「スラムダンク」EDを歌ったWANDSの復活劇 名曲を引き継いだ若手ボーカルの“葛藤”

「スラムダンク」EDを歌ったWANDSの復活劇 名曲を引き継いだ若手ボーカルの“葛藤”

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  • 更新日:2021/04/07
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第5期WANDSのボーカルに抜擢された上原大史(写真=事務所提供)

アニメ「スラムダンク」エンディング曲の『世界が終るまでは…』や中山美穂とコラボした『世界中の誰よりきっと』など、1990年代に数々のヒット曲を打ち出し、一世を風靡したWANDS。デビュー時から何度かメンバーチェンジを繰り返し、現在は「第5期」という位置づけだ。第5期は、約20年の活動休止期間を経て2019年11月に始動。黄金期を支えたベテランの柴崎浩(Gt.)、木村真也(Key.)に加え、ボーカルには新鋭の上原大史が大抜擢された。業界も一目置く上原がインタビューに応じ、伝説のバンドを引き継いだ時の葛藤、上杉昇ら先代ボーカルへの思いなどを語った。

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*  *  *

――メンバーが入れ替わりながらも解散はせずに、数十年に渡ってバンドを継承し続けているWANDSは、業界的にも珍しいと思います。こうしたバンドの形態を、どのようにとらえていますか。

まったくのゼロから新しいバンドを始めるよりも、幅広い人に見てもらえるのは強みだと思います。昔からのファンからも注目してもらえますし、メンバーが入れ替わることで、新しい世代の人の目に留まるきっかけも作れる。WANDSのファンの年齢層は、上から下まで幅広い。かつての名曲を歌って継承しつつ、新たな曲を出すことで、バンドの歴史を更新することもできます。

――上原さんが伝説的バンドのボーカルに抜擢されたきっかけは何だったのでしょうか。

始動は2019年11月ですが、その半年以上前の春にはデビューの話をいただいていました。僕は当時、WANDSが所属するレコード会社「ビーイング」のグループレーベルで作曲などをしたり、デモに歌を吹き込んでいたのですが、それを聞いたプロデューサー(長戸大幸氏)が、「ええ声だな」と。どうやら声を気に入ってもらえたようです。

――あのWANDSを引き継ぐことへのプレッシャーはありましたか。

デビューまでは自分で大丈夫なのか、とにかく不安で、悪い想像ばかりしていました。もっと総スカンを食らうと思っていましたが、幸いにもデビュー後は、応援してくれる方もたくさんいた。今はデビュー当時に比べると、不安もだいぶ落ち着きました。昔は昔、今は今。別物として見てもらえばいいと、割り切っています。

――デビューが決まってから、不安を解消するためにどのような準備をしてきましたか。

WANDSの曲を聴き込んで、歴代のボーカルお二人の発声を、徹底的に研究しました。WANDSは子どもの頃から聴いていたのでなじみがありましたが、こんなにも一小節一小節、何度も注意深く聴いたのは初めてでした。音楽活動をするようになってから改めて聴いてみると、これまでとは違う新たな発見がありました。

――先代ボーカルの発声をどのように分析されたのでしょうか。

初代ボーカル・上杉昇さんの発声は、ロックなギターサウンドに合うような、とがった声をしています。現代では軽やかな発声が主流ですが、それとは真逆に行っている感じ。ド派手でかっこいいのですが、これを僕がやろうとすると、喉への負担が大きいんです。僕は喉が強い方ではないので、ライブの終盤になるときつくなるだろうなと。

逆に2代目ボーカルの和久二郎さんは、メタルバンドのボーカルに近く、ハイトーンボイス。じっくり聴いてみると、意外と喉を開いている。喉への負担は少ないのだということが分かりました。

お二人のイメージをもとに、最初はとにかく自分の声を寄せるようにしていました。過去のボーカルたちと、あまりにも別物になるのは違うかなと思っていたので。

――「最初は」ということは、途中からスタンスを変えたのでしょうか。

最初は原曲超えを目指そうとしていましたが、先代のイメージを取り入れて、再現性を高めていったところで、どうあがいても超せないことがわかりました。原曲はもう完成されていて、オリジナルが100点なんです。それは仕方ないと開き直って、これは自分の新曲なんだくらいの気持ちで歌い、別物として楽しんでいくことにしました。

――そうした器用さと、いろいろなタイプの歌い分けができる自在さは、上原さんの強みだと思います。

どれか一つが抜きんでているわけではないですが、器用にいろいろとできるところは、たしかに僕の強みかもしれません。

中学生の頃は、ラルクやサザン、平井堅さんなど、歌のモノマネをよくしていたんです。あとは子どもの頃からジャンルを問わず、いろんな音楽を聴いて歌って育ちました。特定のアーティストに深く入れ込むことはなく、浅く広く聴くタイプです。そのおかげか、自然とインプットはたくさんできていた。歌だけでなく、曲を作る際もたくさんのインプットをもとに、日常の悲しみ・苦しみ・喜びを投影して、そこにフィクションを加えています。

――幼少期から学生時代にかけて、WANDSの曲にはどう触れてきましたか。

年の離れた兄がいたので、『時の扉』や『もっと強く抱きしめたなら』などは、幼いころから自然と聴いていました。でもやはり、一番印象が強いのは「スラムダンク」のエンディング曲『世界が終るまでは…』です。リアルタイムでも見てはいましたが、まだ幼かったので、淡い記憶です。原作とアニメに本格的に触れたのは、中学生ぐらい。カラオケに行けば必ず誰かが歌っていたし、僕自身も歌っていました。まさか自分がWANDSとして歌い継ぐことになるなんて、当時は思いもしませんでしたが(笑)。

――バンドメンバーの柴崎さん・木村さんは、上原さんが幼少の頃からすでに活躍しているベテランです。年齢差もありますが、どのように接しているのでしょうか。

お二人は長年プロとして活躍しているのに、僕のような後輩にもすごくフランクに接してくれて、心地がいいです。顔合わせ直後の頃も、僕の緊張を悟ってか、向こうから話しかけてくださいました。伝説と呼ばれるバンドの後釜として入る新人を、気遣ってくれたのだと思います。お二人は心の底から尊敬できますし、自分もいつか後輩ができた時にこうなりたい!と思いますね。

――4月7日発売のDVDには、11月1日に配信された無観客ライブが収められています。ライブを振り返ってみて、いかがでしたか。

難しかったですね。お客さんのいない中で歌ったのは、「WANDSの活動としては」初めてでした。今までで一番緊張したかもしれません。見ている人たちが、ファンではなくスタッフだったので、厳しいまなざしが注がれて緊張しましたね(笑)。

この時、実は、いま現在配信などで世に出ている曲以外にも2曲ほど撮っていまして、その未公開映像がDVDの特典として収められています。おたのしみに。

――最後に、今後の目標を教えてください。

これまでのWANDSはロックでダークな感じが求められた部分があったと思います。でも、5期となった今は、時代もボーカルも違うので、「WANDSらしさ」みたいなものを意識せずにやっていきたいなと思っていますね。それよりも5期のWANDSらしさを出して、自分に合った、無理のない雰囲気でやりたいと思います。

あと、今までのWANDSの活動はどちらかと言えば内向的で、メディアへの露出も少なく、秘めたる感じが魅力にもなっていたと思います。ですが長い時間を経ての再始動で、今は先代の頃よりも音楽を取り巻く状況は変わっています。

今はもっとオープンな方が、時代に合うのかなと思っています。現代はSNSやYouTube、NetFlixなど、いろんなところにチャンスがありますから。最新のWANDSとして、「今の時代ならではの見せ方」ができたらなと思っています。(構成=AERA dot.編集部・飯塚大和)

飯塚大和

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