産油国が笑うだけ。岸田・バイデンの石油備蓄放出は無意味、インフレは誰にもコントロールできない=角野實

産油国が笑うだけ。岸田・バイデンの石油備蓄放出は無意味、インフレは誰にもコントロールできない=角野實

  • マネーボイス
  • 更新日:2021/11/25
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世界的な原油高騰を受けて、日米中印ほか各国が協調して石油の国家備蓄を放出すると表明しました。もしこの方法でインフレが収まらなかったら、次の手はありません。インフレをコントロールできるなどという考えは甘いのではないでしょうか。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)

最終手段「戦略石油備蓄の放出」を使って大丈夫か?

世界的な原油高騰を受け、各国でSPR(戦略石油備蓄)の放出が始まりました。

一見すると、科学的に需給を分析し、放出をしているように見えますし、これ自体に異論をはさむ人は少ないでしょう。供給が足りないのであれば、供給を行えばよい。理に適っていると私も思います。

でも、供給を増やしてもまだ足りなく、価格が上昇したらどうするのでしょうか?

東日本大震災のときの原子力発電所のように、想定以上の津波が来て何も手が打てなく、被害が拡大するのを眺めているまま……という状態を繰り返してはいけません。

結局、石油の国家備蓄の放出というのは「最終手段」であり、個人的には、いま用いる手段ではないと考えています。

万が一、これで収まらなければ、次回の策に何があるのですか?ということです。

実際に世界中で、日本語風にいえば「新嘗祭」が行われている中で、協調して国家備蓄を放出するのは評価できますが、できなかったらどうするの?ということです。

今回の原油高騰は異常。国家備蓄放出が逆効果となる可能性も

当メルマガで何度も指摘しているように、石油は冬の時期に向けて、12月上旬で最大ピーク需要になっています。供給があれば、買い占められるだけの話です。

放出しても、価格が下がらなければどうするの?とは、誰しもが思うことです。

石油価格というのは、ドルの価格と反相関の関係になっています。

最近の原油高騰は異常なことに、ドルが高騰しているときに原油が高騰をしているのです。これは、ちょっとやそこらの供給を増やしても「無駄だ」ということを端的に示しています。

通常、これだけドル高になれば、原油価格は私の肌感覚では45ドルくらいになっているだろうね、とは思います。

でも、なっていませんよね。むしろ、SPRの放出を決定したら上昇してしまっている……ということです。

ブッシュもオバマも「石油価格のコントロール」は無理だった

バイデン大統領は、何でもかんでも援助・補助と叫ぶばかりで、トランプが指摘するように「社会主義者」と言われても仕方がない側面もあると私は思います。そういったリベラル中道の考え方としては、無難な政策運営を行っていると思います。

しかし、今回の原油に関しても、コロナに関しても、何が勘違いしているのではないかな?とは思います。

彼の言動を見ていると、無難な政権運営を行っている自信から、コロナを克服し、インフレを退治できると本気で思っているようにしか思えない部分があります。

そんなことができるなら、リベラルがあまり好きではない私からすれば、そんなものをコントロールする前に自分自身の「失言癖」をコントロールしろよ、とは思います(笑)。

リーマン・ショック前もオバマ時代も、原油価格は100ドルを超えました。それをコントロールできたのか?といえば、ブッシュもオバマも、コントロールできなかったのが事実です。

放出しても無意味。原油を抱えて値上がりを待っている連中がいる

でも、結局は、ドルを高くすることによって原油価格が落ち着いた。

今回の場合は、ドルが高くなっても下がらない、という異常事態です。いつも言うように世界の原油の需給など誰もわからないのです。

わかっていることは、石油は世界中にあり余っていることです。そこに供給をしても、無意味なことは誰でもわかることです。

つまり、すぐ使える石油をもっている連中は、まだ上がると見て、抱え込んでいるのです。それをやめさせるためには、資金を絞りこむしかないのです。

連中は、儲かるのですから、なぜならこれから寒い時期になって放置していても高値で売れるのですから、バイデンが容赦なく締め上げると言っても、見つからない方法を探すだけです。

なぜなら、濡れ手に粟で儲かるからです。

在庫を抱えている連中からすれば、「ほざいてろ」としか思っていないはずです。たとえ、罪に問われても、何の罪なの?というものでしょう。

インフレもコントロールはできない

こういった価格の高騰というのは、コントロールできないもの。津波などの自然災害のようなもので、(先の原発事故については人災という声もありますが)これをコントロールできると考えているのであれば、大きな勘違いです。

パウエル議長も、インフレをコントロールするのに自信たっぷりのように見えます。しかし、できるのであれば、過去のインフレも防げたはずでしょう。

インターネットやAIが登場して、誰もが失敗を過度に恐れるようになっています。しかし、失敗もそれほど悪くなく、失敗するからみな人間的にも経済的にも大きくなるのに、失敗をみなさん恐れすぎとは私はいつも思います。

もちろん、直感や本能で言いたい放題の小室さん夫妻に関する報道などもう見たくもありませんので、そういうのもおかしいと思います。

でも、事実を重ねる「推論」を過信すぎるのも、駄目だということです。科学は私たちに新しい知見を与えますが、万能ではありません。決して過信をしてはいけません。

価格の高騰やインフレというのは、コントロールできないものと私は思います。

「金融緩和の副作用はインフレ」と、以前から言われてきたことです。それを過信して、めいっぱいの金融緩和・財政緩和をすればこうなることは当然でした。

そして、インフレのあとには、凄まじいデフレになることもわかっていることです。日本がその典型です。

パウエルFRB議長が再任

結局、米議会の党派対立の結果、パウエル氏が議長を続投し、対立候補が副議長となりました。正直、ま、悪くはない人事だと思います。

ただ、その結果を受けて、ドルと金利が暴騰です(笑)。この結果など、ちっとも読めませんでしたが、長期的な方針と合致しています。

言いたいことは、原油の高騰と同じです。最近は「インフレは退治ことができる」というトーンは非常にダウンしていますが、そんなものをコントロールできると思っているのであれば、あんた大きな勘違いしているよ、ということです。

「戦略石油備蓄」放出の無意味

わかりにくい方は、最近のインフレである、マスクを考えればいいのです。

コロナ禍の初期では、皆がマスクを探しまわっていました。この状態が3か月続くと、手作りマスクを作成し始めたのです。政府としてもマスク不足をなんとかしたいと思い、いろいろ動いたのでしょう。

で、解決しましたか?「アベノマスク」というわけのわからないものが登場もしましたけど。

マスクは足りないから高騰をしたのであり、中国から輸入が再開されたから、価格がデフレになったのです。

でも、原油は、足りているのに高いのです。つまり、供給を増やすという方策は間違いで、資金源を断たないといけないのです。

資源を断つということは、財政緩和と金融緩和の停止になるわけです(笑)。こんなもの政治的にできませんから、供給でごまかしているということなのです。

エアラインなどの人の移動が制限される中で、株価は去年より3割も高い、異常ですよね。その人の移動にまつわる企業は、お金があり余っているはずです。

寝かしておいても仕方ないから投資をしよう、当然の発想です。その投資を一生懸命、制限しようとしているのが、バイデンやパウエルなのです。

行動全体を俯瞰的にみていると全部、矛盾しているのです。個人的には、こんなものが上手くいくとは思っていません。

いつかは起きる副作用

パウエル議長は、4月にインフレ懸念があると明言したことが名伯楽と言われる由縁なのかな、とは思います。何かの政策を行えば、必ず副作用があるということです。

党派対立の激しいアメリカでは、失敗すると共和党が一気にそれを批判して支持率が低下する。だから失敗を失敗として認めようとしない。

結局、白か黒かの選択になっており、「1+1=2」ほど明確な正解なんてものは世の中に存在しないのに、あると信じて行動しているように思います。

過度に失敗を恐れれば、行動は生ぬるくなる。大胆に行えば、副作用が大きくなる。その割合を科学的に証明できれば合理性のある政策を行えますが、そんなものは時代背景によるものですから、無理な話です。データでは解析できない、と私は思います。

その副作用を一般国民に認めさせるためには、パウエルの行ったように、インフレ懸念があるというリスクの「事前説明」です。しかし、パウエル議長自身も年間で6%のインフレになるなど予測もしていなかったので、インフレ退治のトーンが下がってきたのでしょう。

インフレ後に待つのは大きなデフレ

安倍さんがコロナが起こった直後に「こんなことになるなんて誰も思っていないでしょう」と言っていたのが、私には印象的な言葉としてあります。

パンデミックというものが起きるというのは、はるか昔から言われてきたことです。つまり、予測の通りにモノごとは進まないのが、通常なんだなと改めて思います。

しかし、そのリスクの「事前説明」を行えば、ある程度の緩和ができる……ということは、パウエル議長が示しました。とはいえ、来年の春までインフレが収まらなければ、大変なことになるでしょう。インフレが終わったとしても、絶大なデフレが待っているわけです。まだまだ茨の道は続くと思っています。

このような結果は、成長を確保したいという思惑で、この2年がうまく行き過ぎた反動だと私は思っています。落ちるときに落ちないと、あとでその反動はもっとひどいものになる、と私は思っています。

ダメなときは、何をやってもダメ。政治的にはそんなものは許されないことでしょうが、でも、摂理に従わないといけないときもあるのではないかな、と思っています。

チャートを知っている方で、「このまま買いで大丈夫」と思っている方は多くはないと思います。

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