超人エムバペ。新世代のスーパースターは私生活も超優等生

超人エムバペ。新世代のスーパースターは私生活も超優等生

  • Sportiva
  • 更新日:2021/05/04

今シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)で目下8ゴールを量産し、得点ランキング2位につけるパリ・サンジェルマン(PSG)のFWキリアン・エムバペ。

そのセンセーショナルな活躍ぶりから、今では通算10ゴールでCL得点ランキングトップに立つドルトムントのFWアーリング・ブラウト・ハーランドとともに、「ロナウド&メッシ時代にピリオドを打った新世代のスーパースター」との呼び声がすっかり定着した。

【動画】エムバペのメス戦ゴールシーン2連発

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数々の偉業を成し遂げてきたキリアン・エムバペ

最近の現地メディアの報道でも、エムバペを形容する際によく使われた「将来を担う」「若い」「早熟」といったお馴染みの単語は、ほとんど見当たらない。世界屈指の大金を稼ぐひとりのスーパースターとして扱い、パフォーマンスが悪ければ容赦ない批判を浴びせるように変化した。もう、フランスの将来を担う若者を見守る温かさはなくなった。

振り返れば、18歳で彗星のごとくCLの舞台に登場したエムバペが、22歳の現在に至るまでに成し遂げてきた数々の偉業は、長いサッカー史を紐解いてもなかなか類を見ない。

2016−17シーズンのCLラウンド16、対マンチェスター・シティ戦。初めてヨーロッパの舞台に登場した当時モナコ所属のエムバペは、そのデビュー戦でCL初ゴールをマークすると、第2戦でもゴールを決めて逆転勝利に貢献する。

以降、準々決勝のドルトムント戦で3ゴール、そして敗れはしたが準決勝のユベントス戦でも1ゴールと、6試合で6ゴールを量産。一躍、18歳のヤングスターとしてスポットライトを浴びた。

そのシーズン、エムバペはモナコの通算8度目のリーグ優勝に貢献するとともに、リーグ・アン年間最優秀若手選手賞を受賞し、年間ベストイレブンにも選出された。さらにその夏には、買い取り条件付きでPSGにレンタル移籍。1年後の買い取り金額は、推定1億8000万ユーロ(約235億円)と値付けされた。

ネイマールとのコンビで躍動した2017−18シーズンも、エムバペの勢いは止まらない。リーグ・アンでは年間13ゴール8アシストの活躍を見せて国内三冠の原動力となると、2年連続でリーグ・アン年間最優秀若手選手賞とベストイレブンを受賞。ラウンド16で敗退したCLでも4ゴール3アシストをマークした。

圧巻は、その夏にロシアで行なわれたW杯で4ゴールを記録し、19歳にしてフランス代表の10番を背負って通算2度目の優勝トロフィーを母国に持ち帰ったことだ。10代でW杯決勝の舞台で得点を決めたのは、1958年大会のペレ(ブラジル)以来の偉業である。

世界チャンピオンとなって自信をつけたエムバペはさらに進化を遂げ、2018−19シーズンには33ゴール7アシストをマークし、リーグ・アン2連覇に貢献したほか、個人としては初のリーグ・アン得点王と年間最優秀選手賞をダブル受賞。3年連続で年間最優秀若手選手賞とベストイレブンも手にしている。ラウンド16でマンチェスター・ユナイテッドに敗れたCLでは、通算4ゴール5アシストを記録した。

そしてコロナ禍に揺れた2019−20シーズンも18ゴール5アシストの活躍で、リーグ3連覇をはじめ2度目の国内三冠を達成。2年連続で得点王に輝いたほか、CLではクラブ史上初の決勝戦に進出して5ゴール5アシストと、申し分のない結果を残している。

要するに、プロデビュー2年目の18歳から21歳までの4シーズン、エムバペは国内リーグで負け知らず。スランプらしきものを一度も経験することなく、ほとんどすべての栄光を手にし続けてきた。22歳となった今シーズンもその勢いは増すばかりで、29試合25ゴールでランキング単独トップ(5月2日時点)。その成長ぶりはとどまることを知らない。

モナコ時代が第1覚醒期とすれば、W杯優勝後の2018−19シーズンが第2覚醒期。そして自身のゴールでバルセロナとバイエルンを撃破した今シーズンは、エムバペの第3覚醒期にあたると見ていい。

それにしても、なぜエムバペはここまで立ち止まることなく、進化を続けることができたのか。おそらくその答えのヒントは、幼少期から育まれた特有のキャラクターにある。

フランス代表が初めてW杯を制した1998年、エムバペは決勝の地スタッド・ド・フランスのあるサン=ドニ地区ボンディで生まれた。地元でサッカーコーチを務めるカメルーン人の父親と、アルジェリア人の血を引く元ハンドボール選手だった母親に厳しく育てられ、脇目を振ることなく、ただひたすら大好きなサッカーにすべてを捧げてきた。

少年時代から突出していたその才能は、早くから各クラブのスカウトの注目の的となった。だが、それらに対しても決して浮かれることなく、地に足をつけて自分の成長だけに集中。自身の進路も、そこで成長できるか否かを基準に、家族と話し合って決めてきたという。

14歳の誕生日を前に、レアル・マドリードに家族ごと招待された時もそうだった。ジヌディーン・ジダン監督の熱心な誘いを受け、憧れのクリスティアーノ・ロナウドと記念撮影をした時でさえも、その姿勢がブレることはなかった。現在エムバペの代理人を務める父ウィルフリードのアドバイスも、エムバペの成長に一役買っているのだろう。

そんなエムバペは、明るく親しみやすい性格で、どこにでもいる普通の青年として知られている。推定年棒20億円以上と言われる大金を手にする現在も、高級車や高級ブランドにまったく興味を示さず、ライフスタイルは変わらない。ネイマールの誕生パーティーには顔を出すが、それ以外、友人とナイトクラブに行くようなこともない。

モナコ時代に初めてリーグ優勝を経験した時、経済的に貧しい人々が暮らす地元ボンディに優勝トロフィーを持って凱旋するなど、故郷への想いも大切にする。また、W杯優勝で手にしたボーナスの全額(約5700万円)を慈善団体に寄付したように、社会貢献の意識も極めて高い。私生活でも、まったく隙のない優等生なのだ。

◆小野伸二以上。歴代世界最高の「両利き」プレーヤーはベルギー人FW>>

世界で一番の選手になるために、すべてのエネルギーを注ぐ----。

エムバペがどんな時も地位や名声に溺れることなく、日々ストイックに自分を鍛え上げていることは、PSG加入時の体格と現在のそれを比較すればよくわかる。コロナ禍による中断後は、またひと回り身体が大きくなった印象だ。

そのエムバペがCL準々決勝のバイエルン戦を前にフランス『RMC Sport』のインタビューに応え、次のようなコメントを残している。

「これまでロナウドやメッシと同じピッチで戦ったこともあるし、彼らが自分より優れていて、何億倍もすごいことをしてきたことも理解している。でも、自分の頭の中では、いつも自分が一番だと言い聞かせてプレーしているんだ。そうやって常にベストを尽くさないと、自分の限界は超えられないからね」

どこまでも野心的かつ純粋な気持ちでサッカーと向き合うエムバペの限界は、自身でさえも想像できない未知なる世界の領域にある。

果たして、19歳でW杯優勝トロフィーを手にした男は、22歳でビッグイヤーを掲げることができるのか。そして、2歳下のホーランドを破ってCL得点王の称号を手にできるのか。

マンチェスター・シティとの準決勝第1戦で沈黙に終わったからこそ、現地時間5月4日(日本時間5月5日)に行なわれる第2戦のエムバペが何をやってくれるのか、楽しみでならない。

中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

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