
現存する、日本で最古の歌集『万葉集』。農民などの一般の人々の歌も楽しめる歌集ですが、もちろん高貴な人々の歌も収められています。その最たるものが天皇。
今回の記事では、聖武天皇(しょうむてんのう)の気持ちが込められた歌をご紹介します。
今回ご紹介する歌を詠んだ聖武天皇とは?
今回の歌をご紹介する前に、作者である聖武天皇についてざっくりおさらいしておきましょう。

聖武天皇は、日本の第45代天皇(在位724~749年)です。聖武天皇は、藤原鎌足(中臣鎌足)の子どもとされる藤原不比等(ふじわらのふひと)の娘を母に持ち、藤原氏を外戚に持つ初めての天皇となりました。
疫病などに悩まされる社会の不安を和らげるため、お寺や奈良の大仏の建立などに力をいれました。
なお、国分寺の中心として都に建てた東大寺の北にある正倉院には、聖武天皇ゆかりの品が収められています。
聖武天皇が詠んだ、はげましの歌
今回ご紹介する歌がこちら
ますらをの 行(ゆ)くとふ道ぞ おほろかに 思ひて行(ゆ)くな ますらをの伴(とも)
歌の中で2回使われている「ますらを」とは、勇ましい男性や男性らしい趣味を持つ人を指しますが、この歌では男性の役人(非常に高い統率力を持った優秀な役人)を指しています。
この歌では、藤原房前、藤原宇合、多治比県守を指していると考えられています。この3人の役人が、節度使として地方(東海・東山・山陰・西海・南海道など)派遣されることになり、それについて期待と激励を詠んでいるのです。
歌を現代語訳すると
「これから行く道は、立派な男が行く道だから、おろそかな気持ちで行ってはならない、ますらおの友たちよ」
といったところでしょうか。
節度使は地方の軍政と防備を指揮する重要な立場。宴の席で詠まれた歌であり、聖武天皇の気持ちがひしひしと伝わってくるのではないでしょうか。
ただし、この歌は左注に「或いは太上天皇(元正天皇)の御製なりといふ」とも書かれています。天皇による壮行歌の類型であることから、このような異伝があると考えられています。
いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも日本文化や歴史の面白さに興味を持つきっかけになれば嬉しいです。
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