興収782億円の映画も...『鬼滅の刃』も及ばない中国の「デカすぎるアニメ市場」

興収782億円の映画も...『鬼滅の刃』も及ばない中国の「デカすぎるアニメ市場」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/21
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花澤香菜、宮野真守ら最強声優陣

今、中国のアニメーション文化がにわかに日本でも盛り上がる気配を見せているのをご存知だろうか。映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』が11月7日に日本で吹き替え版が上映開始されている。

127館とはいえ、興行成績ランキング初登場8位と少し寂しい出足だが、公開2週目にして、前週比100%を記録するなど、粘り強い人気を発揮しそうな気配がある。

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猫の妖精羅小黒(左)と無限/公式HPより

実はこの作品、今回が日本初上映ではない。2019年9月に在留中国人向けに池袋1館で上映が開始された。筆者はこの時に観に行ったのだが、日本語が全く聞こえず、中国に迷い込んだかのような独特の空気を今でも覚えている。

日本語字幕もあるにはあるのだが、Google翻訳をそのまま使ったかのような粗い日本語訳であり、さらに文字量も多く早く流れたために、言葉を追うのに苦労した。

それでも、その内容には大変感動した。物語は黒猫の妖精・羅小黒(ロシャオヘイ、花澤香菜)が深い森の中で暮らしていたが、人間による森林伐採により居場所を無くし、都会で暮らしているところを人間に襲われるところから始まる。

その後、妖怪のフーシーに保護されるものの、対立する道士のムゲン(宮野真守)に襲われてしまい、囚われの身となる。そしてムゲンと共に旅をしながら、人間と妖精のあり方を模索するのだ。

本作は上映当初から日本の熱心なアニメファンのみならず、アニメ業界関係者が熱視線を送っていた。最初は在留中国人向けだったものの、アニメファンの口コミで日本人にもヒットし、その後徐々に公開規模も拡大、この度晴れて日本語吹き替え版が制作された。

興行収入782億円!?

主演を務める花澤香菜は日本でもトップクラスの人気を誇るが、中国でも年越し番組に登場するなど海を超えて人気が高い。物語で重要な役割を果たすムゲン役の宮野真守も同様だ。そう考えると、吹き替え版が逆輸入のような形で再ヒットする可能性もあるのではないだろうか。

日本のアニメファンが本作を鑑賞した際に、多くの日本アニメのエッセンスがあることに気がつくだろう。スタジオジブリ作品のような自然描写、『NARUTO』 に代表されるアクション作画の迫力、可愛らしいキャラクターの仕草なども日本のアニメに近い印象だ。それらがモノマネの域を超えて、それぞれオリジナルの魅力を放っているからこそ、本作は高い評価を獲得した。

アニメーションとアニメは世界的にも違うものとして認識されやすい。“アニメ”という呼称は日本オリジナルの造語であり、世界でも日本の作品を指すことが多い。

ディズニーなどのアメリカの作品や、ヨーロッパの作品は“アニメーション”であるが、『羅小黒戦記』などの中国の作品はむしろ“アニメ”という呼称の方が印象として近いのではないだろうか。それだけ、日本の作品の魅力を取り込みながらも、独自の文化の味わいを打ち出している。

中国アニメーション作品は日本ではなかなか入ってくる機会は少ないが、中国国内の盛り上がりは年々増している。『Ne Zha』は2019年に中国国内で50億元(約782億円)以上を記録している。

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昨年9月公開の『Ne Zha之魔童降世』ポスター

日本では『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』が歴代興行収入1位を狙うレベルのヒットを記録しているが、仮に400億円稼いでも、コロナ以前とはいえ『Ne Zha』とはさらに倍近い差があると考えると、その規模の違いを思い知らされる。

他作品に目を向けても、Netflixで配信されている『紅き大魚の伝説 』では華麗な手書き表現に圧倒された。またCGアニメーションの『白蛇 縁起』では日本の萌えを踏襲したようなキャラクターも登場するなど、オタク心をくすぐられた。

特にCGの分野に関してはそのクオリティは日本を超え、アメリカにも迫る勢いであることは疑いようがない。年々、クオリティの面でもレベルアップしているのだ。

「チャイナリスク」も存在する

一方で、日本の作品の興行という意味でも、中国は存在感を増している。『劇場版 夏目友人帳 うつせみに結ぶ』は日本では推定8億円前後と目されているが、中国では1億元(16.6億円)を超えるヒットを記録している。

また、コロナ禍中も含むために単純に比較はできないが、2020年2月21日に日本公開された『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』は日本の初週4日間が1億2000万円と言われている中、一方で中国では公開5日間で12億円となっており、まさに桁違いと言えるだろう。今では中国の存在は作品のクオリティの面からも、興行という面からも無視できないものとなっている。

ただし、チャイナリスクが大きいのも他の産業と同じか、もしくはそれ以上かもしれない。2020年では『僕のヒーローアカデミア』が中国・韓国内で大炎上したことが挙げられる。

敵側の登場人物の名前が第二次世界大戦期の研究機関「731部隊」を想起させるとして、インターネットを中心に大きな問題となったのだ。難癖とも受け取れる批判意見だが、ジャンプ編集部と作者の堀越耕平が謝罪し、キャラクター名を変更する事態にまで発展している。

また新しい文化として脚光を浴びるVTuberでも炎上が発生した。カバー株式会社が運営するホロライブのVTuber、桐生ココと赤井はあとが、自身のチャンネルを見ている地域の割合を示すGoogleのデータを公開した。その際に日本、アメリカに並んで台湾が表示されており、台湾を国扱いしたのではないか、と中国国内で大きな問題となった。

その結果、カバー株式会社は炎上を収めるために2人の3週間謹慎処分を下したものの、今度は中国以外の国から抗議が殺到し、台湾では新聞などで報道される問題に発展した。特に桐生ココはスーパーチャット(投げ銭システム)の世界累計額が世界1位の1億540万円を記録するなど、国外からも高い注目を集めていただけに、その反応も大きなものとなった。

コロナウイルスによる影響の収束の兆候が見られない以上、特に欧米は今後も映画文化に対して厳しい対応が迫られるだろう。その中でも『鬼滅の刃』の大ヒットが示すように、比較的ダメージの少ない日本、特にアニメ映画は世界的にも大きな存在感を発揮することができるかもしれない。

そして2時間以内の作品のみなどの限定的とはいえ、再開している中国市場の動向も重要になる。そのリスクとどのように向き合いながら収益を上げていくか、難しい判断が迫られている。

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