3月10日、米シリコンバレー銀行が経営破綻した。一部では2008年のリーマン・ショック時のような混乱が起こるのではないかと心配する声も上がっているのが、実際のところ、金融市場にはどのような影響があると考えられるのだろうか?
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「米シリコンバレー銀行の破綻が金融市場に与える影響について」と題したレポートを発表した。レポートの詳細は以下の通り。
FDICは3月10日米シリコンバレー銀行の破綻を発表、米銀の破綻としては史上2番目の規模に
米連邦預金保険公社(FDIC)は3月10日、銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したと発表した。
FDICによると、2022年末時点におけるSVBの総資産は約2,090億ドルに達しており、米銀の破綻では、2008年9月に起きたワシントン・ミューチュアル(総資産3,070億ドル)の破綻に次ぐ史上2番目の規模となる。
SVBは、スタートアップ向けの融資で知られていたが、株式で資金調達を拡大したスタートアップの余剰資金を預金として受け入れた結果、総預金残高は約1,754億ドルに膨れ上がった(FDICによる2022年末時点の残高)。
スタートアップへの融資需要が見込めないなか、SVBは急増した預金を、住宅ローン担保証券(MBS)や米国債で運用していた。
市場では、他の金融機関の有価証券にも損失が発生するとの懸念から、リスクオフの動きが顕著
しかしながら、昨年来の米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ実施により、SVBの保有する有価証券の価格が下落し、損失が発生する状況に至った。
そのため、SVBファイナンシャル・グループは3月8日、資本増強のために普通株の発行などで22億ドル強を調達すると発表し、同時に、SVBは有価証券約210億ドルを売却し、税引き後利益ベースで約18億ドルの損失を計上することを明らかにした。
ただ、この発表が逆に信用不安を招く結果となり、9日にはSVBの預金流出が加速し、SVBファイナンシャル・グループの株価は急落した(図表1)。
また、これら一連の流れを受け、米金融市場では、他の金融機関もSVBと同様、米長期金利の上昇で保有有価証券に含み損が膨らみ、将来的に売却損が生じる恐れがあるとの懸念が広がり、リスクオフ(回避)の動きが強まった。
米財務省、FRB、FDICは早々に施策を発表、市場の混乱を鎮静化させるのに大きく貢献しよう
今回のSVBの破綻は、流動性管理や金利リスクの管理に問題があったSVB固有の事情が主因であることから、他行も同じ状況と考えるのは行き過ぎた懸念との声も聞かれる。
ただ、長期金利上昇による保有有価証券への影響は、広く金融機関に共通する。
なお、ニューヨーク州金融監督当局は3月12日、暗号資産関連企業との取引で知られる米銀シグネチャー・バンクの破綻を発表した。
このような状況下、米財務省、FRB、FDICは3月12日、SVBとシグネチャー・バンクの預金を全額保護する例外措置を発表した。
また、FRBは同日、SVBの破綻を機に金融システム全体が機能不全に陥る「システミックリスク」を抑制するため、新たな流動性対策(Bank Term Funding Program、BTFP)を発表した(図表2)。
これらの施策は、市場の混乱を鎮静化させるのに大きく貢献すると思われる。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。

出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい