タコの母親が交尾後に自ら死んでしまう理由を研究者が解明

タコの母親が交尾後に自ら死んでしまう理由を研究者が解明

  • GIGAZINE
  • 更新日:2022/05/14
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タコは知能が高く、体色を変えたり手足を再生したりしながら外敵から身を守る生存戦略を持っています。しかし、タコのメスは卵を産んだ後に食事をやめて衰弱し、卵が孵化するころには死んでしまうことでも知られています。なぜ自己防衛意識の高いタコのメスが卵を産んだ後に死んでしまうのかを、シカゴ大学・ワシントン大学・イリノイ大学シカゴ校の研究チームが解明しました。

Steroid hormones of the octopus self-destruct system: Current Biology

https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.04.043

Changes in cholesterol production lead to tra | EurekAlert!

https://www.eurekalert.org/news-releases/952033

研究チームによると、「卵を産んだ後に衰弱死してしまう」というタコの母性行動は「視神経腺」と呼ばれる、哺乳類の脳下垂体に似た器官に原因があるそうで、母親のタコの視神経腺がコレステロールの代謝に大きな変化をもたらし、その結果、生成されるステロイドホルモンに大きな変化が生じるとのこと。

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1977年にブランダイス大学の心理学者であるジェローム・ウォデンスキー氏は、カリブ海で採取されたツチダコの母親から視神経腺を除去すると、卵を守ることを放棄して摂食行動を再開し、さらに数カ月間長生きすることを明らかにしました。このことから、母親のタコは視神経腺から分泌されるホルモンの影響で餌を採らなくなって衰弱死してしまうと論じられましたが、そのホルモンがどんなものでどのように作用するのかは不明でした。

今回の論文の筆頭著者でワシントン大学生物学のヤン・ワン助教は大学院生時代に、シカゴ大学で神経生物学を研究するクリフトン・ラグズデール教授と共に、Octopus bimaculoides(カリフォルニア・ツースポットタコ)の視神経腺のRNAトランスクリプトームの配列を解読しました。RNAトランスクリプトーム配列を解析すると、視神経腺における遺伝子転写産物のすべてを解明し、細胞内における遺伝子の発現を把握することが可能になります。そして、タコが絶食を開始すると、コレステロールの代謝やステロイドの生産を行う遺伝子の活性が高くなることが判明したそうです。

そしてワン助教は今回の研究で、生殖後のタコの体内でステロイドホルモンの増加に関与する3つの経路を発見したとのこと。そのうちの1つはプロゲステロンプレグネノロンという妊娠に関連する2つのステロイドホルモンを生成するもので、2つ目は母胎のホルモンや胆汁酸の中間成分を生成する経路、3つ目はコレステロールの前駆体である7-デヒドロコレステロールを生成するものでした。そして、卵を産んだメスのタコで視神経腺が大きく変化し、プロゲステロンとプレグネノロン、7-デヒドロコレステロールなどが通常より多く生成されることが判明しました。

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人間の遺伝病の1つであるスミス・レムリ・オピッツ症候群は、7-デヒドロコレステロールをコレステロールに還元する酵素の遺伝子が変異し、コレステロール産生の低下によって発生する症候群です。このスミス・レムリ・オピッツ症候群でみられる症状の1つに「自傷行為を繰り返す」というものがあるそうで、卵を産んだメスのタコの行動を想起させると研究チームは述べています。

人を含む他の動物においても、コレステロールの代謝が変化すると、寿命や行動に大きな影響を及ぼすことから、研究チームは、コレステロール産生過程の阻害が、他の動物と同様に卵を産んだメスのタコの行動に大きな影響を与えている可能性を示唆しています。

ワン助教は「コレステロールが、食事の観点からも、体内の様々なシグナル伝達系においても重要であることはわかっていました。コレステロールは細胞膜の柔軟性からストレスホルモンの生成まであらゆることに関与していますが、たこのライフサイクルプロセスにも関与していることは大きな驚きでした」とコメントしました。

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