箏アーティストLEO、藤倉大に委嘱した「箏協奏曲」で紀尾井ホールに登場 「古典表現や日本の音楽の美学を感じてもらえれば」

箏アーティストLEO、藤倉大に委嘱した「箏協奏曲」で紀尾井ホールに登場 「古典表現や日本の音楽の美学を感じてもらえれば」

  • SPICE
  • 更新日:2021/09/15
No image

幅広い活動で注目を集める若き箏アーティストLEOが、2021年10月22日(金)に紀尾井ホールでリサイタルを行なう。作曲家 藤倉大に自ら委嘱した「箏協奏曲」は、この4月にサントリーホールで管弦楽版を初演しているが、今回は室内楽版として初披露。尺八の藤原道山との共演もあるなど、楽しみなプログラムが組まれている。LEOにリサイタルに向けた意気込みを聞いた。

――藤倉大さんに作曲を委嘱したきっかけは?

2017年に初めてお話する機会があり、2018年に初めて曲を書いていただきました。藤倉さんは最近では和楽器のための曲をたくさん書いていらっしゃいますが、当時はまだそこまで多くなかったと思います。僕は、藤倉さんが三味線の本條秀慈郎さんのために書かれた「neo」という曲を知って、いい意味ですごくショックを受けたんですね。和楽器、三味線ならではのよさが存分に出ている中で、革新的な音づかいがあり、衝撃を受けました。

当時、藤倉さんはまだ箏のための独奏曲は書かれたことがなかったのですが、ダメもとでご相談しました。そうしたら、箏の作品は書いたことがないけれどもぜひ書いてみたいです、とおっしゃってくださり。そこで誕生したのが、今回の協奏曲のもとにもなっている「竜」という作品です。本当にすばらしい曲で、藤倉さんご自身も気に入っていらっしゃるそうです。

この「竜」をコンサートでも度々演奏してきましたが、2年ほど経ち、自分の活動の幅もより広がり、オーケストラとの共演の機会も少しずついただくようになりました。また、オーケストラ以外でも西洋楽器とのコラボレーションを重ねていく中で、「オーケストラとお箏」という編成の可能性を感じ始めるようになりました。でも、レパートリーがどうしても少ない。新しいレパートリーを作っていかなければならないのではないか、と思い、意を決して藤倉さんに協奏曲を個人委嘱しました。

Ryu (竜) for koto - Dai FUJIKURA

――藤倉さんの曲の魅力とは?

(藤倉さんは)本当に勉強熱心な方なんですよね。作曲家であれば、どなたでもその楽器のことを研究されてから作曲すると思いますが、藤倉さんの場合、その勉強量や、知識量が凄まじいんです。お箏の歴史もさることながら、箏らしい表現だったり、箏の特徴をご自身で研究されていて。その上で、スカイプやZoomでミーティングをして、僕が実際に箏の技法をお見せしたり、僕が思う箏の特徴を説明したり、そういったことを全部汲み取ってくださった上で作曲されています。だからこそ、楽曲には箏の古典的な魅力がたくさん詰まっていますし、なおかつ藤倉さんの独特な音の世界というものもあって。お箏の本質的な魅力がしっかり伝わる現代曲は、まだまだ世に多くは出ていないので、僕としては本当にすばらしい作品を書いていただいたなと感じています。

――そんな協奏曲をオーケストラと演奏する中で、ご自身感じられた箏の新たな魅力や可能性は?

例えば、武満徹が琵琶と尺八のために書いた「ノヴェンバー・ステップス」という曲がありますが、和楽器・日本の音楽の世界観と、オーケストラの音楽の世界観、二つの空間を対立させるようなイメージで作られている曲だと思うんですね。二つの空間がそれぞれあって、その二つの空間が反応し合うような。対して、伊福部昭の「二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ」は、西洋楽器のソリストと同じように箏を用いて、箏(ソリスト)の奏でる音楽をオーケストラが引き立てるように書かれています。オーケストラと箏のあり方、存在の仕方も様々な形があり、そうした相互の関係性自体も模索が必要ではないかと思っています。

藤倉さんの場合は、箏の音楽を増幅させるようなイメージで、オーケストラの音を書いていて。藤倉さん自身、箏の音楽にオーケストラの翼が生えたようなイメージで書いているとおっしゃっていましたが、実際に演奏してみて本当にその通りだと実感しました。オーケストラと演奏することで、箏の音楽がより広がって大きな宇宙になっていくような、一人で箏を演奏するだけでは到達し得ないような規模の音楽になったのではないかと。本当に新しい挑戦でしたし、新たな可能性が開けたのではないか、と感じています。

技術面では、とにかく難しい楽曲なのですが(笑)。まず、16分の15拍子という、特殊な拍子で始まるんですね。でも、その変拍子の中で、指揮者と僕、さらにオーケストラの団員一人一人の方と、呼吸を合わせていくと、独特なグルーヴが生まれてくる、とても面白い楽曲です。また、会場や指揮者・共演するオーケストラによっても、毎回音の余韻や、微妙な間が変わってきますが、余白のある音楽なので、お互いの演奏に反応して音楽を伸び縮みすることができる作品です。自分が出した音、オーケストラが出した音に、お互いに反応して展開していくので、演奏するたび全然印象が変わって、その都度新しい発見もあります。何度弾いても新鮮に感じられる曲です。

No image

『LEO 箏リサイタル ~古典を現代に迎える~』

――そんな曲を、今回、室内楽版として初演されます。

オーケストラ版ですと、スケール感という面白さがありますが、今回、室内楽版では、演奏者の数がもっと絞られるので、指揮者も含め、一人一人の奏者間でのコミュニケーションもより図れるのではないかと思います。タイトなアンサンブルが、室内楽版ならではの魅力になってくるのではないかな、と。

――会場の紀尾井ホールについてはいかがですか。

箏の音色・響きとすごく相性がいいのではないかと思っています。今回、自分自身で企画する公演としては初めてのリサイタルなのですが、構想を2~3年ほど練っていて、会場はぜひ紀尾井ホールで開催したい!と当初から思っていました。藤倉さんの「箏協奏曲・室内楽版」のほかにも、高橋悠治さん、坂東祐大さんによる委嘱新作の初演もあり、日本人作曲家の中でもトップで活躍されている方々の新作を演奏します。さらに、ゲストとして藤原道山さんにも出演いただき、沢井忠夫先生の「上弦の曲」という名曲を二人で演奏します。藤原道山さんが「上弦の曲」を演奏するコンサートを3年ほど前に観て、その音楽に本当に感動して……。それ以来、藤原道山さんとこの曲を演奏することが、自分の中で一つの夢だったので、すごく楽しみでもありますし、緊張する点でもあります……!

――リサイタルを楽しみにされているお客様にメッセージをお願いいたします。

今回のテーマは、「古典を現代に迎える」。僕自身、演奏する上で「日本人ならではの表現」という点を日々追求しているのですが、日本独特の表現や、日本の音楽の魅力といったものは、日本人のDNAに染みついているような、誰しもが共感できる部分があると思います。今回、現代の作曲家による新作を中心に演奏しますが、「古典を現代に迎える」というテーマのとおり、古典的・日本らしい要素・美学を、今の時代の音楽的な感覚やアプローチで、表現したいと思っています。ぜひ、日本の音楽の良さ・日本らしさを感じて、お楽しみいただけるとうれしいです。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加