世界のロボットコンテストで入賞した高専生はなぜスタートアップを選ぶのか

世界のロボットコンテストで入賞した高専生はなぜスタートアップを選ぶのか

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/10/17
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サントリーグループ、JR東海、旭化成……国立高等専門学校の生徒の2019年就職先ランキングには人気企業の名前が並ぶ。

国立工業高等専門学校、通称「高専」は5年間の一貫教育を行う高等教育機関だ。専門性が高い即戦力の人材を輩出する教育機関として企業から注目を集めている。しかし大企業に入った高専生のその後の活躍はニュースなどでは聞かない。一部は企業の中で活躍している人もいるが多くが組織の中の1人として組織人になってしまう例が多い。

筆者はこの高専の人材が大企業に就職する前にスタートアップに入り世界の社会課題を解決する商品やサービスをつくる機会が増えればもっと世界は豊かになるだろうと思い続けてきた。

高辻克海は、高専を卒業し農業ロボットのスタートアップに加入した「珍しい」人物だ。世界のロボットコンテストでも入賞するほどの実力をもつ彼がなぜ大企業に就職せずにスタートアップを選んだのか。高辻に話を聞いた。

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スタートアップを経験してからでも大企業は遅くない

高辻は福岡県福岡市生まれ。中学生の頃に機械いじりが好きな親に買ってもらったmacでプログラミングにのめり込んでいき、北九州工業高等専門学校に入った。

入学後にロボットコンテストの存在を知り、「ロボットは人間ができない事を可能にすることができる。知識も広がるしこれは面白そうだ」と考えた。2018年には中国で開催されたロボットコンテストに高専の仲間らと挑戦しベスト8に入った。

私が地域プロデュースをしている宮崎県新富町では農業課題の解決の取り組んでおり、後継者不足の課題を解決するロボットの必要性について北九州工業高等専門学校で講演する機会があった。

この講演をきっかけに高専の卒業生らとの研究がはじまり、声かけられた高辻はロボットで実際に農業課題を解決するのは面白そうだと思いチームの1人として加入。当時専攻科1年(専攻科は5年間の高専教育を修了後にさらに高度な技術教育を習得する科)だった彼は試行錯誤の末、2020年4月から高専を休学して農業スタートアップに入る決意した。その理由として高辻は以下のように述べた。

「専攻科を休学することに迷いはありませんでした。それらの懸念よりも農業スタートアップで働く楽しさが勝りました。ロボットコンテストの経験を活かし、農家と意見交換をしながら農業課題を解決する。ロボットエンジニアとしては最高の場所だと思いました」

大企業でも社内ベンチャーやスタートアップに投資する機関も創設され、新事業への理解度も高まっている。スタートアップでの経験は、今後大企業内でもより高く評価されるだろう。

日本型雇用の「3種の神器」、安定した暮らしをキーワードとする大企業での社会的成功という夢は、時代の流れとともに自己実現への夢へと変わりつつあると筆者は考える。

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大企業は本当に安心なのか?

大企業の高専生への採用活動は積極的だ。親としても将来が不安定なスタートアップより大企業に入ってもらえれば安心するだろう。そこで大きな組織の1人として活動し、家庭を持ち、家を持ち、社内ベンチャーで自分の事業を実現することもとても有意義だ。

一方で、大きな組織の中では自分の力でどこまで世界をより良くできるのかというチャレンジはしにくい。ヒト・モノ・カネが大企業に比べて圧倒的に欠けているスタートアップで卒業したての高専生が過ごす時間は生涯の投資になる。これについて高辻は以下のように考える。

「スタートアップは何もないところからみんなで作り上げていく。若い時のほうがチャレンジしやすいですし、その経験をもって大企業に入ったほうが他と差別化できると考えました。またスタートアップは高専のロボットコンテストと似ています。ルールが設定されて実験の中で課題を見つけ、何もないところからみんなでゴールに向かって試作機をつくっていく。特にベンチャーは世の中にないものをつくるところにモチベーションを感じてます」

高辻のようなロールモデルが成功すれば、フォロワーが出現する可能性が高まる。

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進路に悩むのなら…

しかし、誰もが高辻のように一歩を踏み出せるわけではない。「安定」と「自己実現」の間で揺れる学生に彼はこう投げかける。

「進路について迷うことはあると思いますが、迷ってる時点で興味をすでにもっているということ。信頼できるパートナーがいて自分が興味あるなら飛び込んでみると良いと思います。スタートアップは福利厚生や環境が充実する会社も増えてきています。若いうちにやらないで後悔するのはもったいないなと思います」

筆者も20代前半でシリコンバレーのスタートアップで研鑽を積んだ。大学を卒業して大企業に務め、安定した暮らしを送る選択肢もあったが、後悔はしていない。

シリコンバレーのスタートアップでは、まずインターン生として品質管理を担当した。地道な下積みを経て、最後には製品全体の管理責任者であるクリエイティブ・ディレクターを勤めた。それらの経験は一生の財産だ。

今はまだ地域商社やスタートアップといった環境で自己研鑽していきたいと思っているが、将来的には自分の知識や経験を生かして大企業で世界全体の社会課題の解決に取り組んでいきたいとも考えている。

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目の前に面白いことがあったら、やる

これからの時代は履歴書や肩書などに左右されない「個」の時代になってくることは間違いない。自分の人生設計を描いていまどの環境に身を置くことが最も自分の潜在能力を発揮しできるるのかを判断基準にすると良いだろう。

「アグリスト(高辻が所属している農業スタートアップの会社)がこのまま成長すればもっとやりたいことができる。自分で農業をやりはじめるかもしれません。全部自動化して農業をやることも可能です」と高辻は言う。

可能性は自分で広げられる。ロボットいじりが大好きだった少年は他人軸ではなく自分軸の人生を切り拓きはじめている。

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