メディア化で来訪者激増、企業ホームページの新潮流

メディア化で来訪者激増、企業ホームページの新潮流

  • JBpress
  • 更新日:2021/04/08
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未知の下方社長(左)と新入社員。新人は就職活動の時「つくりものの姿で就活をしていたが、未知に出会って自分らしさを真剣に出そうと方向転換した」という

世の中に魅力的な企業は数あれど、自社の魅力をきっちり発信して伝えられている企業は少ない。情報をネットに載せても、自社の商品やサービス名で検索してもらうためには、まず知名度が必要なのだ。そんな矛盾を解決するために起業した人物がいる。広告でなく記事を通して、企業の情報を届けるべき人に届けるコンテンツマーケティング企業「未知」の下方彩純社長だ。(企業取材集団IZUMO)

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ポータルサイトをつくろう

企業のホームページは、誰かが検索してくれない限り見てもらえない。世の中には特筆すべき技術やこだわりを持つ会社も多々あるが、その情報は知られることを受動的に待つだけだ。未知株式会社の下方彩純社長が話す。

「商品開発や研究に熱心で、こだわりが強い企業ほど、実はネタの宝庫なんです。“味や香りが抜群なのはこんな製法だから!”とか“この製品はこんな場面でも役に立ちます!”とか、情報としても面白い場合が多いと思います。でも、ズバリと企業名や商品名で検索してもらえる機会って少ないんですよね」

彼の会社はそんな“本当はすごいのにイマイチ伝わってない”と悩む企業にソリューションを提供し、業績が急上昇している。下方氏によれば「ホームページのビュー数が100倍以上に伸びるケースもある」という。

どんな方法なのか。

「鍵は“メディアをつくること”です。単なるオウンドメディアではなく、企業のPR色を出さず、中立で、記事の内容も信頼性がある、既存のマスメディアのようなサイトをつくります」

記事はカンでは書かない

扱う記事は、クライアント企業の商品、サービスに関わる分野だという。

「仮にお米の販売をしたい企業なら、お米のポータルサイトをつくります。炊き方から、品種ごとの味の違いや、お米の歴史、農業者のインタビューまで網羅するイメージです。

実際の例で言えば、サッポロビールさんのメディア『ワインオープナー』です。サッポロさんはワインも販売しているので、我々がお手伝いしつつ、ワインに関するメディアを運営されています。記事はワインの注ぎ方やワインの原産国別の味の違いなどで、読者に“広告なのかな?”と感じさせてしまう要素は入れず、ワイン全般の情報を発信しています」

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サッポロビールのメディア「ワインオープナー」。ターゲットは「ワインの奥深さを知りたいと考える“ワインの2年生”くらいの方たち」なのだとか

これがビュー数増加に結びつく。検索エンジンは検索結果を表示する際、企業のホームページよりもメディアを上位に表示する傾向がある。検索エンジンのアルゴリズムが「ホームページよりメディアのほうが公益性が高い」と認識するからだ。

例えばワイン、例えばお米など、特定の情報が集まるメディアはあまりない。読者にとっても有意義だし、これらメディアを先につくってしまえば業界を代表する企業になれる。

記事にも一工夫を加えるという。

「“こんな話題なら読んでもらえるかなぁ”といったカンでは書きません。仮に『ワインオープナー』なら、皆さんがワインについて検索する時、どんなワードと一緒に検索しているのかを徹底的に調べます。そして“ワイン+おつまみ”や“ワイン+産地”で検索される場合が多ければ、その検索結果に表示されるように記事を書きます。簡単に言えば、読者ニーズを調べ上げた上で記事を書いているんです。

もちろん、検索結果に表示されればいいわけではなく、読者のニーズにしっかり応えるようにします。検索した人が何を知りたいのか考え、しっかり役立つ情報を書きこむことが大切です。せっかく読んだのに知りたいことが書いていなくてガッカリすることってありませんか? そんなことにならないようタイトルや内容にこだわっています」

情報経路はプッシュからプルへ

こうしてメディア自体の購読者を増やし、その後、伝えたい情報も加えていく。

ここで注意すべきは、伝えたい内容も広告っぽく書かないことだ。記事の中には、企業にとってPRになり、かつ読者にとっても面白いものが存在する。実際、企業の広報担当者は、日夜「こんな商品を新発売します」といった書類(ニュースリリースと呼ばれる)をマスコミに送り、メディアもこの情報を元に記事を書くことがある。企業の情報の中には、面白いネタが存在するのだ。

「メディアの記事もその線を狙って、面白いネタや、役に立つネタとして書きます。例えばワインオープナーには『赤いスパークリングワイン・ランブルスコを楽しく飲むコツ』という記事があります。内容は“なぜランブルスコはワイン初心者にお勧めなのか”とか“ランブルスコはこう飲むとおいしいですよ”といったもので、ワインに興味がある方なら情報として面白くお読みいただけるはずです。そして最後に“お勧めはこちらですよ”と、サッポロビールさんが輸入したランブルスコを買えるサイトへのリンクが貼ってあるイメージです」

下方氏が、鍵となる言葉を挙げた。

「既存の広告は、企業の情報を“プッシュ(押し込む)”で伝えます。もちろん効果的な方法ですが、今は検索結果やブックマークも重要な情報の流通経路になっています。情報を受け取る側は『これが知りたい』と検索したり、メディアを見たりします。その方に情報を届けたい場合は、プッシュの逆の“プル(興味を引くこと)”が重要なんです」

ワインオープナーを例にとろう。ワイン好きであっても「ランブルスコは飲んだことがない」「知らない」という人は一定数いるはずだ。その層にランブルスコを試してもらいたくても、この方たちは決して「ランブルスコ」で検索することはない。

しかし、ワインの総合メディアをつくれば「ワイン+飲み方」で検索した人が『ランブルスコを楽しく飲むコツ』といった記事に行き着きやすくなる。またワインオープナーのニュースを楽しみにしている方にも伝わるはず。今まで断絶されていた“情報の流通経路”出来上がるのだ。しかも、情報を受け取るのは「ワイン」で検索をする方か、ワインオープナーのファン、すなわちその多くが見込み顧客だ。

下方氏によれば、運営料金は、月額数十万円から。もしかしたら今後は、例えば和菓子のメディア、ワイシャツのメディア、牛肉のメディアが誕生し、ファンが記事を楽しみにする時代が来るのかもしれない。

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ランブルスコの記事の例(スマホ版)

起業の理由は“突出した症状”

取材の後半は、下方社長の耳慣れない症状についての話になった。彼は「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」といって、人の感情に対する感受性が異常に高いらしいのだ。

「子どもの頃からです。友達と遊んでいても『あ、今、ちょっとイラッときてるな』とか『口では賛成してるけど、本当はこっちがいいんだな』とわかってしまうんです。特にサッカーのようなチームスポーツをしていると、仲間の感情が入ってきてしまって苦しかったですね。

今も変わりません。例えば社長同士の交流会に行くと、話す相手の表情や、言葉の強弱や抑揚から“この人は僕に興味ないなぁ”とか“今言ったこと、気に障ったかな”と察知してしまうんです。いっそ気付かなければラクなんですけどね・・・(笑)」

下方氏は悩みながら社会人になった。すると“メンタルが原因で周囲と息が合わない人って意外と多いんだな”と感じ始めた。

「旅行業の会社で国内向けのWEBマーケティングを担当していた時のことです。デスクの近くにまったく結果を出せない営業がいました。観察すると、僕とは逆に、他人の感情をまったく読み取れないんです。周囲の気持ちもわからないから人間関係もうまくいっていません。ただ、認められている部分もありました。嫌われても折れず、やると決めたらやり抜くんです。鈍感だったから、嫌われてもわからない、方向性が間違っていても気づけないのかもしれませんが、ひたすらやる力は凄かったですね」

下方氏がアドバイスをすると、彼は一転、会社を代表するトップセールスマンになっていった。

「イケてる営業トークをひたすら暗記してもらったんです。伝えるべきことを自分で考えているうちは結果が出せませんでした。でも録音したトークを丸暗記してもらって“こう言われたらこう返す”まで全部覚えると、彼はその後、ヘッドハンティングされるくらいの成績を残したんです。

この時、僕は“何かに苦しんでいる人間は、何か突出した能力を持っているんだ!”と気づきました」

理解し合える世の中をつくりたい

そして下方氏は未知を創業する時、不器用で人に理解されないけれど、何かずば抜けた能力を持った人を採用すると決めた。そんな人たちはどうすれば輝くか。ポイントは意見を傾聴して相手を理解することなのだという。

「うちにはアルゴリズムの分析など、理屈っぽい作業が非常に得意な女性スタッフがいます。彼女は例えば“Googleはどんなサイトを検索結果の上位に表示するか”などを分析させたらピカイチです。でも彼女は会話中、30分くらい黙って考えこむことがあります。聞けば“まだ自分の考えがまとまってないんだから、その時点で発言したら無責任ですよね”と言います。とことん理屈っぽいですよね(笑)」

しかし、その理屈っぽさが役に立つ場面では、彼女が無類の強さを発揮するのだ。

人も企業も、何かのポテンシャルを持っている。企業が存在するのは社会の役に立ってきたからで、人がそこに存在するのも先祖が何らかの能力を発揮して生き抜いてきたから。その能力を互いが知らないのは惜しいことだ。そして下方社長は、彼が生まれ持っていた苦しみの影響もあって、人や企業のポテンシャルを理解し、世に出すことが得意なのかもしれない。

「言われてみればそうかもしれません。今思い出したんですが、私が中学生の時につくった標語があって、それは“全ての人を愛することが自分の力になる”というメッセージ性を持ったストーリーでした。

きっと、理解し合える世の中をつくりたいんでしょうね。僕は自分らしい会社をつくったのかもしれません」

企業取材集団IZUMO

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