外出自粛は、恋愛や不倫で悩んでいる人には荒療治になるかもしれない

外出自粛は、恋愛や不倫で悩んでいる人には荒療治になるかもしれない

  • ウートピ
  • 更新日:2023/01/25
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新型コロナウイルスの感染拡大により、自宅に引きこもらざるを得ない状況が続いていた2020年の春。小説家の森美樹さんは、一刻も早く終息してほしいと心底願う一方で、「結婚や恋愛、不倫で悩んでいる人には、荒療治になるかもしれないし、一縷の望みを見出すきっかけになるかもしれない」と考えます。

*本記事は『cakes』の連載「アラフィフ作家の迷走性(生)活」にて2020年4月4日に公開されたものに一部小見出しなどを改稿し掲載しています。

コロナウイルス問題で、地球全体が引きこもり傾向にある。

学校が休校になったり、テレワークやリモートワークがメインになったり、生活形態の変化についていけず、コロナ云々でなくとも体調を崩す人がいるのではないか。私に至ってはもともとが自宅勤務なので、仕事に関してさほど支障はない。対面式の打ち合わせがメールや電話に切り替わったくらいだ。と言いつつも、一所に落ち着いていられない性格の私だ、ファミレスやカフェで執筆することも多々あり、急に「出かけるな」と命令されると逆らいたくなる。

が、他人様に迷惑かけるのも憚られるので最小限の用事以外は引きこもっていた。幸い仕事は忙しく、自宅にいても頭はフル稼働という日々が続いているのだが、テレビやラジオをBGMにしつつ思ったことがある。

親が苦手な子供にとっては、逃げ場がなくなってしまう

学校が休校になれば必然的に家族で過ごす時間が増え、親子間の問題が浮き彫りになるだろう。実は私、学生の頃って両親が苦手でほとんど口をきかなかった。家にいるのが嫌だったし、両親と過ごすのが苦痛だった(今は良好な関係を築いています)。私のように親が苦手な子供にとって、逃げ場がなくなってしまうのだ。

私は田舎育ちゆえ、かなり広い一軒家で暮らしていたから、自室にいれば親をシャットアウトできた。昨今の住宅事情を考慮すると、ひとり部屋を持たない子供はめずらしくない。親にしたって、働かなきゃならないのに仕事ができず、子供のご飯もつくらなきゃならず、さらに子供が反抗期だったりすればストレスフル間違いなし。

親子間も大変だが、夫婦間はさらに大変かもしれない。お互い仕事ができない、あるいは自宅勤務になってしまって、落ち着かない。人間なんて、たまに会うから体裁を取り繕っていられるのに、四六時中近くにいられたら息がつまる。

コロナ鬱はもとより、コロナ離婚とかコロナ別居とか発生しているかもな、ウイルスより問題かもしれないよ、と不謹慎ながら思ってしまった。まあ、四六時中近くにいることで、悟りというかあきらめの境地になり、仲良くなる例もあるとは思う。それはそれで絆が深まるというか絆の修復というか、意外なコロナの副産物で良いのだが。

引きこもりになってしまった恋人同士や不倫カップルは……

だったら恋人同士や不倫カップルの絆はどうなのだろう。先程私は「人間なんて、たまに会うから体裁を取り繕っていられるのに」と書いた。これの最たるものが恋人同士というか、不倫カップルだろう。

結婚している男女は法律に守られているというか、たとえ距離や気持ちが離れたとしても法律という縛りがあるから、完全には離れない。親子も然りである。同棲している男女(男男や女女も)の場合は、法律は無関係でも居住地は同じだしご飯も同じだ。表面上の関係が冷めていたとしても、物理的な距離は縮まっているので絆が再燃する可能性がある。

で、問題は引きこもりになってしまった恋人同士や不倫カップルだ。連絡を取る手段はいくらでもあるけれど、いかんせん会えない。つまりセックスできない。動画でオナニーを見せ合ったり等、刺激的なプレイもできるけれど、会えない。つまりセックスできない。

「私達、いつになったら会えるのかな」

「大丈夫、来週になったら会えるよ」

「でも私、マスクがないわ」

「キスしたらうつるのだろうか」

「私、あなたとなら感染してもいい」

みたいなロマンチック(?)な会話がLINEなどでなされているのだろうか。障害によって盛り上がる恋愛もあるので、それはそれでいい。しかし、

「私達、いつになったら会えるのかな」

「現状を考えてみろよ。俺がもし感染していたら、おまえも感染して、旦那にバレるぞ」

「でも」

「当分は会わないほうがいい。おまえのためを思って言ってるんだ」

みたいな遠回しの別れのやりとりをLINEでしていたり。そう、どちらかが潮時だと思っていたなら、コロナのせいにして別れるのもアリなのだ。お互い、傷つかないで別れられるからね。

叩かれるのを承知で言えば

いずれにしても、この見えないウイルスというものは、人間を試しているようにも示唆される。私も家族や友人知人と話したのだが、「感染する、しないよりも、感染して社会的に抹殺されるのがこわい」と。勿論、感染しないことにこしたことはないし、私もできうる限りの防御策はしている。とはいえ、肉眼で見えないのがウイルスのこわいところ。やはり限界がある。そして肉眼で見えないのは、人との絆も然りだ。

叩かれるのを承知で言えば、ウイルスに太刀打ちできた不倫は素敵だなと思うし、それこそ「てっきりセフレだとあきらめていたのに、あの人は私に本気だった」という相手の本心や自分の本心も見えてくるだろう。「セフレでいいと立場をわきまえていたけれど、やっぱり心ごとあの人が好き」みたいなね。

たとえ会えなくても、セックスできなくても、言葉を交わせるだけでいい。生きているって確認するだけで幸せ。こんな初歩的なことを思い出させてくれてありがとう、引きこもりよ。といった具合。

何を甘いこと言ってんだよ、感染したら不倫とか恋とか愛とかどうでもよくなるんだよ、とお怒りになる方々もいるかもしれない。それでもあえて言います。

強制的な引きこもりで、人との絆を再確認できる、と。

この感覚こそが、胸キュンなのだよ

実際(私の周囲にはいないけれど)、コロナ騒ぎで人との別離を経験した人はいるかもしれない。不倫とか恋とか愛とかが絡んでいなくても、友人や仕事関係者や、あらゆる絆の見直しを行った人はいるだろう。どんな人であろうと、縁が切れるのは悲しい。憎んでいた人だとしても、ほのかなさみしさは残る。今回のコロナ騒ぎが予想外にイレギュラーだったとしても、人間関係の淘汰というのは定期的におとずれるものだ。

ここ数年、人間関係というか主に男女関係が希薄になっていると言われてきた。恋や愛をすっ飛ばしてセックスだけの付き合いになだれこむとか、そういうことである。身体だけの付き合いは確かにラクだし、気持ちが入っていない分、めんどうくさくもないのだろう。でも、代々木忠著作「つながる」のように(「AV監督の言葉に衝撃を受けて参加した読書会のこと」参照)目から入って心までつながるセックスのほうが、断然気持ちいいと思うし、絆=それこそ芯からつながっている感も味わえると思う。

単なるセフレ、欲望だけを解消する不倫だと思っていたのに、離れているとこんなにさみしい。これってもしかしたら愛なのか?

そんな風に、引きこもっている間に動揺してほしい。この感覚こそが、胸キュンなのだよ。

コロナウイルスに関しては早くワクチンができてほしいと切望するし、終息してほしいと心底願う。でも今、この現実から学べることも多くある。そのひとつとして、私は人と人との絆をあげた。結婚や恋愛、不倫で悩んでいる人には、荒療治になるかもしれないし、一縷の望みを見出すきっかけになるかもしれないのだ。

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