新型コロナワクチン 医療従事者が「実はまだ接種していない」日本の圧倒的出遅れ

新型コロナワクチン 医療従事者が「実はまだ接種していない」日本の圧倒的出遅れ

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  • 更新日:2021/04/07
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山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師

日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「日本が後れを取っている新型コロナウイルスワクチン接種」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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「実は新型コロナウイルスワクチン、接種していないんですよ……」

新型コロナウイルスワクチンを接種するかどうか迷っている患者さんから、「先生は接種されましたか?」と聞かれることが増えてきた今日この頃。まだワクチンを接種できていないこと、接種する予定もまだはっきりしていないことを伝えると、患者さんは皆、目を丸くして驚かれます。

2月17日から接種後の健康状況調査を行う対象となっている、国立病院機構・地域医療機能推進機構(JCHO)・労働者健康安全機構(労災病院)の病院に勤務する医療従事者を対象に新型コロナウイルスワクチンの接種が開始されているものの、どういう順番で配布がなされているかなど、詳細な情報開示は不十分だと言わざるを得ません。

また、厚生労働省によると「一般の医療従事者の接種は、3月上旬から順次進められています。ワクチンは3月から5月に段階的に供給され、接種が進められる見込みです」とありますが、クリニックに勤務している私がいつ接種を受けられるのか、全く目処が立っていないというのが現状です。

外来診療を行っている現場では、新型コロナウイルス感染症を疑う患者さんが来ない日はほとんどありません。PCR検査を行わない日はないにも関わらず、新型コロナウイルスワクチンをまだ接種できていない中で診療を続けている医療従事者がまだまだたくさんいるのです。

新型コロナウイルスワクチンは、昨年12月8日に英国で開始されたのを皮切りに、世界中で接種が進んでいます。4月3日時点で、157の国や地域でワクチンの接種が始まっており、世界の累計接種回数は5億9698万回を超えています。国別に見ると、米国や中国での接種回数が突出して多く、ついでインドや英国が続いています。

一方、日本はというと、英国のワクチン接種開始から約2カ月遅れてのスタート。これは、G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの主要な先進国)の中でも最も遅いスタートとなりました。

G7各国の人口10万人あたりの新規ワクチン接種数も、3月29日時点で日本はダントツの最下位です。4月2日時点で、累計接種回数は109万6698回、累計接種人数は91万3341人であり、総人口(125,754,000人:2020年9月1日時点)のたった0.7%しか接種していません。Our World in Dataによると、4月3日時点で新型コロナウイルス9ワクチンを少なくとも1回接種した全人口の割合は、イスラエルが60.7%と最も多く、英国が46.3%、米国が31.2%、その他のG7の国々も12%から14.7%でした。日本が圧倒的に出遅れていることは間違いなさそうです。

世界各国で新型コロナウイルスワクチン接種が進むにつれ、接種による効果が報告され始めています。例えば、今年1月17日から3月6日のイスラエルのデータを解析したところ、ファイザーとビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2)は2回接種してから7日目以降の無症状感染を94%減らしたことが報告されました。

また、米国において、昨年の12月中頃から今年3月中頃までに症状の有無にかかわらず新型コロナウイルスのPCR検査を毎週受けていた3,950人の結果によると、モデルナ(mRNA-1273)やファイザーとビオンテックが共同開発したワクチン(BNT162b2)の接種により、無症状も含む2回目の接種から14日後以降の新型コロナウイルスの感染の90%を防いだと言います。

さらに、イスラエルにおいてファイザーとビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2)を接種した人と接種していない人の感染を比較したところ、1回目の接種後12日から28日のウイルス量はワクチンを非接種だった人の4分の1ほどに抑えられていることがわかりました。新型コロナウイルスワクチンは発症予防に加えて感染を移し難くする効果もあるのかもしれません。

昨シーズンは、インフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行の恐れから、インフルエンザワクチンを初めて接種した、ないしは久しぶりに接種したという方も多かったと思います。なんと、インフルエンザワクチン接種していた人は、新型コロナウイルス感染症を発症しにくく、また重症化しにくかったことが、ミシガン大学医学部のAnna氏らによって先月末に報告されました。

それによると、アメリカのミシガン州で昨年3月から7月中旬までに新型コロナウイルス感染(COVID-19)検査を受けた27,201人を調べたところ、前のインフルエンザシーズン中にインフルエンザワクチンを接種していた人がCOVID-19の検査で陽性となる確率は、インフルエンザワクチンを接種しなかった患者と比較して24%減少したといいます。さらに、COVID-19の検査で陽性となったインフルエンザワクチンを接種していた患者は、入院や人工呼吸器を必要とする可能性が低く、入院期間も短かったといいます。

新型コロナウイルスを克服するには、国民の多くがワクチンを接種し、集団免疫を獲得するしかありません。発症の予防に加え、集団免疫の獲得を目指して世界中でワクチン接種が進む一方で、新型コロナウイルスワクチン接種をしない人たちもいます。

2021年2月11日から3月7日の期間で実施されたカイザーファミリー財団とワシントンポストの調査から、最前線で働くアメリカの医療従事者の48%がまだ新型コロナウイルスワクチンを受けていないことがわかりました。また、ワクチンが未接種の医療従事者の18%がCOVID-19ワクチンの接種を予定していないと回答し、12%はワクチンを接種するかどうかを決めていないといいます。医師として勤務している私の友人も、「接種しないつもりだ」という一人です。

私は1日でも早く接種したいと思っていますが、いつになるかはわかりません。世界では接種がどんどん行われている一方で、ワクチン接種が世界と比べて圧倒的に遅れている日本で、エッセンシャルワーカーへの定期的なPCR検査の実施やPCR検査数の増大を積極的に行わず、感染予防や自粛を強いるだけでの対策を行う横で、聖火リレーを行っているという事実に疑問を感じるのは私だけなのでしょうか。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本佳奈

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