元バレー代表・迫田さおり 木村沙織の笑顔の奥に見えたもの

元バレー代表・迫田さおり 木村沙織の笑顔の奥に見えたもの

  • 西日本スポーツ
  • 更新日:2020/10/18
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【連載】つなぐバレー つながる想い

コロナ禍で来夏に1年延期となった東京五輪。バレーボール女子日本代表は2012年ロンドン五輪以来のメダル獲得とお家芸復活を目指している。

そのロンドンでの銅メダルメンバーだった迫田さおりさん(32)=鹿児島市出身=は無名校の出身ながら、チームメートと「想(おも)い」をつなぎながら「日の丸」を背負う一流選手へと駆け上がった。惜しまれつつユニホームを脱いで3年。それでもファンを魅了した代名詞バックアタックの記憶は色あせない。バレーの魅力を「ボールと一緒に心をつなぐスポーツ」と言い切るアタッカーの歩みを振り返った。(聞き手・西口憲一)

◇   ◇   ◇

≪東レと女子日本代表で迫田さんとチームメートだった木村沙織さんは、日本の女子バレーボールで初めて五輪4大会連続出場を果たすなど「バレー界の顔」でもあった。年齢は木村さんが迫田さんの1歳上で現在34歳。名前が同じ「さおり」で同じアタッカーだったことから「Wサオリ」と呼ばれた≫

私にとって憧れの存在です。高校(東京・成徳学園高=現下北沢成徳高)時代に「春高」で優勝されただけでなく、10代で「日の丸」を背負うなど光り輝いていました。メディアの注目にも心を乱さず、最後までトップとして走り続けた方です。ファン以外にも名前を広く知られているのに、壁をつくらない。どうしたら皆が気持ち良く競技に打ち込めるか、楽しく同じ時間を共有できるか、相手の気持ちに人一倍寄り添う方でした。

調子が良くないときもテレビカメラに表情やしぐさまで一挙手一投足を追いかけられます。エースとして結果も求められます。ご自身のことだけでも精いっぱいだったのでは、と思います。何重もの重圧と向き合う状況でチームメートのことを先に考えられる人間性はまねができませんでした。たくさんの方から「天才」と言われていました。努力を積み重ねたプレーと沙織さんの人柄が合わさっての「天才」ではないでしょうか。

≪木村さんとは練習などでペアを組んでいた時期があり、歯を食いしばりながら汗を流す姿が忘れられないという≫

身長も私より高いですし、身体能力も私とは比較になりません。そんな沙織さんが体調が悪そうな日にもかかわらず、周りに心配をかけないように、いつもと同じようにトレーニングに打ち込んでいました。「沙織さん、あまり無理しないでくださいね」と伝えたら「リオ、ありがとう」と笑顔で応えてくれました。

負担がかかりやすい膝をはじめ、バレーボールの選手は誰しも体のどこかを痛めています。私も肩を故障しました。多くの方が沙織さんについて丈夫で大きな故障に見舞われることなくプレーヤー人生を全うしたような印象をお持ちかもしれません。

実際はいろんな箇所に痛みを抱えながらコートに立ち続けたはずですし、あれだけのプレーをされていた方です。「絶対に治してやる!」という気持ちが強かったからこそ、治癒も早まっていたのではないでしょうか。「これは絶対に治らないわ」とか「痛い、痛い」とネガティブになっていたら、治りも遅くなると思います。

リーグ戦や代表戦でも「○○の試合までには絶対に治すんだ!」という明確な意志を持ち、そこにコンディションを合わせることができる。責任感も強い方でした。

≪コートでまぶしい光を放った2人は2012年のロンドン五輪で日本を銅メダル獲得に導き、16年のリオデジャネイロ五輪で5位入賞に貢献した。同じ時代を駆け抜け、17年3月に木村さん、2カ月後に迫田さんが現役生活に幕を下ろした≫

強弱をつけ、相手と駆け引きしながらアタックを打てる沙織さんの技術…それだけ視野が広く、頭の回転が速かったからこそできたのだと思います。バレーボールの中で唯一、一人でやるプレーのサーブでも相手の嫌がるところを攻めていました。打つ方もプレッシャーがかかる中、ピンポイントで狙えるのはそれだけの練習をしていたからではないでしょうか。

プレーや精神面の強さだけではありません。仲間を勇気づける「笑顔」こそ、もう一つのすごさだと実感しました。「国を背負い」「メダルを懸けて」戦っていても、自然体で優しい雰囲気を持つ沙織さんの周りは明るい顔でいっぱいなんです。試合で何度励まされたか、数えられないほどです。さまざまな試練から逃げず、乗り越えた人だけが持つエネルギーがスパイスとなって周囲を引き付けるのでしょう。

実は現役時代に沙織さんを見習って「よしっ、今日は頑張って、一日中ずっと笑っていよう」とチャレンジしたことがあるんです。私なりの一大決心でした。結果は一日どころか、何時間も持たなかったですね(笑)。

所属事務所が同じなので、お仕事で鹿児島から上京したときなどにお目にかかることがあります。ユニホームを脱いでも沙織さんの笑顔は“最強”のまま。癒やされますね。見慣れているはずなのに、どこか懐かしさも感じます。(随時公開)

西日本スポーツ

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