ジャニー喜多川性加害、20年米大統領選、ノルドストリーム爆破、セレンスキー汚職......報道しない自由という社会的もみ消しの被害者たち

ジャニー喜多川性加害、20年米大統領選、ノルドストリーム爆破、セレンスキー汚職......報道しない自由という社会的もみ消しの被害者たち

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2023/05/26
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見て見ぬふりだったほとんどのオールドメディア

アゴラ5月12日「ジャニー喜多川氏の性加害をついにTBSが報道」にあるように、これまで長年にわたって「だんまり」(=「報道しない自由」)を決め込んでいたオールドメディアも、この深刻な問題に触れざるを得なくなってきた。

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by Gettyimages

直近で騒がれ始めたきっかけは、ニューズウィーク日本版3月16日「BBCのジャニー喜多川『性加害』報道が問う、エンタメ界の闇と日本の沈黙」で取り上げられているBBCのドキュメンタリー番組『捕食者:Jポップの隠れたスキャンダル』であろう。

だが、オールドメディアのほとんどが報道しない自由を駆使してきた、この問題がまったく日本で伝えられてこなかったわけでは無い。

弁護士ドットコム5月13日「なぜ東京高裁は『ジャニーズ性加害』を『事実』と認定できたのか 1999年文春報道の裁判」の記事によれば、最初の報道は1965年の週刊産経3月29日号である。また、1988年には「光GENJIへー元フォーリーブスの北公次禁断の半生記」が出版され、その後も告白本の出版が相次いだ。

その後、1999年10月に週刊文春が「ジャニーズの少年たちが『悪魔の館』」(合宿所)で強いられる“行為”」などの記事でキャンペーン報道を行い、それに対して喜多川氏とジャニーズ事務所が文芸春秋を提訴した。

この裁判の経緯の詳細は前記弁護士ドットコムの記事を参照いただきたいが、ポイントは「東京高裁(2003年5月15日)は、少年らの供述は具体的で全体として信用でき、『セクハラに関する記事の重要な部分について真実であることの証明があった』として、賠償額は880万円から120万円に減額した」ということである。その後ジャニーズ事務所側は最高裁に上告するが、2004年に棄却され高裁の判決が確定したのだ。

最初の報道があったのが、今から58年前の1965年、2004年高裁によって「性加害」が認定されてからでも19年が経過している。

その間、ほとんどのオールドメディアが「報道しない自由」を駆使し、むしろジャニー喜多川氏やジャニーズ事務所を持ち上げてきたのは紛れもない事実だ。

日本外国特派員協会において性被害を告発したカウアン・オカモト氏は、「(事実を知っていたら)、多分(ジャニーズ事務所に入ることは)なかった」と述べている。

早ければ58年前、少なくとも19年前には「性加害」の拡大を防げたはずのオールドメディアの不作為(報道しない自由)によってもたらされた被害は余りにも大きすぎる。

カトリック教会の性加害報道

ジャニー喜多川氏の場合は、ジャニーズ事務所という組織が持つ圧倒的な力を背景に行われた「個人の行為」であるが、「組織全体が性加害」を行ってきたのがカトリック教会である。

その卑劣な性加害問題については、2019年12月13日公開「ローマ教皇に言いたい、バチカンこそが難民を受けいれるべきです!」5ページ目「性的虐待問題をスルーするな」「カトリック教会で『子供の性的虐待3000人以上』…狂信と信念の境目」で詳しく解説した。

カトリック教会は、現在でも13億人以上の信徒を擁するとされる巨大な権力を持った組織だが、中世における権力はさらに強大であった。無数の無実(魔女や悪魔が実在すると信じるのなら別だが)の人々を、拷問したり生きたまま焼いたり(火あぶり)した。

だから、そのような「絶対権力」を持った組織において、いつから性加害が行われてきたのかを想像すると恐ろしい。

このカトリック教会の性加害は、プロテスタントの国(ただし、JFKとジョー・バイデンというカトリックの大統領を2人生んでいる)である米国で2002年頃に大々的に報道されたことにより明るみに出た。

「社会的もみ消し」により拡大する被害

2002年頃にすでに米国でカトリック教会の性加害が大々的に報道されているのに、2019年にローマ教皇が来日した際に、日本のオールドメディアのほとんどは積極的にこの性加害問題を取り上げることがなかった。それどころか、バチカン自らが難民を積極的に受け入れていないのに、日本の難民政策を批判するという僭越な行為に対しても無批判であったのだ。

ジャニー喜多川問題も、前述の「BBCのジャニー喜多川『性加害』報道が問う、エンタメ界の闇と日本の沈黙」」のように、海外での追及、そしてネットでの拡散が火付け役となった。

このように「報道しない自由」を駆使することにより、「社会的もみ消し」を推進し(性)被害者を拡大していると考えられる大多数のオールドメディアの存在意義は一体どこにあるのだろうか?

ノルドストリーム爆破疑惑

オールドメディアの「社会的もみ消し」に加担する行為は性加害報道に限られるわけではない。

例えば、2020年10月25日公開「【米大統領選】ヒラリー疑惑もバイデン疑惑も「報道しない自由」って…」の事例が上げられる。

米英日のオールドメディアは、既得権益に挑戦するドナルド・トランプ氏に関する事は、どのように些細で馬鹿げたことでも大げさに報道し、そのイメージを落とすことに必死だ。

それに対して、彼らが必死に持ち上げるジョー・バイデン氏やその背後に控える民主党勢力の「不都合な真実」については「報道しない自由」を駆使してだんまりを決め込む。

だが、それは氷山の一角にしか過ぎない。

2月24日公開「米政府が関与か? ノルドストリーム爆破疑惑のバイデンと『迷走』岸田のコンビでは日本が危うい」4ページ目「米国のお家芸の秘密工作!?」において、昨年10月8日公開「ノルドストリーム・パイプラインを破壊したのは、本当にロシアなのか?」という疑惑に対して、伝説のジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が「バイデン米大統領の命令を受け、米海軍のダイバーが爆発物を使用してパイプラインを破壊した」という大スクープをものにした。

だが、米英日のオールドメディアにおいては、「言い訳がましい解説」が散見されただけで「報道しない自由」が駆使された。それどころか、この事実に背を向け「(犯行を)他国に擦り付る」目的を持ったとしか思えない記事で「社会的もみ消し」を強力に推進しているように思える。

ゼレンスキーとバイデンの汚職疑惑

また、前記「ノルドストリーム爆破疑惑のバイデンと『迷走』岸田のコンビでは日本が危うい」3ページ目「ウクライナのひどい腐敗」も、同じような「社会的もみ消し」の対象である。

4月23日公開「マクロン発言は『勇気ある』ものなのか、日本も米国の同盟国だが子分ではない」2ページ目「ノルドストリームと腐敗」で述べたように、前述シーモア・ハーシュ氏がゼレンスキー大統領の汚職の激しさもスクープしている。

同記事3ページ目「バイデン民主党への不信」で述べた「ウクライナと密接な関係を持つバイデン一家」の汚職疑惑についても、オールドメディアは知らん顔である。

このような状況が明らかであるにもかかわらず、いまだにオールドメディアの報道を無批判に信じる人々が存在することは、私にとって驚きである。

インターネットの力

だが、幸いにして、過去4半世紀くらいで、インターネットが急速に発達した。ジャニー喜多川氏の性加害問題も、BBCのドキュメンタリーの話題などがネットで広がらなければ、オールドメディアの「報道しない自由」によって、結局「社会的もみ消し」の憂き目にあっていた可能性が高い。

もちろん、インターネットの世界でも、2021年1月19日公開「デジタル全体主義の足音が聞こえてくる」や、同3月2日公開「あなたも監視されている-このまま中国型監視社会に向かってよいのか」で述べたようなあからさまな検閲行為がまかり通っている。

だが、それでも「心あるネット市民」の行動が、オールドメディアによる「社会的もみ消し」を暴くことが可能であるということを証明したのが、今回の「ジャニー喜多川性加害問題」である。

2024年大統領選挙の報道はどうなるか

2020年米大量選挙とその後の議会侵入事件においても、2021年2月25日公開「テキサス州が『大統領選挙不正との戦い』を牽引しているのはなぜ」の事例のように、オールドメディアがジョー・バイデン氏の「不都合な真実」に関して「報道しない自由」を駆使したことは明らかだ。

逆に、政敵であるドナルド・トランプ氏に不利な情報に関しては「明確な根拠無く」大げさに報道する。ダブルスタンダードであると言われても仕方がないであろう。

この問題は、政敵であるドナルド・トランプ氏に対して「明確な根拠無く」バッシングを行うという点において、受動的な「社会的もみ消し」だけであった「ジャニー喜多川・性加害問題」よりも悪質であると考える。

オールドメディアは、トランプ氏の主張を報道するときに「明確な根拠無く」という言葉を枕詞のように使うが「明確な根拠無く」報道しているのは明らかにオールドメディアである。

そして、あっという間に2020年11月の選挙からおおよそ2年半が経過し、2024年の大統領選挙が迫ってきた。

2020年の大統領不正選挙疑惑に蓋がされ「社会的もみ消し」の対象になったと考えられることは、米国民主主義の危機であると考える。

2024年の大統領選挙でも同じ事が繰り返されれば、第2次南北戦争のような取り返しのつかない事態も起こりえる。バイデン氏や民主党、さらにはそれに追従してきたオールドメディアは、「支配力」を失えば、ジャニー喜多川氏やジャニーズ事務所と同じ運命をたどるであろうことがよくわかっているから何をするかわからない。

シーモア・ハーシュ氏のように「勇気あるジャーナリスト」が、もっとたくさん生まれてこなければ米国の民主主義は危うい。

もちろん日本も同じ状況だ。「心あるジャーナリスト」の活躍を大いに期待している。

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