井ノ口容疑者は、籔本容疑者の了承を得た上で、都内の設計会社を選定させるための手続きを進めていったとみられます。

籔本容疑者は、井ノ口容疑者の犯行に加担した「身分なき共犯」として逮捕されたのですが、こうしたメッセージのやりとりなどから、特捜部は、籔本容疑者についても、佐藤総合計画を介した不正な資金流出に関与した疑いが濃厚とみて、捜査を進めているとのことです。

事件の中心は医療法人「錦秀会」の前理事長

登場人物はこの2人なのですが、ポイントとなるのは、スポーツ界や政界に人脈がある薮本容疑者の方ですね。

井ノ口容疑者と薮本容疑者は、ゴルフで知り合ったようで、タイガーウッズを間に挟んで撮られた2人の写真が公開されています。

この捜査の中で、2人に近い、権力を持つ人物である田中理事長の関与を、特捜部は調べているようで、その中で発せられた理事長の言葉が「政治家に渡した裏金」発言になります。

ここまで政治家の名前が出てきていないのですが、そこは「文春砲」です。

井ノ口容疑者がいる株式会社日大事業部、薮本氏が全株出資して自身も右腕に社長をさせている医療コンサルティング会社はわかりますが、佐藤総合計画という会社が間に入っているのが不思議です。

「手数料」を振り込ませることができるこの会社は、いったいなんなのでしょう。

佐藤総合計画を日大に紹介したのは、自民党の故野中広務元官房長官の元秘書です。彼が日大と取引のある葬儀業者を通じて田中氏に持ち込んだ。この元秘書は今夏、コロナで亡くなっていましたが、葬儀業者に詳しく事情を聴いた特捜部は、一気に勝負に出たのです。

出典:「俺が逮捕されれば裏金のことも全部ぶちまける」“日大のドン”田中英寿理事長が口にする“不穏な言葉” – 文春オンライン(2021年9月23日配信)

そしてこの薮本雅巳容疑者は、安倍元首相の長年の友人である“アベ友”だったと、日刊ゲンダイが報じています。

記事にはこうあります。

例えば、安倍氏が首相だった2017年5月の「首相動静」には、別荘のある山梨県河口湖のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」に籔本容疑者が同行。他にも2人が仲良く並んで写っている写真も拡散しており、安倍氏は籔本容疑者を「籔ちゃん」と親しげに呼んでいたという報道もある。

出典:【安倍晋三】「日大汚職事件」の容疑者は“アベ友”だった! モリカケ・桜に続く新疑惑にネットは大騒ぎ – 日刊ゲンダイDIGITAL(2021年10月7日配信)

いよいよ大物政治家の名前が、登場してきました。

井ノ口容疑者を強引に理事にさせた田中理事長

田中理事長と井ノ口理事の間柄はかなり特別です。

このことは、今回の事件の舞台となった関連会社「日本大学事業部」が立ち上がる2012年ごろ、井ノ口容疑者は理事長の「特別補佐」の肩書で、日大事業部の自動販売機事業などを手掛け始めたころ、異例の登用に学内では反対意見もあったものを、田中理事長は「俺が決めた」と一蹴し、2017年には日大の理事に就任し、大学中枢にも食い込んでいったことで伺えると思います。

この井ノ口容疑者は、2018年5月に日大アメフト部が関西学院大学の選手に対して「悪質タックル」を行った際に、隠蔽に関与した疑いで一度理事を退任しています。それにもかかわらず、2020年9月には理事に復帰しています。

その井ノ口容疑者に田中理事長につないでもらった薮本容疑者は、田中理事長とも交流を深め、田中理事長が副会長を務める日本相撲連盟の副会長に就任したほか、日大関連の事業にも関わっていったとみられています。

一連の問題に、田中理事長が関与している可能性を疑うのは当然でしょう。

薮本容疑者が理事「錦秀会」の経営は火の車?

今回のお金の流れに関する絵を書いたのは薮本容疑者のようですが、どうやら薮本容疑者が理事を勤める関西の医療法人「錦秀会」の経営があまりうまくいっていないという話があります。

大阪の7病院のほか介護老人保健施設や医療コンサルを抱え、グループ全体では約5,800床を誇る関西屈指の医療法人の理事長ですが、私生活は派手で、夜の北新地では有名で、フェラーリ愛好家でも知られるそうです。

病院経営が火の車で、資金繰りに苦慮していることからのスキームではないかという話もあります。

日刊ゲンダイの記事には、薮本容疑者の医療法人系列病院の大規模改修工事に必要な資金融資をメガバンクに申し込んだところ、条件に「理事長解任」を突きつけられたことで、今回のスキームに至ったのではと指摘しています。

今では肩書が“前”理事長ですので、理事長を辞任していることになります。

日大から流出した2億2,000万円は、昨年8月上旬に医療コンサルティング会社に振り込まれ、経理上は会社の売り上げとして計上した後に、約1億円が配当金として薮本容疑者に支払われたとのことです。

この1億円は、籔本容疑者の口座に移されてクレジットカードの支払いなどに、残りは医薬品関連会社の役員報酬などに充てられたということまで調べられています。

岸田政権で“アベ友”爆弾が炸裂する

今回の板橋病院建て替えプロジェクトは、約1,000億円規模になるそうで、様々な業者が理事長のまわりに群がるのもうなずけます。

薮本容疑者は、井ノ口容疑者の指示で、田中理事長に3,000万円が渡されたというそうです。

捜査は、証券取引等監視委員会からの告発案件などを担当する経済班が担うのですが、班を率いる副部長は、日産のカルロス・ゴーン事件の主任検事を務めた強硬派だと、文春は報じています。

それにしても、田中理事長が言う「政治への裏金」とは、いったいなんなのでしょうね。今回のことで、政界スキャンダルに発展することになるのでしょうかね。

総選挙後の岸田政権は、新たな火種を抱えることになりそうです。

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