「親の金で暮らしていたくせに!」老父と同居の妹に兄が迫った〈相続財産の減額〉【弁護士が解説】

「親の金で暮らしていたくせに!」老父と同居の妹に兄が迫った〈相続財産の減額〉【弁護士が解説】

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  • 更新日:2022/05/14
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高齢の父を心配し、自分の家族と一緒に同居して面倒を見ていた娘。しかし、父のお金を管理するほか、自分たちの生活資金のすべても父の財布から出しています。父が亡くなると、別居していた息子は、それを「特別受益」だと主張しますが…。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

同居と引き換えに、生活費すべてを老父の財布から…

太一さんは、奥さんを亡くしてひとり暮らしとなりました。太一さんには、長男の太郎さん、長女の花子さんがいます。太一さんのひとり暮らしは何かと不便なことが多いと思い、花子さんは、太一さんの自宅(花子さんの実家)で、花子さん家族(夫の実さん、娘のすみれちゃん)と一緒に暮らすこととしました。

太一さんの通帳は、花子さんが管理をしており、太一さんから下ろしてほしいと言われたお金は、花子さんが下ろして渡していました。

花子さん家族の生活費等は、水道光熱費から食費に至るまですべて太一さんが出していました。もちろん、太一さんに家賃も支払っていません。

花子さんが同居して5年経ち、太一さんが亡くなりました。

長男の太郎さんは、花子さんが太一さんの自宅に家族で一緒に住んでいたことは賃料相当額が特別受益であり、生活費を出してもらっていたことも特別受益だと主張してきました。

花子さんは、太一さんは花子さんが同居して面倒を見ていたから食費や水道光熱費などの生活費を出してくれたのであり、面倒を見るための経費のようなもので、親である太一さんの面倒をまったく見ようとしなかった太郎さんにそのようなことは言われたくないと思っています。

花子さんと太郎さんの主張はどちらが正しいでしょうか。

①花子さんは、太一さんの面倒を見ていたけれども、太一さんの家に無償で住んでいたのだから、賃料相当額が特別受益となる。

②花子さんは、太一さんの面倒を見ていたけれども、太一さんに生活費を出してもらっていたことは、特別受益となる。

③花子さんは、面倒を見るために同居しており、太一さんの家に無償で住んでいたとしても特別受益とならない。

④花子さんは、面倒を見るために同居しており、太一さんから一緒に生活するために食費や水道光熱費を出してもらったとしても特別受益とならない。

食費・水道光熱費などの生活費は「特別受益」なのか?

相続でよく問題となることの1つに「特別受益」というものがあります。

特別受益というのは、相続人の1人に、生前贈与など特別な利益を得ていた場合には、これを相続分の前渡しとして、遺産に加算して各相続人の相続分を計算して、特別受益を得ていた相続人の相続分から特別受益分を差し引くこととする制度です。

例えば、遺産が3000万円で、相続人がAとBの2人のとき、Aが父親から1000万円の生前贈与を受けていたケースでは、1000万円の生前贈与を特別受益として持ち戻して、遺産は4000万円となります。

相続人が2人の法定相続分は2分の1ずつですから、ABの相続分は2000万円ずつとなります。

Aはすでに1000万円を生前贈与として受領していることから、遺産から1000万円を受け取ることとなり、Bは2000万円を受け取ることとなります。

本件では、親の面倒を見るために、親の家に無償で住んでいたことと、親と一緒に住んでいるときに出してもらっていた食費や水道光熱費などの生活費が特別受益となるかということが問題となっています。

花子さんは、ただで住んだり、ただで生活したりしているのですから、利益を得ており、特別受益があるようにみえます。

しかし、民法上の特別受益は「遺贈」「婚姻又は養子縁組のための贈与」「生計の資本としての贈与」と規定しています。

したがって、遺産の前渡しあるいは生計の基礎として役立つような財産の給付と考えられています。

そして、同居しているようなケース、同居して食費や水道光熱費など一緒に生活するための生活費を出しているようなケースは、生計の資本の贈与には当たらない、即ち、特別受益には当たらないとされています。

仮に、これらが特別受益に該当するとしても、本件では、花子さんが同居をして面倒を見る代わりに、太一さんが、自宅に花子さん家族を無償で住まわせ、母子さん家族の生活費を負担していたと考えるのが普通です。

したがって、そのような場合に持ち戻しをして相続で花子さんの相続分を減らす考えは太一さんになかったと思われ、「持ち戻しの免除」があったと考えられます。

いずれにせよ、本件では、花子さんが太一さんの家に無償で住んでいたことは特別受益とならなりませんし、花子さんが太一さんから一緒に生活するために食費や水道光熱費を出してもらったことも特別受益となりません。

したがって、正解は選択肢③と④で、太一さんの家に無償で住んでいたのだから、賃料相当額が特別受益となるという選択肢①と、太一さんに生活費を出してもらっていたことは特別受益になるとする選択肢②は誤りとなります。

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

高島 秀行

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