K-POPの聖地「新大久保」が汚されている 食べこぼしやタバコの吸い殻、吐瀉物まで...「もう住めない」と街を出ていく地元住民も

K-POPの聖地「新大久保」が汚されている 食べこぼしやタバコの吸い殻、吐瀉物まで...「もう住めない」と街を出ていく地元住民も

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  • 更新日:2021/04/07
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大久保通りは道幅が狭く、週末は観光客でごった返している。写真の一部を加工しています(写真=國府田英之)

K-POPなど韓流ブームの聖地と言われ、多くの若者らが行きかう東京・新大久保。その活況の裏側で、観光客によるごみのポイ捨てなどマナーの悪さが深刻な事態となっている。悩まされ続ける地元住民に話を聞くと「こんな汚くてうるさいところには住み続けられない」と泣く泣く街を離れたり、転居を検討する人も出始めている。

【写真】観光客が住宅の敷地内に捨てていった食べ残しのカスと容器

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韓流ショップや韓国料理店が軒を連ねる「大久保通り」。天気の良い金曜の午後に訪れると、さまざまな年齢層の女性やカップルらでごった返していた。その大久保通りにつながる細い路地の入り口で、ひとりの女性が、立ち食いしながら路地に入ってくる観光客らに声をかけ、通行の自粛をお願いしていた。

「この先は住宅地です。住民が迷惑しているので食べ歩きはご遠慮ください」

「食べ歩きは新宿区が指定した場所、区立公園や交差点のゴミ箱設置場所でお願いします」

彼女は祖父の代から近隣に住んでいる50代の女性で、ここ3年ほど、土日や祝日など仕事の空き時間にここに立って呼びかけを続けているという。

路地は公道であり、立ち入りが規制されているわけではない。立ち食いも違法行為ではない。ただ、この女性が体を張って注意を呼びかけないといけないほど、住民たちの静かな暮らしは阻害され続けているのだという。

大久保通りは歩道が狭い。土日や祝日はただでさえ観光客でごった返すが、さらに通りには韓国版アメリカンドッグ「ハットグ」「チュロス」「タピオカ」など様々なテークアウトの人気飲食店が多数できた。店の前には行列ができ、さらに立ち食いの客が滞留するため、歩道は「密」の状態だ。お目当ての食べ物をテークアウトしたはいいものの、歩道に食べる場所が見つけられなかった人は、足が路地に向かう。その先には、すぐに住宅地がある。

路地で目に付くのが、住民からの注意書きだ。「食べこぼし、ゴミの投げ捨て迷惑しています」とハットグの写真が入った張り紙や、「住宅地につき座り込み、飲食、喫煙禁止」と日本語、韓国語、英語で書かれた張り紙もある。

住宅の前からコインパーキングまで、いたるところでみられるこうした風景が「現実」を物語る。

先の女性は「私だって、本当はこんなこと(観光客への注意)をしたいわけじゃないですよ」と疲れ切った顔で話す。

「3年くらい前から一気にひどくなりました。私の自宅周辺では、立ち食いだけではなく、敷地内のカースペースなどに座り込んで食べたり、たばこを吸ったりする人が後を絶たず、食べこぼしやごみのポイ捨ては日常茶飯事です。やむなく敷地の一部に蛇腹の柵を設置したのですが、柵をちょっと開けて隙間に座り込んで食べる人までいました。近くのアパートでは、日陰に入りたいからと通路に勝手に入って立ち食いして、そのごみをポイ捨てされたこともありました」

こうした被害は日中だけにとどまらないという。

「深夜に酔っ払いが住宅地で騒いだり、家の敷地に嘔吐されたことが何度もあります。新型コロナウイルスが大きな問題となっているこの時期、こうしたリスクを伴う汚物やごみを掃除するのは、ずっと静かに暮らしてきた私たち住人です」

事実、女性が立っていたのとは違う路地を見ると、立ち食い客や路上たばこを吸う人が次々に入ってきて、去った後にはごみや吸い殻が残されていた。飲食店の店員が座り込んでたばこを吸っていることもあった。ちなみに、新宿区は条例で路上喫煙は禁止されている。

喫煙していた中年女性に声をかけたが、

「喫煙所が見当たらないし、歩道だと(火が)危ないからこっちで吸ってます」

とそっけなく答えるだけだった。またアパートの前でハットグを立ち食いしながらマスクを外しておしゃべりしていた大学生カップルは、

「ごみを捨てちゃだめですけど、歩道が混んでるから、とりあえずはこっちに来ちゃいますよね」

罪悪感はさほどないようだった。

そばを歩いていた住民男性は「昔は静かな住宅地だった。変わっちゃったよね。これが自分たちが生きてきた街なのかなあと思いますよ」と彼らに目をやりながら、さみしそうに本音を語った。

前出の50代女性は、ずっとここに住むことはできないだろうと、家族と将来的な転居について話しているという。その家族の一人は同じ路地で立ち入り自粛をお願いしてきたが、ストレスが影響してか体調を大きく崩してしまった。

声をかけても無視して立ち食いを続ける女子高生。「ここは公道だ、お前らの土地じゃないだろう」「何様なんだ」などとすごんでくる男性たち。悪質な観光客は枚挙に暇がないほどいる。

この問題をニュースで見たという観光客の女性たちが、マナーの悪い若者を注意してくれたこともあったが、そんな「いい人」は奇跡に近い。頑張るほど日に日に疲れがたまり、終わりも見えない。

「祖父が残してくれた家を守りたいという思いはあります。でも、この現実を考えると、住宅地が昔の姿に戻るのは難しいと感じています。私の知る限りで、古くから地元に住んでいた3軒のお宅が、この2年ほどの間に家と土地を手放して街を出ていきました。毎日のように家の前のポイ捨てごみの掃除を強いられていた近隣住民は、ストレスをため込んでいら立ちを抱え続け、最後は『もうこんな汚くてうるさいところには住めない』と、泣く泣く引っ越しました」(同)

同じように街を出るか考えている住人は、今も少なくないという。

「楽しい観光地であっても、すぐそこに人が住んでいて、静かに生活していることをなんとか知ってほしい。たった一枚のごみ袋を持ってくることが、そんなに難しいんでしょうか。自分の家の前で、見ず知らずの他人がマスクを外して食べ歩く様子を想像してほしいんです」(同)

街を歩く観光客はみんな楽しそうだ。ただ、そのそばで、こうした現実に苦しんでいる罪なき住人たちがいることは、忘れてはいけないだろう。(取材・文=AERAdot.編集部・國府田英之)

國府田英之

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