金正恩が「文在寅と急接近」シナリオが急浮上...“三重苦”で追い詰められた北朝鮮のヤバすぎる現実

金正恩が「文在寅と急接近」シナリオが急浮上...“三重苦”で追い詰められた北朝鮮のヤバすぎる現実

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/01/14
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異例事態…金正恩が「失敗」を認めたワケ

北朝鮮の最高指導機関である第8回党大会が5日から12日まで8日間開催された。これはこれまでで2番目の長さである。

今回の大会は2016年から約5年ぶりの開催である。1945年の党創建以来8回目であり、金正恩就任後2回目の開催となる。金正日総書記の時代には一度も開催されていない。今回の開催は北朝鮮が危機的状況にあり、失地を回復するための起爆剤であろう。

今回の党大会は、2016年の前回党大会で決めた国家経済発展5か年戦略の失敗に対する報告から始まった。金正恩氏は国家経済発展5か年戦略に触れて「掲げた目標は、ほぼすべての部門で甚だしく未達だった」と述べ、その失敗を率直に認めた。北朝鮮の最高指導者が失敗を認めることは極めて異例であり、それだけ厳しい状況に置かれているということである。

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「失敗」を認めた金正恩 photo/gettyimages

北朝鮮はこれまで非核化措置と引き換えに米国主導による国連経済制裁の解除を引き出し、中国や韓国の投資を引き込む戦略であったが、米国との非核化交渉の決裂、トランプ氏の大統領選挙敗退、新型コロナなどによりこの路線で成果が得られる見通しは立たなくなった。

北朝鮮では新型コロナ感染はいないと豪語しているが、感染防止のため中国との国境を封鎖した。それによって昨年の中国との貿易総額は前年の4分の1程度に落ち込み、最低限の生活必需品や今年の農業生産に必要な肥料や殺虫剤の入手も困難になっている。

“3重苦”に陥った北朝鮮経済

北朝鮮では、夏には穀倉地帯を水害が襲った。北朝鮮の山は樹を伐採して薪としているため、川に土砂が流れ込み、川底が上がって洪水をおこしやすくなっている。さらに今冬の記録的寒波は日本や韓国以上に寒い北朝鮮にとって過酷な環境となっている。

既に昨年の段階で1000万人以上が食料不足の状況にあるといわれてきたが、今年の食糧事情はますます悪化するだろう。

金正恩委員長は、3重苦に陥った経済の立て直しと求心力の維持に躍起となっている。
経済的には秋以降「80日戦闘」のスローガンを掲げ、各部門の増産運動を展開した。
軍事パレードでは涙を見せながら、「ありがとう」を繰り返した。国内の監視体制を強化し、脱北や反政府的言動の取り締まりに躍起となっている。

金正恩が「語ったこと」

こうした中で開催された党大会で金正恩委員長はどのような戦略を打ち出したのか。外交安保関係を中心にそのポイントを列挙すると次のとおりだ。

・非核化に言及なし。戦術核を開発せよ
・「米国は最大の敵」を何度も強調
・韓国への攻撃能力を誇示する一方、南北関係が「春に戻る可能性も」示唆
・金正恩氏を党総書記に推戴。金与正氏は政治局候補委員から外れる

北朝鮮は米朝関係の改善による制裁の解除に見切りをつけ、これに代わる戦略を模索しているということであろう。

それは韓国との関係の修復も視野に入れたものかもしれない。

「非核化」には言及しなかった事情

金正恩委員長は1月9日、核という言葉を36回使用したが、ついに非核化については一度も言及しなかった。

金委員長は「党中央は歴史的な2017年11月の大事変(火星15号発射)以後も核武力の高度化に向けた闘争をやめることなく領導し、巨大で新たな勝利を勝ち取った」と述べた。これは、2018年の平昌オリンピック参加以降、米韓と立て続きに首脳会談を行い平和攻勢をかけていた期間も核ミサイルの開発を続けていたことを認めたものである。

さらに金委員長は「核保有国の地位で、敵対勢力の脅威がおわるまで、軍事力を持続的に強化していく」と述べた。金委員長は「核兵器の乱用はしない」と言いながらも、核兵器の先制使用、報復打撃の可能性を排除しなかった。

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「核」を強調する北朝鮮 photo/gettyimages

金委員長は最大の主敵は米国と非難しながら、核武装の計画を詳細に公開した。まず核先制・報復打撃を高めるため、15,000キロの射程圏の標的に対する命中率を高めると述べた。これは米本土の大半が含まれる距離である。

さらに、核推進潜水艦や極超音速兵器開発にも言及した。核推進潜水艦は世界のどこでも奇襲攻撃できる戦略兵器であり、極超音速兵器もミサイル迎撃システム(MD)では迎撃が難しい兵器だ。

金委員長が非核化に言及せず、米国の圧力に屈しない姿勢を示したということは今後米国と交渉を行うにしても、それは完全な非核化ではなく核軍縮に方向転換させようということである。今後非核化を求める米国との交渉は難航せざるを得ない。

制裁の解除なくして、中露の支援に制約

北朝鮮は「国家防衛力の持続強化」の意思を明確にし「『強力な国家防衛力』は外交成果を担保する威力的手段だ」として、非核化による制裁解除の道から決別する意思を明確にした。

そうした中、金正恩委員長は「人民大衆第一主義政治に基づき、『自力更生・自給自足』の道を歩む」と宣言した。米国や国連などによる制裁解除・緩和に期待せず、しばらくは制裁に耐えていくという意味である。

現実にそれが可能か極めて疑問が多い。17年以降強まった経済制裁が、北朝鮮困窮の最大の要因である。経済制裁の解除なくして、韓国の本格的経済支援や中国との貿易の大幅拡充は難しく、中国やロシアにとって北朝鮮は決して魅力的な投資対象にならないであろう。それでも自力更生をスローガンに掲げなければならないところが北朝鮮の苦境を物語っている。

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習近平は助けてくれない photo/gettyimages

こうした中で北朝鮮は韓国の支援をのどから手が出るほど欲しがっているが、韓国は米国との関係から根本的な支援には乗り出せない。そこで北朝鮮としては韓国を威嚇することにより譲歩を引き出す、それによって米韓を引き離すことを戦略として掲げたのであろう。

「核兵器の小型化・軽量化、戦術兵器化をより発展させよ」として戦術核兵器の開発を指示した。これは、射程距離が短いため使用対象は韓国か日本、中国程度に限定される。これまで「対米用」としてきた核兵器を韓国にも使用する可能性を示唆したものである。

困ったときの韓国頼み

さらに先端戦術核兵器として超大型放射砲、新型戦術ミサイル、中長距離巡航ミサイルなどにも言及した。この兵器に核弾頭を装着する能力を確保したか否かは注目すべきである。

特に「北朝鮮版イスカンダル」として広く知られる新型戦術核ミサイルは射程600キロメートル以上で、韓国の全域と在韓米軍基地を射程圏に置いている。昨年の軍事パレードに登場したことで実戦配備段階にあるといわれている。ただ、これに核弾頭を装着できるかは未知数である。こうした兵器が実用化されれば韓国の安保はひとたまりもないだろう。それでも 文在寅政権は北朝鮮に反発しない。安保を何と考えているのか。

北朝鮮が明らかにした極超音速弾頭は中国やロシアから北朝鮮に流入したとみられるが今後中短距離弾道ミサイルから適応され具体化する可能性が高いと見られている。

「南側は我々の自主権に属する各種商用武器開発事業に対して挑発だと因縁をつけながら武器現代化に狂奔している」「南朝鮮当局が二重的で公平性のない思考的観点をもって挑発などと言いながら我々を批判すれば、我々もやむを得ず南朝鮮にそれなりの対応をするだろう」とし」「先端軍事装備の搬入と韓米軍事演習を中止しなければ、南北関係は3年前に戻る可能性がある」と警告した。

そして、韓国政府が提案する「防疫協力、人道主義的協力、個別観光のような非本質的問題を持ち出して、北南関係改善に関心があるような印象を与えている」として韓国政府の提案を一蹴した。

金正恩委員長は平昌オリンピック参加をきっかけに韓国に対して平和攻勢をかけてきた。

当時米朝関係は、トランプ氏がミサイル発射を繰り返す金正恩氏を「ロケットマン」と呼び、金正恩氏もトランプ氏を「老いぼれ」と言い返していた。

北朝鮮は大陸間弾道弾の開発を進め、日本を超えグアムを射程とする「火星12」ミサイル発射などで米韓を挑発した。これに対し米国はシリアへの巡航ミサイル攻撃やアフガニスタンでの大規模爆風爆弾兵器の投下で北朝鮮を圧迫していた。

アメリカには期待できない

こうした米朝の対立激化の緩和を図る目的で北朝鮮は韓国に近づいてきた。金正恩氏は平昌オリンピックへの北朝鮮の参加を表明、妹の与正氏が韓国を訪問して文在寅氏との接近を図り、それが板門店での首脳会談、文在寅大統領の平壌訪問に結び付いていった。

しかし、米朝の関係が進みシンガポールでの米朝首脳会談に発展してから北朝鮮の関心は米朝に集中していった。南北関係は米朝関係を進めるための道具に代わっていった。

そして北朝鮮はベトナムにおける米朝首脳会談が決裂して以来、その責任は誤った情報をもたらした文在寅氏にあり、文在寅氏は役立たないと判断すると、急に韓国を相手にしない姿勢に転換した。

米朝首脳会談が決裂したといっても金正恩氏はトランプ氏との個人的関係は維持していると確信していた。文在寅氏の助けなくしても、トランプ氏とのトップ会談の開催は可能であり、トランプ氏との直接の会談で膠着打開を図ろうとした。

しかし、その頼みのトランプ氏が昨年11月の大統領選挙で敗れ、次期大統領のバイデン氏はトップダウンではなくボトムアップで政治を行う政治家である。バイデン氏と直接の交渉で制裁解除にもっていくことは不可能である。

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バイデンとの直接交渉は難しい photo/gettyimages

バイデン氏は閣僚レベルの交渉で北朝鮮の非核化の意思が明らかになるまではトップ会談に応じない可能性が高い。しかもバイデン氏の安保ラインはいずれも北朝鮮の非核化について厳しい姿勢を示している。

こうしたことから北朝鮮は非核化姿勢でごまかすことはできず、核ミサイルの開発を続けていく姿勢を明白にすると同時に、米国の威嚇には負けない意思を明らかにしたものであろう。

文在寅へ急接近か。それとも…

反面、南北関係について「南朝鮮当局の態度によって、いくらでも近いうちに北南関係が3年前の春のように、すべての同胞が念願するように、平和と繁栄の新しい出発点に戻ることができるだろう」として、北南関係改善の可能性も示唆した。

1月8日の朝鮮通信は「現在の形勢と変遷した時代的ニーズの合うよう対南関係を考察し、対外関係を全面的に拡大・発展させるためのわが党の総的方向と政策的立場を明らかにした」と伝えた。

「対南問題の考察」「対外関係に対する全面的拡大発展」という表現は極めて異例であり、対米関係において韓国と関係を改善して米国との関係で利用していく方向に舵を切ったのではないかとの声が韓国内の北朝鮮専門家から聞こえてくる。

反面「現在の形勢と時代的要求」という言葉は南北や米朝ではなく、中国やロシアなどとの関係強化に向かおうとする趣旨だとの見方もある。

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文在寅に近づくか photo/gettyimages

党大会の新人事で、9日に党規約が改正され金正恩氏は父と同じ総書記に選出された。これは難局にあって正恩氏の権威を高めるとともに、党中心の国家運営を強化する狙いがあるのだろう。

大会では中央委員会委員の選出もあり、最高指導部の政治局常務委員5人も選出された。そこで注目されるのは、経済失敗の責任を取らされ、朴奉珠(パク・ボンジュ)首相が常務委員を退き、正恩氏側近の趙勇元(チョ・ヨンウオン)党第一副部長が、常務委員に選出された。同氏はまた、党書記局書記、党中央軍事委員会委員にも任命され、指導部の中心的地位を得た。

金与正「新人事」の意味

反面、与正党第一副部長は党政治局候補委員から外れた。ただ、中央委員会の委員139人のうち21番目に名前が呼ばれた。これまで実質ナンバー2として韓国に圧力を加えてきたが、今後はしばらく表には出ず、金正恩氏の近くで活動していくということであろう。

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金与正の動向に注目 photo/gettyimages

それは対南圧力を当面自制するということかもしれない。

北朝鮮は、大きな苦境に直面し、米国大統領との直接の接点がなくなった。こうした時、利用しがいのあるのが韓国である。北朝鮮の呼びかけに応じ、米国を離れ北朝鮮に近づいていくことにならなければいいがと懸念される。それは米韓分断の北朝鮮戦略が功を奏したということでもある。

そうなりかねない今の文政権だから心配である。

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