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女子高生はなぜ殺されてしまったのか。哀しい真実がついに明らかに――『adabana -徒花-』著者・NONさんインタビュー

女子高生はなぜ殺されてしまったのか。哀しい真実がついに明らかに――『adabana -徒花-』著者・NONさんインタビュー

  • ダ・ヴィンチニュース
  • 更新日:2021/07/23
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『adabana -徒花-(下)』(NON/集英社)

サスペンス漫画『adabana -徒花-』(NON/集英社)上巻は、雪の積もる小さな町で起きた女子高生殺人事件から始まります。自首した少女・ミヅキは、被害者・マコの親友でした。どこにでもいるような女子高生が、なぜ手を血に染めたのか。物語はミヅキとマコとの出会いまで遡り、ふたりの複雑な関係が少しずつ明かされていきます。しかし、なにかがおかしい。ミヅキは本当に犯人なのか……。

いま、編集部注目の作家

中巻ではマコの視点で、ひとつの事実が語られていきます。そこで明らかになるのは、上巻でミヅキがついた“重大な嘘”です。けれど、それでもまだ真相には辿り着けません。

読者に対し大きな謎を残していた本作は、7月16日に発売された下巻でついに完結しました。すべての謎が解かれ、哀しい事件の真相が白日の下に晒されます。その真犯人を知ったとき、上巻で描かれたミヅキの言動の一つひとつがつながり、あらためて冒頭から読みたくなってしまうはず。本作にはそんな“中毒性”があります。

作者のNONさんは、これまで『デリバリーシンデレラ』や『ハレ婚。』などのヒット作を生み出してきましたが、サスペンス漫画は初めての挑戦だったとのこと。本作からNONさんのファンになった読者も多く、紙の単行本は重版出来、電子コミックの売上も異例と言えるほど好調でした。

NONさんと、公私ともにNONさんのパートナーで一緒に漫画を作り上げてきた原案の手塚だいさんに、結末に至るまでの経緯や下巻の見どころ、完結した今の気持ちについて話を聞きました。

(取材・文=若林理央 撮影=石川ヨシカズ)

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自分の中に、主人公のミヅキがいる

――いよいよ最終巻が発売されましたね! 今、どのようなお気持ちですか?

NONさん(以下、NON):読者の方にひとつの結末を提供することができて、ほっとしています。漫画を描くときは「なぜ登場人物はこのような発言や行動をするのか」を台詞ではなく、表情でわかりやすく伝えるように意識しているのですが、今回はサスペンスだったので、「読者の方に真実を気づかれてはいけない。だけど気になってもらわなければ」という難しさがありました。

いつも私は登場人物に感情移入して漫画を描きます。自分の中に主人公のミヅキがいる。だから「読者の方に共感してほしい」って気持ちが強くて、ミヅキがひとりでに動き出すこともありました。でもネタバレしてはいけないので、原案の手塚だいが冷静に構成を確認して、場面や演出、細かい台詞を見てくれました。

手塚だいさん(以下、手塚):パートナーだからこそ率直に話せるので、納得がいくまでお互いに意見をぶつけ合いました。

――当初は、どのように構想を得て始まったのでしょうか?

手塚:最初は友達の罪をかぶる人の物語を考えていたんです。ただ、「友達側からするとそれは絶対いやだよな。いたたまれない。でも友達が死んでいたら?」と考えを深めていくうちに、本作の構想に繋がりました。

NON:物語はマコの死から始まり、ミヅキが自首して供述します。上巻で彼女が話すのは「なりたかった自分」。だから上巻だけ読むと普通の女子高生がサイコパスの殺人鬼であるような、矛盾を感じると思います。

中巻以降、特に下巻では「本当のミヅキ」が明かされていきます。足りない部分があって、不安げで時に感情的になってしまう。血の通った人間味が出てくるんです。

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手塚:中巻は過去に遡り、事件の被害者であるマコの視点で「なぜ哀しい事件が起きてしまったのか」をじっくり描いてほしいとNONにお願いしました。そのほうがミヅキの心情もより読者の方に伝わると感じたので。中巻は、下巻を盛り上げるための装置としても機能しています。

読んでくれている読者への思いが展開を変えた

――「NONさんの中にミヅキがいる」と先ほど言っていましたが、例えばどのような共通点がありますか?

NON:私はミヅキと同じで、追い詰められたときに他人を頼るタイプじゃないんです。自分を犠牲にしてまで手を差し伸べてくれる人を信頼できない。「私を助けることによって、この人にどんなメリットがあるんだろう?」って怖くなってしまうんです。

だから「ミヅキならこうする」と登場人物主体で物語を展開させることもできたのですが、手塚と話しながら、それは長期連載なら良いかもしれないけど、短期連載ではやはり俯瞰して見る目が必要だなと気づいて。途中で変えた展開もあります。

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――どのあたりを変えたのですか?

NON:大きなところで言うと、連載初期はもっと絶望的な結末にしようと考えていたんです。手塚や担当編集さんの意見だけではなくて、「ここまで読んでくれた読者さんをがっかりさせたくない」と考えて変えました。

――これまでの作品にも言えることですが、NONさんの際立った画力がよりサスペンスのリアリティを高めたのではと思っています。特に力を入れている部分はありますか?

NON:気にかけて描いている箇所は表情、特に瞳です。繊細な感情を瞳でどう表せるか。最近はデジタルで修正しやすくなったので、今までより時間をかけて作画にこだわるようになりました。本作では「この場面でどうしてミヅキがこんな表情をするのか」考えてもらえるように入念に描いています。

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――最近はモノローグの多い漫画も増えていますが、表情で語らせることに迷いはありませんでしたか?

NON:はい。そこも手塚と話し合いました。最終的に、こうだと明言するより表情を見て想像してもらえたほうが読者の方も楽しいのではと思ったので、モノローグはあまり入れないようにしました。

イケメン大学生・暁裕樹の正体は中巻で明らかに

――マコの元彼として登場する暁裕樹の性格は、最初から決まっていたのですか?

NON:連載当初はまだ考えていましたね。悪そうな人は描けますが、「悪そうに見えて実はそんなことないんじゃないか」と思えるような人物を描くのは難しくて。中巻以降は彼のキャラがはっきりと表現できたので、のびのびと描写しました。

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手塚:裕樹は、バックボーンを深掘りしたいキャラクターでもあったね。

NON:うん。ただ本作ではそのぶんミヅキとマコに焦点をあてて、彼女たちの背景を描き切りました。

――下巻で存在感が増したマコの父親は、この物語でどのような立ち位置だったのでしょうか?

NON:ミヅキに現実を突きつける役割です。彼によってミヅキはマコの境遇に気づきます。反対の立場が弁護士の早見ですね。彼女には「あんな大人がいれば良いな」と夢を託しました。

10代ならではの繊細さを持つふたりの少女

――マコの周囲には早見のような大人がいませんでしたね。彼女が自分を蔑む場面がありますが、かわいそうで仕方なかったです。

NON:描きながら辛かったです。初連載の『デリバリーシンデレラ』もそうですが、私自身はマコのように頑張って周囲の環境に対応する女性を肯定しています。だけど10代半ばの高校生の感覚では違うかもしれない。ミヅキとマコの年齢は、この物語の展開に大きく影響しています。

ミヅキもまだ幼さが残る年齢だということもあって、決して周囲の共感を得られない行動をしてしまうのですが、「私だったらミヅキの気持ちがわかる」と読者の方が思えるように考えながら漫画を作り上げました。

――ラストシーンがまぶたに焼き付いています。ここは特に力を入れて、NONさんと手塚さんで話し合ったのではないかと思うのですが、どうでしょうか?

手塚:登場人物に何を言わせるのか、結末を迎える場所はしっかりとした絵で描きこんだほうがいいからどこにするのか……時間をかけて話しました。

NON:「ラストはここで!」と熱弁して、最終的には手塚も納得した形で結末を迎えられました。

――『グランドジャンプ』連載時から単行本化にあたって変えた箇所はありますか?

NON:こだわりの2ページを加筆しました。連載で読んでくださった方は楽しみながら探してほしいですね。裁判の場面もより詳しく描いています。

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善悪を決めつけず読むと、味わいが深まるはず

――上巻は帯に「何が起きたら人を殺しますか?」と書かれていました。ミヅキはひとつの答えを見つけたのでしょうか?

NON:はい。今はさまざまな生き方をする女性がいますが、ミヅキとマコは選択肢がない人生を送っていました。彼女たちの行動は「悪」と言いきれるのかもしれないけど、善も悪も、立場によってひっくり返るのではと感じています。

手塚:現実に起きている事件もそうですよね。何が加害者をその犯罪に至らせたのか、背景までしっかりと考えたい。本作もそんな気持ちで手に取ってもらえたら、味わいが深まると思います。

――今後のご予定は?

NON:今、神田沙也加さん原案の漫画を描いています。『Children’s Project ‐チルドレンズプロジェクト‐』という悩める子どもたちの話で、既にFODで配信が始まっています。沙也加ちゃんと熱い打ち合わせをしていて、彼女の思いを具現できるように頑張っています。

私のオリジナル作品の構想はこれからですね。『デリバリーシンデレラ』や『ハレ婚。』のような甘い雰囲気の物語になると思います。

機会があれば、またサスペンス漫画も描きたいです。『adabana-徒花-』は強い輝きを持った情熱的な作品に仕上がり、描いていてとても楽しかったです。全3巻、たくさんの方に読んでもらえたらと思っています。

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