
いやー。K-POPブームですねえ。DIME読者の皆さんついていけてますか?
最近のグループはメンバーが韓国人だけではなく、日本人や中国人がいることもしばしば。さらには「XG」という女性グループは、全員日本人だけど育成から制作まで韓国、という新しい形も。歌やダンスができる才能ある人たちがどんどん韓国を目指すという才能流出に関して、日本の音楽業界はもっと危機感を持たなきゃいけないんだけどそれはおいといて、と。「LE SSERAFIM」に「あれ、元HKT48の子じゃん?」ってなるのもなんかうれしいし、「TREASURE」のアサヒくんが曲作りがんばっているなんて聞いたら応援しちゃうわけです。
しかし、このK-POPの戦略、よくできてるなあと思うんですよ。韓国人だけで固めずほかのアジア人を入れることによってグループ自体に「幅」ができますし、先述の私のように母国のリスナーが肩入れしてくれやすくなる。そして何よりプロモーションで各国を回る時に言葉の壁を取っ払ってくれる、てのがいいですよね。一生懸命覚えた即席の日本語でカンペを読んでくれるのも味があって、それはそれでいいのですが、生放送や奥まった話をする際はネイティブ話者がいるほうが強いですよね。実際「TWICE」や「LE SSERAFIM」が来日した際、日本人メンバーがバラエティーやインタビュー対応しているのを見たことがある方も多いと思います。
時代を先取りしすぎたハロプロ
さて。この国籍混合アイデア、なんか既視感あるよなー、と感じていたのですが「そうだそうだ! ジュンジュンとリンリンだ!」と。説明しますと「モーニング娘。」が2007年に8期メンバーとして北京でオーディションを行なった結果中国人の少女、ジュンジュンとリンリンを加入させたわけです。当時の「モーニング娘。」はいわゆる「プラチナ期」と言われる時期に突入していて、AKB48が隆盛する中、実力派グループとして渋い曲を見事にパフォーマンスしていたのです。高橋愛、田中れいなという2大センターが引っ張る中、ジュンジュンとリンリンも活動していたのですが、当時の傍観者として言わせてもらうと、若干「持て余し感」がありました。
ハロプロのアジア進出の足がかりとしての加入だったんですが、そんな積極的にアジアでコンサートしたりCD売ったりするわけでもなく、日本語もまだ流暢ではなく存在感が薄くならざるを得ない少女2人が一生懸命踊っていた印象があります。
後に私はリンリンと上海で仕事を一緒にすることになるのですが、実際のリンリンはとても天真爛漫で快活な女性です。やはり言語の壁のせいでしょうか、当時はそこまで目立たず、ファンダムも大きくありませんでした。楽曲面でも中国語をフィーチャーしているものは少なく『雨の降らない星では愛せないだろう?』という名バラードでおいしいところに中国語パートが出てくるのが感動的でした。

んー、もったいない。でも、例えば私が当時運営にいたとしてジュンリンをどう活かすことができたでしょうか。韓国のように国策で世界中に音楽を売ろう、という追い風もない。会社ができる世界進出も限界がある。現在ほどネットやSNSが流通していたらもっとやり方も変わったかもしれない。結論、時代を先取りしすぎたんですよね、ハロプロ。そういえばもっと前に国籍混合してた! そう、「ミニモニ」。当時大人気だったモーニング娘。本体から身長150cm以下のメンバーを集めて社会現象になったグループです。
矢口真里・加護亜依・辻希美という国民的アイドルの中にブチこまれたのがミカ。「ココナッツ娘。」のメンバーでホノルル出身のアメリカ人。日米ミックスゆえ名前は日本名だけど、たどたどしい日本語。しかも1人だけ衣装のテイストや色が違う(娘。本体とその他、という分け方かもしれません。)ほかの3人が輝きすぎていたので、大変だったことでしょう。
そんな「外国人枠の持て余し」を教訓にしたか、してないかは知りませんがK-POPは多国籍化が進みます。そのうちアジア人にとどまらずアフリカやヨーロッパなどからもメンバーがもっと来るかもしれませんね!
がんばれJ-POP!
文/ヒャダイン

ヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動。
※「ヒャダインの温故知新アナリティクス」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME6月号に掲載されたものです。