「僕が打者なら変化球は捨てる」鳥谷敬氏が語る、ロッテ・佐々木朗希の攻略法

「僕が打者なら変化球は捨てる」鳥谷敬氏が語る、ロッテ・佐々木朗希の攻略法

  • 集英社オンライン
  • 更新日:2022/05/14

日本プロ野球では28年ぶりの完全試合を達成するなど、入団3年目にしていよいよ本格化した感のある千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手。昨年までチームメイトだった野球解説者の鳥谷敬氏が、佐々木朗希の“怪物”たる所以を分析する

「約束」されていた3年目の活躍

千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が、3年目の今季、めざましい活躍を見せています。

ここまで7試合に先発して4勝0敗、防御率は1.47。特筆すべきは49イニングを投げて78奪三振、その上、与四球はわずか6という安定ぶりです。

4月10日にはプロ野球史上16人目となる完全試合を、史上最年少の20歳5か月で達成しました。ここで僕が1番驚いたのは、9回を投げ切って球数がわずか105球だったことです。

日本新記録となる13者連続三振、日本タイ記録となる1試合19三振を奪っての完全試合だったということを考えると、ほとんど余計な球を使わずに27人の打者を完全に抑えたことになります。まるで野球ゲームですね。

去年までの2年間はチームメイトでもあったので、この大記録達成は僕もすごく嬉しく思っています。105球という球数には本当に驚かされましたが、一方で120~130球使えればいつ完全試合をやっても不思議ではない、とも思っていました。

理由は2つあります。1つは、もちろん投手としての技術、ポテンシャルがすごいということ。もう1つは、千葉ロッテマリーンズというチームが、この日を思い描いて、佐々木投手にこれまでの2年間を過ごさせてきたということです。

北海道日本ハムファイターズに大谷翔平選手が入団した時もそうだったと聞いていますが、1年目のシーズンは、吉井理人投手コーチが、とにかく余計なことを考えさせないために、佐々木投手を1年間1軍に帯同させました。

試合では投げないけれども、1軍の雰囲気に慣れること、自分の投球の形を作っていくという作業に専念させたのです。

そして、自分の形がある程度できてきた2年目は、登板間隔を多めにあけながら実践経験を積むシーズンでした。その上で、3年目の今年から満を持して先発ローテーション入りさせたわけです。

つまりこの結果は決して偶然のものではなく、2年間の計画的な準備に基づいたものなのです。

確かなプランを持って佐々木投手の育成に尽力した千葉ロッテマリーンズの方針は晴らしいのひと言ですが、一方でこのような育成方法は、読売ジャイアンツや阪神タイガースのような、すぐに結果が求められる、注目度の高い球団では不可能だったかもしれません。

能力、技術以上に優れた「意識」

佐々木投手の1年目は、力を入れれば球速は出るけれど、常時スピード感やバランスを保てるという感じではなく、まだ安定していない印象でした。それがこの2年間で本人も色々な知識や考えを吸収して、力の加減やバランスなどを身に付けたのでしょう。

個人的に印象深いのは、食事やトレーニングなど、プレー以外の面でも非常に高い意識を持っていたこと。サプリメントやトレーニングの話をしたことがあるのですが、自分が20歳の時と比べたら雲泥の差で、振り返ると恥ずかしくなるくらいでした。

以前、彼から「トレーニングで筋肉を大きくするという話をよく聞くのですが、鳥谷さんは、どう考えていますか?」という質問を受けたことがあります。

「トレーニングを継続することで、結果的に筋肉が大きくなるのはいいと思う。ただ、筋肉を大きくすることを目的に体を作ると、大きくなったことで満足感を得てしまうし、自分の思うような動きができる体ではないと意味がないのではないか」

と話すと、初めて聞いたという様子ではなく、「ああ、やっぱりそうですか」という感じでした。他のことに関しても、「自分はこう考えているのですが、どう思いますか?」といった聞き方をしてきたのが印象に残っています。

今はこれだけ情報がある世の中なので、どの情報を選ぶのかが重要になります。佐々木投手は、人に何か言われたとしても、自分でかみ砕いて納得しないとやらないというぐらいの強い信念を持っていました。

あの年齢で、そういう考え方ができるというのは、ある意味、身体能力のポテンシャルや投球技術よりも、すごいことだと思います。

おそらく本人はプロに入った時から、将来的にはメジャーリーグで活躍することを考えて生活しているように思います。そうなったらきっとダルビッシュ有選手や、大谷翔平選手のような活躍をしてくれるはずです。

真っすぐだけならプロは170キロでも打てる

僕がロッテに在籍していた2年間で、佐々木投手とは練習などでも対戦したことはありませんでしたが、おそらく対戦しても打てなかったでしょう。

もし、打てるとしたら、ストレートしかないと思っていました。僕は、大谷翔平投手と対戦する時は、ストレート以外の球種が来たら、全て見逃すということを決めていたのですが、それと同様の対策をするしかないと思います。それぐらい変化球は打てないというか、バットに当てることも難しいと思います。

ストレートはいくら速くても、タイミングを早く取ればバットに当たるんです。たとえ170キロでも、球種がストレートだけであれば、「あ、速いな」と思っても、プロであればほとんどの打者が対応できると思います。

ただ、佐々木投手であればフォークボールやスライダーといった他の球種があるので、ストレートがより速く見えますし、他の球種が頭にあるとストレートにも手が出せなくなってしまう。そういう意味で、自分の場合はストレートを狙うしか打てるチャンスはないのでは、と思っています。

今の佐々木投手には、球数を投げさせることも期待できません。攻略するのは本当に難しいと思います。対策を立てるというよりは、彼の調子の悪い日に当たることを祈るしかない……もはや、そのくらいのレベルに達している投手と言えるのではないでしょうか。

構成/飯田隆之 撮影/宮脇進

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