
"東北―山梨学院 五回裏、山梨学院の進藤は先制適時打を放つ=上山淳一撮影"
(18日、第95回記念選抜高等学校野球大会1回戦、山梨学院3―1東北)
「この春で巻き返します。巻き返さないとやばいでしょう。1打席目でセンター前にライナーで打ち返すイメージもできています」。主将の進藤天選手は試合前、こう意気込んだ。
昨年の春、夏と連続して甲子園にレギュラーで出場したが、4打数のいずれも無安打。念願の初安打までには、いくつもの関門が待ち受けていた。
初回、相手先頭打者の遊ゴロをいきなりトンネル。「緊張で腰高になった」。林謙吾投手の落ち着いた投球と、佐仲大輝捕手の好送球で二盗を阻止したが、流れを渡しかねない場面だった。
いつもの1、2番ではなく、5番に入った初打席は死球、三回の第2打席は1死満塁の好機で三振に倒れた。「初球が甘かったのに、ファウルで仕留められなかったところで負けていた」。相手投手の制球の乱れから再三の好機を作ったが、林投手を援護できない展開が四回まで続いた。
初安打は五回に生まれた。2死二塁の打席で、2ストライク後の真ん中低めの直球を左前にはじき返し、二塁走者の岳原陵河選手を迎え入れ、先制した。さらに、二盗を狙ってスタートを切ったところに、次打者の佐仲選手が右中間に二塁打を放ち、2点目のホームを踏んだ。
好プレーは続く。七回、高橋海翔選手、岳原選手の連打でつくった無死一、二塁の好機。相手一塁手の猛ダッシュに動じることなく、きわどい内角球からの犠牲バントで走者を進め、続く佐仲選手の犠飛を呼び込んだ。「バントは得意なので、決められると思っていた。相手の一塁手が目に入ったが、冷静にできた」と振り返った。
八回の守備では、カットプレーの際に左足ふくらはぎがつり、ベンチに戻って治療する場面もあったが、大きな拍手に迎えられてグラウンドに戻ってきた。
「2ストライクを取られた後は、直球にタイミングを合わせる」、犠牲バントは「最初のストライクで決める」というチームの「決めごと」をしっかり守って結果を出した。
吉田洸二監督も「高校の遊撃手としてはトップレベル」と認める堅守が持ち味。だが、大会の初日は失策が出がちで、仲間からも「ルーティン」と声がかかった。苦笑いしながらも、「次の試合も、これからもミスはしない」と表情を引き締めた。
苦しんで果たした初戦突破。団結の中心にいる主将の存在感はさらに高まったようだ。(三宅範和)