バービーと産婦人科医が語った、大人にこそ必要な「性教育」の話

バービーと産婦人科医が語った、大人にこそ必要な「性教育」の話

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/21
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FRaUwebでの連載「本音の置き場所」の内容を加筆修正し、思い出の料理レシピや本気のお悩み相談などオリジナルコンテンツも収録した、初めてのエッセイ集『本音の置き場所』を11月4日に発売したフォーリンラブのバービーさん。

そんなバービーさんがパーソナリティを務めるTBSラジオ「週末ノオト」(毎週土曜13時放送)の11月14日の放送では、“えんみちゃん”の愛称でも知られる産婦人科医の遠見才希子さんが登場し、避妊やアフターピルなど「性」について対談。

エッセイ集の第六章で性的同意について綴っていたり、緊急避妊薬に関する疑問をTwitterで発信してきたバービーさんと、放送当日に配信した記事(「避妊をしてくれず20歳で妊娠…産婦人科医が危惧する「安易な緊急避妊」という言葉」)にて、意図せぬ妊娠による不幸な事件を防ぐために必要なことについて話を伺った遠見さん。

このお二人の対談には、日本では入手するハードルが高い緊急避妊薬の正しい知識をはじめ、私たち大人世代も真剣に考えなければならない「性」について学ぶべき点がたくさんありました。

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緊急避妊薬にたどり着けない 女性がたくさんいる日本の現状

バービー:「週末ノオト」この時間のゲストは、“えんみちゃん”の愛称で中学・高校で性教育の講演を行なっている産婦人科医の遠見才希子さんです。こんにちは、ご無沙汰しております。

遠見:お久しぶりです。よろしくお願いします。

バービー:(今年)9月にNHKの(番組の)対談でご一緒させていただきましたけれども、色々と緊急避妊薬についても話しましたね。

遠見:そうですね、実は日本では緊急避妊薬が海外と比べて、とても手に入りにくい状況があります。緊急避妊薬っていうのは、避妊が不十分だった性交渉とか、レイプに遭ったりだとか、そういった万が一のバックアップとして女性の健康を守るためにとっても大切な薬です。72時間以内に飲むことで、高い確率で妊娠を避けることができ、世界の90カ国くらいで薬局で安く販売されているんですけど、日本だと(産婦人科・婦人科)の受診が必要で、大体1万円〜2万円くらいと高額なため、たどり着けない女性がたくさんいるという現状があります。

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産婦人科医の遠見才希子さん。

バービー:そうなんですよね。ちょっと遅れをとっていると言っていいのか、なかなか問題にも上がってこなかったみたいなのも現状としてありますよね。

遠見:そうですね。バービーさんがTwitterで大きく発信してくださった影響で、署名もガンガン集まって今10万人を超えています。

バービー:そうなんですよ。私も今回動きがある前に「緊急避妊薬、別名アフターピルはどうしてこんなに話が進まないんだろう」ってTwitterで呟いて、それを色々(な方が)また拡散してくださったりというのがあったんですけれども。まだまだ(緊急避妊薬について)分からない方もたくさんいらっしゃるのでメールを1通読みたいと思います。

けんたろうすさん、50歳男性。遠見先生が来られるということでお聞きしたいのは、緊急避妊薬についてです。24歳の娘を守る意味も含めて、母親から今度ちゃんとレクチャーさせて持たせようと思うのですが、副作用とか体に影響はないのでしょうか。そこが若干心配です。

遠見:はい。従来使われていたものと比べて、現在のアフターピルはとても安全性が高くて副作用も重大なものはほぼなくて、安全に使える薬です。海外では、WHOも多く渡すことを推奨していて、何かあったときにすぐ飲める「事前供給」という体制をとっているんですけど、残念ながら日本では、悪用・乱用みたいな視点がすごく強くて、受診した人だけに一錠、目の前で飲ませるみたいな医療機関すらあるくらい(高い)ハードルを設けられてしまっているんですよね。

海外では当たり前にある 健康を守るための選択肢がない

バービー:なるほど。このなんていうのかな、薬局で簡単に手に入らないっていう現状の中には、そういった慎重論がまだまだあって。

遠見:そうですね。女性が知識がなくて誤って使ってしまうんじゃないか、悪用されてしまうんじゃないか、繰り返し使ったらいけないんじゃないか、そういったリテラシーや知識の不足みたいな当事者の問題にされてしまうんですけど、社会のシステムとしてこのバックアップに確実にたどり着けるシステムを作るのは、児童虐待死を防ぐことだったり、意図しない妊娠って女性にとっては人生を大きく変える出来事になってしまうので(それも防げる)。いろいろな手段にちゃんとアクセスできる、健康を守る権利があるっていう視点で、日本の議論も進むといいなと思っています。

バービー:たしかに。自分で選択できないというか、選択肢が少ないっていう現状が問題であるってことですよね。

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遠見:まさに! 海外では当たり前にある女性が健康を守るための選択肢っていうのが、緊急避妊薬も日頃の避妊法もそうなんですけど、日本では(その)当たり前の選択肢がないっていう状況はありますね。

その理由に性教育が先じゃないかとか、もっと女性が低用量ピルを使って日頃から避妊をすればいいんじゃないかとか、そう言った議論にもなっているんですけど、どっちが先とかどっちの方が大切じゃなくて、どちらも大切だし、どちらも推進していくものだと思うんですよね。

たとえ、アフターピルを繰り返し使うようなことがあったとしても、健康上のリスクはないというのは世界中でわかっていることで、繰り返し使っても安全性はすごく高いんです。なので、安心できる情報も提供が必要だと思います。

バービー:慎重論の中にはそれが一番大きいんじゃないかなと思うんですよね。悪用するっていう発想自体が、重大な副作用があるから一回きりしか使っちゃダメだよっていう、なんかこう重きをね……。

遠見:あとは「しっかり避妊しなさい」みたいな指導的要素も強いのかなと思うんです。女性が効果の高い避妊をしたいと思っても(海外だと)低用量ピルがすごく安く、なかには若者は無料の国もたくさんあるので、そういったハードルはないのに、日本だとどうしても日頃の避妊で使用する低用量ピルとか子宮内避妊具もアクセスしづらかったり。

あとは、避妊インプラントやパッチとか注射とか、日本人は聞いたことがないような選択肢が(海外には)あるんですけど、そういったものを日本で認められてなかったり、さまざま課題があるんですけど…今回のコロナで世界中から緊急避妊薬へのアクセスをもっとしっかりするようにというのは声明も勧告も色々出ているんです。

世界のスタンダードを日本にも。 今こそ市民の声で変えていくべき

バービー:このコロナ禍で望まない妊娠(に関する相談)が増えているという、最近立て続けにニュースがありましたけど……遺棄してしまう事件のニュースがありましたけど…あれもどうしても逮捕されてしまうのは女性側で…どんな気持ちでその妊娠期間を過ごしたのかなと思うと、アフターピルがアクセスよければ現状が変わったのかななんて、ちょっとよぎってしまいますね。

遠見:私も産婦人科医でいろんなお産を見てきたけど、なかには妊娠・出産を誰にも言えなくて孤独ななか(出産)される女性もいるっていう現実が今の日本にもあるので…意図しない妊娠っていうのは、そういったケースにも繋がるっていうのは分かっていることだから、誰でも手に入れられるようにハードルを下げまくって、世界スタンダードの選択肢を日本にもっていうのを今こそ声をあげて、市民の声で変えていくべきなんじゃないかなと思います。

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バービー:政権が変わったタイミングで、ちょっと動きがありましたよね。

遠見:そうなんです。実は今月、内閣府の男女共同参画の計画案の中に「緊急避妊薬の薬局販売を検討する」と明文化されて、これはかなり大きな一歩だと思っています。

バービー:署名活動を5年くらいやられてましたよね。

遠見:署名はね、2年なんです。

バービー:でも色々、活動は長かったですよね?

遠見:私は性教育活動を15年くらい続けているんですけど、いろんな方々が声を上げてくださったものが繋がったかなと思っているんです。先日、橋本聖子(内閣府特命担当)大臣に要望書と署名を提出させていただいたときには「市民の声の力が大きい」ということと「誰一人取り残さない政策を進めていきます」という力強い発言もいただきました。

バービー:ここ流されそうだけど、かなり重要な発言だったってことですよね?

遠見:そうですね!

バービー:誰一人取り残さない⁉︎(遠見:はい)政策を! はぁぁ〜、今までは持っては行っても、ちゃんとした前向きな検討するようなフレーズは一個もなかったんですよね⁉︎

遠見:そうなんですよ。今までは、性教育は土台が必要だとか、環境整備をしなきゃいけないからというところまでだったんですけど、今回は「誰一人取り残さない」という言葉もいただけました。もし薬局販売に繋がるんだったら、変な条件を付けられないように、誰もが手に入れられるような、当事者目線の運用を実現をしてもらいたくて、そのためにも署名も続けていきますし、皆さんのひとりひとりの声も届けていただけたらなと思います。

バービー:これが11月10日のお話だったわけですよね、橋本聖子大臣のこのフレーズがあったっていうのが。

遠見:そうですね。

あまり変わっていない「日本の性教育」

バービー:話がちょっと変わりますけれども、日本の性教育っていうのは、実際今はどうなのかなっていう。

遠見:私自身が10代のときに、けっこう流されて焦らされて寂しさに向き合えずみたいな経験もあったりして、そういった後悔からもっと気軽に楽しく、真面目に性を考える場所が必要だったと気づいて、大学時代から性教育をやっています。15年経つんですけど、残念ながら日本の国としての性教育の取り組みは、(以前より)少しは進んでいるんですけど、あまり変わっていなくて、未だに中学生に学校での性教育のなかでセックスとか避妊というのを教えてはならないと解釈するみたいな学習指導要領があるんですね。妊娠の経過を取り扱わないものとするというような文言が。

バービー:あれ、大人から見るとすごい滑稽ですよね。大事なところだけスコーンと抜け落ちてて。

遠見:いや、まさにそうで!

バービー:「えっ、ここ言わないの⁉︎」っていう風になってる。

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遠見:そこ言わずとしてどうやって教えるのかっていうところなんですけど、二次性徴とかコンドームとか性感染症だけじゃなくて、ベースに「人権」っていう視点が足りないっていうのが大きな特徴かなと最近気づかされています。

バービー:そうですね。なんか家長制度というか家制度の名残みたいなものなのか分からないですけど、女性がそういった、主に性に関して選択するなんてちょっとあり得ないみたいな考えの名残がずっと続いていると、どうしても人権一人一人が尊重されるってこととは違ってくるのかなって思うので、人権っていう視点がなかなか芽生えてこないっていうのが問題点。

遠見:「性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ=SRHR)」というのが海外では共通認識であって。自分も相手も尊重しながら安全で満足できるセックスをするというすごくポジティブなメッセージもあるし、子どもを産むか産まないかその選択はその人自身にできる自由があるというメッセージもある。だから、妊娠主体の女性が産む選択も産まない選択もできて、どちらも適切な情報やサポートを受けて、サービスを受ける権利があるというものなんですね。日本だと産まない選択に関しての情報やサポートっていうのは足りてないなという実感はあります。

アニメも活用する⁉︎「欧米の性教育」

バービー:なるほど。引き続き、世界の性教育についてもお伺いしたいですけれども欧米の性教育っていうのは今どういう風になっていますか。

遠見:5歳くらいから包括的な性教育を行いましょうという指針がありまして、まずは「プライベートパーツ」という考え方がすごく大事です。

バービー:プライベートパーツ⁉︎ センシティブゾーンみたいなことですか?

遠見:「水着に隠れる部分」と「口」っていうのは、あなたの体の中でもとっても大切な、あなただけの場所だよ、という。イギリスには「パンツザウルス」という(性犯罪予防)アニメがあって、パンツを履いた可愛い怪獣のキャラクターが、パンツの中を誰かに「見せて」「触らせて」って言われても、大事な場所だから「NO!」と言って逃げるという。「あなたのことを大切に思ってくれている大人が必ずいるからね」みたいなメッセージのあるアニメがあるんです。

私もいま子どもが2歳なんですけど、お風呂で「おっぱいもお股もお尻も大事な場所で、あなただけのものだよ」と言いながら体を洗っていたんですね。そしたらある日娘が「大事大事は触っちゃダメ、ママ洗っちゃダメ、自分で洗う」って言い出したんですよ。ちょっとビックリして、でも伝わってるーと思って。「ママのおっぱいも大事大事なの?」って聞かれたので、「ママのおっぱいも大事大事なんだよ、だから自分以外の人のも大事大事だから、ジロジロ見たり、触っちゃったりしないんだよ」と返しました。そういうことを伝えることで性暴力の被害・加害を防ぐことにも繋がるのかなと思ってます。

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バービー:日本だと、親なんだから触って当たり前とか、親なんだから大人なんだからっていうイメージを子どももどうしても持ってしまいますもんね。

遠見:そう、やっぱり大人の意識を変えるっていうのはすごく大事だと思いますね。

バービー:まずは、大人が変わっていくべきというみたいなとこかな。どういう風に性教育に携わっていくといいんですかね?

遠見:失敗させない教育も大事だとは思うんですけど、もし失敗したとき、つまずきがあったとき、傷つきがあったときに、大丈夫だよっていう、こういう選択肢もあるし、力になるよっていう、社会とか医療とか家庭の受け皿っていうのはすごく大事だと思うんですよね。それから、家庭の役割、親の役割っていうのは、コンドームの正しい使い方を教えたりというよりは、子どもが困ったときに打ち明けてもらえる存在でいる、オープンなコミュニケーションを日頃から取っておくことだと思うんです。

バービー:そうありたいよー、私子どもいないけど。そうありたい!

子どもへの性教育で 大人たちに必要なこと

遠見:中高校生の話を聞くと、親にだけは言えないって子がたくさんいるんですね。レイプされたことも親に言えないとか、中絶を考えたときに親に言ったら「さっさと処分しなさい」とすごくキツい言葉をもらって親に言えなくなったとか。だから私たち大人も(前述のような)性教育を受けて育ってきていないし、どう接していいかわからないっていうのはあるんですけど。

バービー:それだから求められても逃げてしまう大人たちがね…。

遠見:まずは、子どもの話を聴くこと、オープンなコミュニケーションを取ること、あとは受け皿として機能できるように情報をアップデートしておくことはすごく大事かなと思います。

バービー:「私たち同年代で中間管理職的な厳しい世代よね」みたいな話をCM中にしましたけど、上の世代から継いだ負のレガシーみたいなものを新しい価値観にアップデートして下の世代に伝えなければいけないですよね。

遠見:そうなんですよ。なかなか性の分野は変わらないよねっていう姿を下の世代に見せることは、私たちと同じように絶望させる立場になってしまうので。一歩ずつ進んでいることもあるので、この緊急避妊薬もそうですけど、色々な性のことをどんどん発信、あっ、バービーさんも発信されていますもんね。

バービー:あぁぁ、私はちょろっとだけですけれども……はい、ちょっとだけ。口に出して言っていくってことも大事ですかね。

遠見:そうですね。社会のなかでいろんなアプローチがあっていいと思うんです。学校だけじゃなくて、家庭でも、メディアでも、いろんな考える機会があればあるほど、やっぱりいいと思うので。

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「健康を守る権利」を もっとポジティブに!

バービー:なんかこう、日本では昔から「秘め事」って言葉があるみたいに、性に関することは本当に喋ったらはしたないというのが根強いですけど、そうじゃなくて本当にライツとして、権利として……。

遠見:健康を守る権利という視点がもっとポジティブに浸透していくといいなと思います。

バービー:うんうん、たしかに。そういうのが今すぐは難しいっていう世代の方もいらっしゃると思うんですよ。そういう方でも押し付けることからやめていけば少しづつ変わっていっていいんですかね。

遠見:一緒に考えるというスタンスでいいと思います。私の友人で、性被害に遭ってずっと親に言えなかった子が、もし被害に遭って家に帰ったときに「おかえり、今日どんな日だった?」って親が聞いてくれていたら、そのとき言えたかもしれない、こんなに長く苦しまなくて済んだかもしれないという話をしてくれたときに、やっぱり日頃からのコミュニケーションがすごく大事だなと思ったので。

バービー:うんうんうん、そうですね。いやぁ性教育ってひと括りに言ったってね、なんだかよく分かんないよってのが……。

遠見:そう、正しい性教育って定義できるものがないので、人それぞれだし……。

バービー:そうですね! いろんなクセもあるし。

遠見:だからこそ、価値観を押し付けたり、上から目線で押し付けるような教育じゃなくて、大人も子どもも老若男女問わず一緒に考えていく、そして前向きに進めていくっていうのがいいかなと思います。

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バービー:そうですね。隠すことをやめて、まず話したり、声に出すことから始めていけたらなって思います。なにか告知などはありますか?

バービー:今は署名キャンペーンといってもデジタルなんですよね?

遠見:そうですね、はい(笑)。

バービー:もう昔からか? ハハハハハ……(笑)。私も参加させてもらいましたけれども、すぐリーチできるところにあるみたいなので、ぜひ検索してみてください。

アフターピル(緊急避妊薬)を必要とするすべての女性に届けたい!「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」署名キャンペーンはこちらから▶︎

遠見さんがお話していたように、アフターピルを薬局で購入できるように制度を変更する方針を政府が検討していますが、市販化に反対する人や懸念点が出てくる現状も。しかし、自分の身の回りで、意図しない妊娠による悲しい事件が起きたらどうでしょうか。避妊の失敗や性被害は、あなたの友人、パートナー、きょうだい、子ども……誰もがが当事者になり得ること。

特に今年は、新型コロナによる休校措置の影響で、若者の性交渉が増え、中高生の妊娠相談や望まない妊娠が増加しているといわれています。現在はまだ医師の診察が必要でアクセスが悪い緊急避妊薬ですが、小さな力でもたくさん集まれば大きな力となり、国を動かすことができるはず。ぜひキャンペーンにご協力お願いします。

\バービーさん初のエッセイ集/

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FRaUwebの連載が一冊の本『本音の置き場所』にまとまりました! 加筆修正の上、バービーを生み出した料理に関するコラム、バービーが実際に作ってみたレシピ、読者からのお悩み相談も書き下ろして加えています。

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