「日銀緩和修正」を爆速で理解! これは10年続いた"ドーピング"の終わりの始まりなのか?

「日銀緩和修正」を爆速で理解! これは10年続いた"ドーピング"の終わりの始まりなのか?

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  • 更新日:2023/01/25
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日銀は市中の10年国債を大規模に買い入れる、あるいは売却することで金利をコントロールしている。なお、10年国債の金利は「長期金利」とも呼ばれる

昨年12月20日に発表された日銀の緩和修正。主に市場関係者から驚きをもって迎えられたにもかかわらず、現状では生活に大きな変化はない。アレって結局なんだったの? 超基本的な疑問から今後の見通しまで、経済アナリストの森永康平氏と株式評論家の坂本慎太郎氏に聞いた!

【図表】いびつな形を描く日本のイールドカーブ

■そもそも国債の金利ってなぜ重要?

【Q】緩和修正って何?

【A】日本銀行が担当している金融政策の一部に変更が加えられたことを指します。その内容が、黒田東彦(はるひこ)総裁の下で10年にわたって続いた「大規模金融緩和」とは方向性が異なると受け取られ、大騒ぎになりました。(森永氏。以下、森)

【Q】変更の具体的な内容は?

【A】発表されたのは3点です。1点目が、日銀が売買して厳密に管理している「10年満期の国債(10年国債)金利」の変動幅を、±0・25%から±0.5%に拡大したこと。2点目が、必要に応じて10年満期以外の国債の購入額も増額すること。そして3点目が、国債買い入れ金額を月間7.3兆円から9兆円程度に増やすことです。(森)

【Q】そもそも国債の金利って何?

【A】国債の金利は、国債を1年間持っている間にもらえる利息を、国債の価格で割って求めます。利息は国債を発行するときに決定されてからは変わらないので、国債の価格が上がれば金利は下がるし、価格が下がれば金利は上がるという関係です。国債の価格は買い手が多ければ上がりますし、逆もまたしかりです。

日銀は大手金融機関や世界の投資家を相手に10年国債を売買し、国債の価格をコントロールすることで金利の変動幅を管理しています。(森)

【Q】10年国債の金利が特に重視されているのはなぜ?

【A】10年国債の金利が、世の中の貸出金利が決められるときの基準になっているからです。お金を刷れば必ず利息を払えて返済もできる国に比べれば、企業や個人にお金を貸すのはリスクが伴います。そこで、お金の貸し借りは「10年国債の金利にどれだけ上乗せするか」と考えるのが基本なのです。

10年国債の金利が上がると、固定金利型の住宅ローンや銀行から企業への融資、企業が発行する社債の金利なども連れて上がります。金利が上がるとお金を借りにくくなってしまい、経済活動にはマイナスです。そこで日銀は10年国債の金利に変動幅を設けて、金利が上がりすぎないよう管理しているというわけです。(森)

■金融引き締めや利上げではない

【Q】今回の決定の影響はどんなふうに出た?

【A】即日、10年国債の金利が約0.25%から約0.4%まで上がり、年が明けた6日からはほぼ0.5%の上限付近に張りつきました。その上、「さらなる緩和修正があるのでは?」という臆測で、投資家はさらなる変動幅拡大を見越した動きを見せていました。

しかし1月17、18日に行なわれた金融政策決定会合で追加の緩和修正はなく、10年国債の金利は上限の約0.5%から0.4%付近へと下がっています。(森)

【Q】金利が0.25%から上がったってことは、今回の決定は利上げに当たる?

【A】よく言われていることですが、そうではありません。例えばいま米国が盛んに行なっている利上げは、金融機関同士の貸し借りで適用される、満期が翌日の金利を上げています。あくまでも短期の金利を上げることが狭義の利上げなので、今回の措置は利上げといえません。(森)

【Q】利上げではないにせよ、金融緩和をやめる方向に動いたという報道は正しい?

【A】それも違います。まず大前提として、黒田総裁は昨年12月20日の記者会見で「金融引き締めではまったくない」と強調しました。実際、10年以外の国債も買うし、買い入れ総額も増やす(いずれも金利を引き下げる)ほか、ETF(上場投資信託)などの買い入れ、金融機関に対するマイナス金利も継続ですから金融緩和は続いています。(森)

【Q】じゃあ結局、日銀は何がしたかったの?

【A】黒田総裁は「債券市場の機能を改善するため」と言っています。具体的には、10年国債の金利が、償還期間が10年より短い国債の金利より明らかに低くなっているので、少し調節をしたということでしょう。

人にお金を貸すときに、「1年後に返済される場合」と「30年後に返済される場合」を考えたら、30年間の金利を高くしますよね。つまり、金利は満期が短いほど低く、満期が長いほど高くなります。

ところがこれが日本国債になると、日銀の管理のおかげで10年国債の金利が7年国債とほとんど変わらず、15年国債より極端に低くなっています。国債の金利を償還期間ごとに並べてグラフにしたものをイールドカーブと言い、通常は右肩上がりになるのですが、現状は10年国債の金利だけ不自然にへこんでいるのです。

以前から、海外の投資家がこの部分のゆがみを逆手に取ろうと、投機的な売買を仕掛けてきていました。ゆがみが治ればこのような動きも立ち消えると期待しているのだと思います。(森)

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イールドカーブとは、債券の金利と期間の関係を示した図。通常であれば償還期間が長いほど金利は上がる、つまり右肩上がりとなるはずだが、日本はいびつな形を描いている。黒田総裁はこれを問題視した

【Q】日銀がこのタイミングで10年国債金利の変動幅を広げたのはなぜ?

【A】この点は黒田総裁からも明確な説明がないので、はっきりしたことは言えません。一説には、変動幅拡大が金融市場へのサプライズになることは日銀も重々わかっているので、外国人投資家がクリスマス休暇で市場からいなくなるタイミングを狙ったといわれています。(森)

【Q】今回の緩和修正はさほど大きな変更に思えないけど、なぜメディアや金融関係者は大騒ぎしているの?

【A】金融緩和の縮小は、4月に就任する新総裁の下で始まる可能性が高いとみられていました。その推測を裏切り、10年もの間、大規模緩和を続けた黒田総裁が退任の4ヵ月前というタイミングで金利上昇を許容する政策変更を行なったというインパクトが大きかったのでしょう。(森)

■生活には好影響? それとも悪影響?

【Q】今後、われわれの生活に影響は出てくる?

真っ先に影響が出ているのが住宅ローンの金利です。昨年12月末には都市銀行・地方銀行が足並みをそろえて、10年国債の金利を参考に決められる固定金利型住宅ローンの金利を引き上げると発表しました。なお、変動金利型の金利は、短期金利を参考に決められるので、今回の変動幅拡大による影響はありません。(森)

【Q】1ドル=150円の円安から急激に円高に戻ったけど、今後の為替相場への影響は?

【A】緩和修正を受けて為替はドル円相場が激しく動き、一日で5円以上円高が進みました。この先は、円高がそのまま進んでいくと思います。

金融政策の方向性は物価の動向次第ですが、コアCPI(消費者物価指数から食品を除いた数値)の上昇率は低いので、まだ引き締めを急ぐ必要はありません。(坂本氏。以下、坂)

【Q】今のインフレは円安が大きく関わっているといわれているけど、円高が進めば物価高は落ち着く?

【A】輸入物価の高騰が多少ましになれば、インフレが落ち着く可能性は十分にあります。(森)

【Q】それなら、今回の緩和修正はわれわれの生活にとってそんなに悪いことではない?

【A】金融市場は大騒ぎになりましたが、直ちに生活に大きな影響が出るほどの大きな政策転換でないことは確かです。今後についても、4月の日銀新体制を見るまではなんとも言えません。

とはいえ、新体制の下で金融引き締めが進むことを危惧する専門家は少なくありません。そうなれば当然、日本経済に大きな影響が出ます。まだ先の話ではありますが、仮に金融引き締めとなり、さらに政府が財政支出も絞る方向に転換してしまえば、格差がより広がりかねません。(森)

【Q】国内の株価への影響はどう出た?

【A】緩和修正の発表直後は、貸出金利の上昇による利ざやの拡大を見込まれて、銀行株が軒並み上昇しました。(坂)

【Q】今後の投資戦略はどうすべき?

【A】まず調子よく値を上げている銀行株ですが、ここから先は金融緩和の本格的な修正に向かわない限り、さらなる上昇は厳しいでしょう。円高基調が続く可能性が高いといっても、昨年2月まで長く続いた1ドル=110円前後の水準から見ればまだまだ円安です。当面は製造業など、業績が良い輸出企業を選んでいくのが堅いと思います。

ここまでは個別株の話ですが、つみたてNISAやiDeCoを利用して長期積み立て投資をしている人には特に影響はありません。淡々と続けていきましょう。(坂)

取材・文/日野秀規

取材・文/日野秀規

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