婚約破棄を申し出た直後に発覚した、新恋人の裏切り。愛欲に走った女が受けた罰とは

婚約破棄を申し出た直後に発覚した、新恋人の裏切り。愛欲に走った女が受けた罰とは

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  • 更新日:2021/04/13

かつて好きだった彼との再会。その思いが再燃してしまった時、人は恋心を抑えることができるのだろうか。

堰を切ったように溢れ出す感情。恋人も家族も敵にまわして貫く恋。

「ねえ。私たち、出逢わなければよかった…?」

安定した未来を捨ててまで燃え上がってしまった、恋の行方とは。

◆これまでのあらすじ

ついに信也へ、婚約破棄を申し出た菜々子。健太郎と一緒になることを決めたはずだったが、そんな彼に恋人がいたことが発覚する。

怒りと悲しみに震える菜々子は、健太郎の部屋を飛び出し実家へと帰るが…?

▶前回:突然かかってきた1本の電話に、女は震えあがって…?愛する男が隠していた衝撃の事実

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「菜々子がこんなにひどい子だったなんて。我が家の恥よ…」

玄関に出てきた母は、声を震わせながら思い切り手を上げた。

バチン。

乾いた音が響いた後、頬がジンっと痛んだ。

― 両親に叩かれたことは、これまで一度もなかったのに…。

ジリジリと嫌な感覚が残る頬に手を当てながら、菜々子は目の前の母を見つめる。

婚約破棄を申し出てから健太郎の家に身を寄せていたから、帰宅するのは一週間ぶりだ。両親ならどんなときでも味方でいてくれるはずだと戻ってきたが、現実はそう甘くなかった。

「信也さんがひとりで謝罪に来たわよ。こんなことになってすみませんって…。すべて聞いたわ。婚約してる身で他の男に走ったなんて、情けなくて言葉も出ないわよ」

まくし立てるように言った母は、その場にしゃがみ込んでしまった。

「ごめんなさい…」

土間から上がることもできず、菜々子は呆然と立ち尽くす。

「つい昨日も、ご両親から連絡があったのよ。信也さんが入院することになったって。他人の人生を滅茶苦茶にして、何も思わないの?」

― 入院…?

菜々子はしばらく言葉を失った。

菜々子が健太郎と過ごしている時間に、いったい何があったのだろうか…?

何もかも失った

「いつまで玄関で立ち話してるんだ?リビングでゆっくり話したらどうだ」

玄関での一悶着を見かねたのだろう。父が出てきて声をかけた。だが、一度火がついた母の怒りは収まらない。

「こんな娘、家の中にいれるのも嫌よ」

母の言葉に、菜々子は口ごもる。その場にはピリピリした空気が流れた。

「感情的になっていても仕方ないだろう。こうして菜々子が帰ってきたんだ。きちんと話し合おうじゃないか。ほら、入りなさい」

父に促され、母は機嫌悪そうに部屋に戻っていく。菜々子もその後に続き、そろりそろりと足を踏み入れた。

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「2人とも、そこに座って」

普段は寡黙な父が、その場を先導する。母は菜々子の正面に座ったが、思い切り横を向いており一度も目を合わせてくれない。

「菜々子。自分の口から説明しなさい」

単刀直入に父が切り出した。

― 説明って言われても…。

何をどう説明したら良いのかわからず、うつむくことしかできない。

「説明しなさい」

すると父が、強い口調でもう一度求めてきた。その空気に耐えられず「ごめんなさい…」と頭を下げた後、率直な気持ちを告白する。

「かつて家庭教師で教えてもらっていた麻生先生に再会したの。どうしても気持ちを抑えることができなくて。…信也さんには申し訳ないと思ってる」

「麻生先生って。あの…」

母が息を呑む音が聞こえた。信也から、そこまで詳しくは聞かされていなかったのだろう。

絶句する母を横目に、父が尋ねてくる。

「じゃあ、その男と結婚しようと思っている。そういうことなのか?」

今となっては、返す言葉が見当たらない。どれほど愚かなことをしたのだろうと、菜々子は今さら気づく。

「その男とも上手くいってないのか…」

深いため息とともに、父の言葉が途切れた。これまで取り仕切ってくれていたが、さすがに諦めの色を浮かべ黙り込んでしまっている。

「ごめんなさい、あの…」

だが菜々子には、この場を離れる前にどうしても聞いておきたいことがあった。母がまだ何かあるのかという顔で、こちらをきつく睨んでくる。

「さっきの話。信也さんが入院したって、どういうこと?」

気まずい空気を振り切って、質問をぶつける。こればかりは聞き流すことはできなかったのだ。

母の口から告げられた、信也の様子とは…?

居場所がない

「信也さん、ショックで食事も喉を通らないほどになったそうよ。家に来てくれたときも、ひどく青白い顔でね。このままでは危険と判断されて、入院することになったと聞いたわ」

驚くべきことに、口を開いたのは母だった。淡々と、しかし怒りを滲ませながら説明してくる。

「あちらの親御さんから連絡があったのよ。怒鳴ったりもせず、ただ事実を伝えてくれたけど、本当に申し訳ないわ。こんなことになって、いくら謝罪しても足りないわよ」

そこまで言い切ると、母は再び視線を逸らした。

身勝手な行動のせいで、両親にも相当な迷惑をかけていたと知る。娘の不貞を詫びることしかできない父と母の立場を考えると、申し訳なさでいっぱいになった。

「ごめんなさい…」

それ以外の言葉が見つからない。菜々子はひたすら、謝罪を繰り返すのだった。

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― 出て行くしかないかな。

自室のベッドの上で、菜々子は天井をぼんやりと眺める。

母に拒絶され、父には失望された。この家に、もう自分の居場所はない。

健太郎との恋を選んだことで、信也と家族の信頼も、すべて失った。それでもいいと思っていた。そんな覚悟で愛を貫くつもりだったのに、彼からも裏切られた。

菜々子の目からとめどなく涙が溢れ出る。泣いても泣いても、涙が枯れることはなかった。

しばらくベッドに突っ伏していたが、ハッと我にかえる。明日も仕事だ。いつまでもこうしているわけにはいかない。

ヨロヨロと起き上がって、パジャマに着替える。シャワーは明日の朝入ろうと、目覚まし時計をセットするためスマホを取り出した。

そして画面を見た菜々子は絶句したのだ。健太郎から、20件以上の不在着信とメッセージが入っていたから。

「今さら何よ」と思いながらも、やはり気になってトーク画面を開いてしまう。

『悪かった。会って話がしたい』
『菜々子、愛してる』

メッセージをどう受け取って良いのか、今となってはわからない。言い訳なのか、本心なのか。

それらを呆然と眺めていると、手に持っていたスマホが振動し始めた。画面が切り替わり、健太郎からの着信を知らせる。

― どうしよう。

とっさにスマホを裏返したが、本当のことを知りたい気持ちもあった。大きく深呼吸した後、震える手で通話ボタンを押す。

「もしもし?もしもし?」

健太郎の問いかけに、小さな声で「はい」と返す。

「電話に出てくれてありがとう。菜々子、本当に申し訳なかった。ちゃんと説明したい。今から会えないか」

「そんなこと言われても…」

彼の部屋を出てから、すでに3時間近く経っている。これから外に出る気にはなれないし、今日は疲れ果てているのだ。すると健太郎がこう告げてきた。

「迎えに行くから。実家でいいんだよね?」

「そんなの困る…」

言葉の途中で、電話は途切れてしまった。

『着いたよ。出てきてくれないか?』

30分後。

再びスマホが鳴った。窓から覗くと、玄関の前に1台のタクシーが停まっていて、その横に一人の男性の影が見える。

対向車線を走る車のライトに照らされ、健太郎の姿が映し出されたのを見た瞬間、息が止まった。

― やっぱり会いたい…。

コートを羽織った菜々子は、何かに急き立てられるように自宅を飛び出した。

▶前回:突然かかってきた1本の電話に、女は震えあがって…?愛する男が隠していた衝撃の事実

▶Next:4月14日 水曜掲載予定
菜々子は健太郎とヨリを戻すのだろうか。一方、謝罪のために信也の実家を訪ねると…?

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