性感染症のオーストリア男性から新型スーパー淋菌が発見

性感染症のオーストリア男性から新型スーパー淋菌が発見

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/06/23
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この男性の旅は、「スーパー淋病」的な意味でスーパーな旅となった。ユーロサーベイランス誌に掲載されたばかりの症例報告には、とあるオーストリア人男性に起こったカンボジア旅行中とその後の出来事が書かれている。報告の要点は、この50代の男性が、新種の超多剤耐性(XDR)淋菌に感染したことだ。

これは、新しいことへの挑戦が良い結果を産まなかった例のひとつだ。この新しい菌株は、アジスロマイシンに高い耐性を示し、セフトリアキソン、セフィキシム、セフォタキシム、シプロフロキサシン、テトラサイクリンにも耐性を持っている。症例報告書を執筆した、オーストリア保健・食品安全庁、オレブロ大学、LKH Hochsteiermarkの著者たちによれば、このようなXDR淋菌が発見されたのは2回目だ。通常淋病の治療に使われるのはアジスロマイシンとセフトリアキソンなので、今回の菌株が広がると困ったことになる。

2018年3月、フォーブス誌上で、淋菌がアジスロマイシンに対する高レベルの耐性とセフトリアキソンに対する耐性の両方を持つ、初めての報告例を取りあげた。当時、英国の男性を巻き込んだこの2018年の症例は「世界最悪の淋病症例」と呼ばれた。また、薬剤耐性があるために特に殺すのが難しいことから、「スーパー淋病」というニックネームが付けられた。

かの英国男性はもはや「世界最悪」の称号をひとりで背負う必要はない。それ以来、そのXDR淋菌は世界各地に広がり続けたが、これはこの問題への対処が不十分であったことを示している。そして今や、Eurosurevillanceの新しい症例報告によれば、どうやら世界には新しい2種類目のXDR株が登場したようだ。

とはいえ、近所の金物屋に行ったからといって、スーパー淋病にかかるわけではない。淋病は性行為感染症(STI)なのだ。したがって、スーパー淋病に罹患すると、配偶者やいつものパートナーにどんな言い訳をしたとしても、どこかで性行為をしたことがばれてしまうのだ。Eurosurevillanceの症例報告に書かれている男性は、カンボジアを旅行中に売春婦相手にセックスをしただけでなく、コンドームもつけていなかった。その通り。おそらく多くの人間とセックスを重ねているであろう見知らぬ人とのセックスでコンドームを使わないのは、もちろん安全とはいえない。それは、STIが当たるクジを引くようなものだ。

実際、ジャガイモを焼いたり、煙突を掃除したり、ホットドッグに火をつけたり(いずれもセックスを婉曲的に表現した表現)した後5日目くらいに、このオーストリアの男性は排尿時に灼熱感を感じ、ペニスからの分泌物を発見した。このような症状は、大量のアイスクリームやネットフリックスのイッキ見で単純に解決できるようなものではないことは明らかだ。そこで、この男性は2022年4月にオーストリアの泌尿器科を訪れた。そこで、尿道スワブをはじめとするさまざまな検査を行ったところ、淋菌の存在が明らかになった。そこで医師はこの男性に淋病の典型的な抗生物質治療(セフトリアキソン1グラムの筋肉注射とアジスロマイシン1.5mg投与)を行った。医師はおそらく、これがありふれた淋病のケースだと考えたのだ。

残念なことに、この淋病については、その考えはすぐに打ち消された。2週間後くらいにクリニックで再診を行った際には、男性は症状は治っていると話した。だが注意が必要だ、症状がないからといって、必ずしも感染していないとはいえないのだ。淋菌感染症は見てわかるヘアスタイルのようなものではない。感染していたとしても必ずしも明らかではないのだ。そこで、医師は尿道スワブを再び実施した。綿棒に付着したものをPCR検査すると、とんでもないことがわかった。淋菌はまだ残っているようだったのだ。つまりは最初の抗生物質投与で感染が治まらなかったことを意味している。

検査でこの淋菌は、アジスロマイシンに高度な耐性を示し、セフトリアキソン、セフィキシム、セフォタキシム、シプロフロキサシン、テトラサイクリンにも耐性を示されて、治療の選択肢がかなり狭まってしまった。そこで1日2回、1グラムのアモキシシリン/クラブラン酸を7日間服用させたところ、ようやく感染症は治まったようだった。結局、分子解析の結果、この男性は新しいXDR株である淋菌に感染していたことが判明した。症例報告によると、AT159と名づけられたこの菌株は、「WHO Qと同じ亜系に属するが、313カ所のDNA配列が異なる」という。つまり、医師たちは新型の株を扱っていたことが、検査で明らかになったのだ。このような経緯で、新型菌株の症例報告がユーロサーベイランス誌に掲載された。

もちろん、症例報告というものは、これまでは非常に珍しい症例に限られていた。だがスーパー淋病が広がり続けて、廊下ですれ違いざまに質問すると「ああ、またスーパー淋病になったよ」という声が日常的に聞こえてくるような状況なのだ。しかし、この状況は今後、もしかしたらすぐにでも深刻化するかもしれない。米国疾病対策センター(CDC)のビデオでは、淋菌が新しい抗生物質に対して、いかに早く耐性を獲得したかが紹介されている。

現在、淋菌の特効薬はなく、新しい抗生物質はほとんど開発されておらず、抗生物質の過剰使用は依然として多い。政治家、政策立案者、企業の間では、抗生物質耐性菌の増加という問題に対処しようという差し迫った危機感が全体として欠けている。こうした条件は、スーパー淋菌の両株がさらに広がり、さらにはより新しいスーパー淋菌株が出現するためには好都合だ。こうしたことから最終的にはほとんどの「ありふれた」淋病の治療が本当に困難になる可能性がある。そしてこのことは、それほど遠くない将来に、世界に真の問題を残すことになりかねないのだ。

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