下げそうで下げない米国株式は崩れない? 債券部門から見た「テーパリング」の行方

下げそうで下げない米国株式は崩れない? 債券部門から見た「テーパリング」の行方

  • モーニングスター
  • 更新日:2021/06/14
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6月10日に米国の代表的な株価指数であるS&P500が史上最高値を更新した。ハイテク株主体のナスダック総合も史上最高値まで1.35%に迫っている。米国で10日に発表された消費者物価指数(CPI)が前年比5.0%上昇と予想を上回る物価上昇となったものの、その上昇要因が主に中古車・トラックなどだったことから長期金利は逆に1.43%に低下し、米国株価の頭を抑えていたテーパリング(量的金融緩和の縮小)開始のタイミングが先送りされたとみなされ、株式市場の安心感につながっている。そのような中、プルデンシャル・フィナンシャルの債券運用部門であるPGIMフィクストインカムは、「FRBがテーパリングを正式に検討する機は熟している」という見解を発表した。迫りくるテーパリングが市場にどのような影響を与えると考えられるのだろうか?

モーニングスターのカテゴリー別(ブル・ベア型除く)に年初から5月末までの平均騰落率を振り返ると、上昇率が高い上位20カテゴリーは、前年がマイナスのパフォーマンスだった「国際REIT」「国内REIT」が中心だ。ここに、同様に前年度マイナスだった「国際株式・ロシア(為替ヘッジなし)」「コモディティ」「国内大型バリュー」などが加わる。そこに割って入るのが、前年も2ケタ成長し、今年に入っても上昇が続いている「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」などだ。

「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」は、19年に24.42%、20年に10.32%、そして、21年は年初から18.79%と3年連続で2ケタ成長となっている。「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」も、19年に26.41%、20年12.23%に続いて21年もこれまで14.68%と3年連続で2ケタ成長だ。さらに、上位20カテゴリーからは外れるものの「国際株式・中国(為替ヘッジなし)」も、19年に27.99%、20年が26.67%に続いて、21年も11.88%と3年連続2ケタ成長を続けているカテゴリーだ。過去3年間にわたって、市場を一貫してけん引してきたのは、米国株を中心とした先進国株式であり、また、その対立軸としての中国株であったということだろう。

そして、もう一つ、カテゴリー別に年初来騰落率をみて気が付くのは、ヘッジ付き外債と一部の国内債券を除く、全体の85%を占めるカテゴリーが21年の年初から5月末までプラス成長をしている点だ。これは、「ゴルディロックス相場(適温相場)」という言葉が使われた2019年に全カテゴリーの94%がプラスになった時を思い起こさせる。2018年後半の米中貿易摩擦の激化から世界経済に下押し懸念が強まり、19年には米国に金融緩和期待が台頭し、年後半は世界の景気回復期待を背景に年末に向かって株高が進んだ。現在は、コロナワクチンの普及によって、コロナショックから回復に向かい始めたタイミングにある。ワクチン接種の進展には地域差があり、これが結果的に、世界全体の経済回復の速度を緩やかなものとし、「金融緩和と緩やかな経済成長」というゴルディロックスの条件につながっているように見える。

この適温相場の変調要因として注目されているのが、米FRBによる「テーパリング(資産買入の規模縮小)」の開始だ。米国による資金供給の量が少なくなっていくことによって、緩和に慣れ切った市場が変化するのではないかと恐れられている。特に、前回のテーパリング開始のアナウンスが「バーナンキ・ショック(=テーパータントラム)」として記憶されているだけに、市場は神経質になっている。

PGIMフィクストインカムの主席エコノミストであるエレン・ガスケ氏は、このテーパリング開始の時期について、「足元の力強い経済成長と、FRBの資金供給が過剰になっている可能性を考えると、FRBがテーパリング開始を決定する日は近いと考えられる。少なくとも、もう1四半期の間、経済指標(特に労働市場)の堅調が続いていることを確認し、2021年の10-12月期の初めまで待った後でテーパリングを開始する可能性が高い」と見通している。ただし、今回のテーパリング開始の決定に対する市場の反応は、「2013年とは異なると考えている」という。

その理由は、「テーパリングについて、2013年の経験から市場の理解が深まっていること、また、今回はFRBではなく、市場参加者による議論が先行している点が重要である」とする。事前に想定できる変化については、市場はショックを受けにくい。さらに、FRBの市場との対話は洗練され、「米金融当局は、翌日物リバースレポを使い、余剰の準備預金を金融システムから吸収し、FF金利の実効レートを下支えており、このリバースレポの取引額が足元で急増している」など、テーパリング開始に向けた地ならしが既に始まっているものの、市場はしっかり推移していることを評価している。

PGIMフィクストインカムは、2021年の米GDP成長率は6.5%程度、22年は4.5%と予想している。「これまでの政府経済対策による支給金はまだすべて使われておらず、家計で積み上がった支給金が今後消費に向かうため、経済成長は底堅く推移する」とみている。リスクシナリオとしては、成長率が下振れするリスクだが、この際には、「FRBはフォーワード・ガイダンスが示唆するよりも、さらに長期にわたりゼロ金利政策を維持する姿勢を示すだろう」として、市場が大きく崩れる可能性は小さいと示唆している。エレン・ガスケ氏が想定するように、債券市場が大崩れせずに推移するものであれば、現在の市場を支えているゴルディロックスのような環境は継続すると期待できそうだ。(グラフは、カテゴリー別平均騰落率のランキング。2020年・1年間と2021年・年初来5月末まで、5月末まで騰落率の上位20カテゴリー)

徳永 浩

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