ヴィトンやエルメス、仏ハイブランド業界のコロナ禍生存戦略、日本でも限定品が買えるようになる?

ヴィトンやエルメス、仏ハイブランド業界のコロナ禍生存戦略、日本でも限定品が買えるようになる?

  • MONEY PLUS | くらしの経済メディア
  • 更新日:2020/10/18

新型コロナウイルスの影響で観光客がいなくなり、フランスのラグジュアリー業界は大きな打撃を受けています。

ルイ・ヴィトンなど高級ファッションブランドを傘下に収める世界最大のラグジュアリーグループLVMHは、2020年上半期の業績をグループ全体で84%減と公表しました。10月4日に永眠した日本人デザイナー高田賢三氏のブランドKENZOも同グループの傘下に入っています。

世界的規模で人々が外出を控え、イベントやセレモニーなどの機会が見送られている今、外出の場面にこそ必要だった高級ファッションブランドはもはや不要なのでしょうか。

2023年に新工場を操業させるエルメス

コロナ禍、以降パリ市内の高級ブティック街は閑散とし、高級ファッション業界の苦戦ぶりは明らかです。ところが、このまま衰退していくのかというと、そう言い切ることはできないようです。

仏フィガロ紙は9月16日の記事で、LVMH傘下の皮革ブランド「エルメス」が2023年をめどに、新たな製造工場をフランス中部オーヴェルニュ地方に建設すると報道しました。

エルメスによると、総勢500名の雇用を見込んだこの計画は、オーヴェルニュ地方におけるこの年最大の起業計画になります。重工業ではなく、皮革ブランドがこれだけの大事業を計画中ということは、同社がラグジュアリー業界の将来を確信しているからこそでしょう。

事実、LVMHのベルナール・アルノーCEOは、2020年7月に自社サイトに公開した文書で、今後より一層のオンラインショップの強化を宣言しました。同氏によると、これは2020年4〜6月の売り上げに現れた、中国市場の大きな回復を受けての決断です。日本でも楽天がKENZOほかハイブランドに特化したサイトを10月6日に開設しています。

オンライン販売に舵を切る

さらに、前出のフィガロ紙は4月16日の記事で、同社のファイナンスディレクター、ジャン=ジャック・ギオニー氏をインタビューし、「2ヵ月間のロックダウンが開けた中国の人々には、早くも購買活動への意欲が見られる」との意見を報道しています。オンラインショップを活用すれば、いつでも世界中の顧客に向けて販売が可能になります。

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「2020年第一四半期LVMHは良く耐え抜いた」との表題で自社サイトに公表され発表された報告書。グループ全体の実績は84%減。

つまり、フランスで生産した高級ブランド品を、オンラインで諸外国へ売るという戦略です。

実店舗の苦戦にどう耐えるか

実店舗はどうなるのでしょうか。冒頭でも述べた通り、現在パリの高級ブティックはどこも閑散としています。これら実店舗の維持を、経営者はどう捉えているのでしょうか。仏マダムフィガロ誌副編集長のクロディーヌ・エス氏に、話をうかがいました。

同氏は「高級ブランド店の顧客のほとんどが外国人であることを考えれば、この厳しい状況はコロナウイルスの問題が克服されるまで続くと考えるのが妥当だ」と答えます。そして、「かたやドバイや中国主要都市の実店舗は、現在も好調に売り上げを上げている。経営陣は、これら諸外国での売り上げとオンラインで利益を確保しつつ、苦戦中の実店舗を守りたい考えでは」と推測します。

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パリ市内のシャネル路面店

ラグジュアリーホテル同様に、将来的には再び外国人が戻ってくることを予想しつつ、今は苦しくとも耐え抜こうとする様子がうかがえます。

高級百貨店ラファイエットの試み

これとは対照的に、実店舗の活性化に積極的なラグジュアリーを扱う企業もあります。ヨーロッパ最大のデパート「ギャラリー・ラファイエット」パリ・オスマン店です。同店は、なんとかして地元パリ、そしてヨーロッパの消費者を引きつけようと試行錯誤をしています。

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ギャラリー・ラファイエット・パリ・オスマン店

現在、継続可能な社会に貢献するブランドや商品、ユニセックスデザインなどを独自にセレクトした「Go For Good」のラインナップの宣伝に、これまで以上に積極的です。

「Go For Good」は同社が2015年に開始した取り組みで、昨今のパリ市民が持つ、高い環境意識への嗜好を反映したものです。また、ギャラリー・ラファイエットで開催される催しも、以前はマカロン教室など外国人観光客をターゲットにした内容でしたが、コロナ禍以降はDIY教室やヨガレッスンといった、地元パリの消費者に訴えかけるものが新設されています。デパートという売り場がある以上、実店舗の活性化は必至でしょう。

「こういった一連の戦略が効果を上げ、売り場は活性化している」と、同社パリ・オスマン店の営業開発責任者は説明してくれました。しかし、こうして集まった地元顧客が、高級品を買うことはまずないのだそうです。

このままハイブランドは廃れるのか

では、同デパートが扱う高級ブランドはどうなるのでしょうか。営業開発責任者は「特に新作や限定品に力を入れ、オンラインで対応して行く。定番商品は世界中の実店舗で購入できるが、新作や限定品はフランスでなければ入手できないことが多い。これらフランスでのみ購入できる商品を前にだし、オンラインで販売することで、高級ブランドの売り上げを伸ばして行く考えだ」と話します。

外国人顧客に支えられたフランスのラグジュアリー業界は、コロナ禍に弱いのか? 各社の事象を見ていくと、この答えは一言で言い表せないようです。

ただ言えるのは、この逆境の中で、高級ブランド店もニューノーマルを探りつつ、新しいビジネスの形を模索しているということ。そして「高級品のオンライン販売」という流れに、とてもパラドックスを感じます。これまでは、安い価格のものを探すためにネットショップを使うことが主流でした。一方で高級ブランドは、お客さまにはソファに座って頂いて、シャンパンをお出しして、まずはサロン風にくつろいで頂いて、という風に、接客のノウハウや「場」の演出を磨くことに努力してきました。こういった全てを含めて高級ブランドの値段でした。

これらがなくなり、例えば入手困難な高級品こそオンラインになるとしたら、接客の技術ではなく、お届けのパッケージやウェブサイトを作るデザイナーや、それ以前の戦略を考える人間に、より重点が置かれていくかもしれません。オンラインとオフラインを融合させたサービスの新形態が登場する予感があります。

〈文:Keiko Sumino-Leblanc / 加藤亨延〉

(Keiko Sumino-Leblanc)

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