【日本史の謎】博多に来襲した元軍がたった1晩で撤退した本当の理由

【日本史の謎】博多に来襲した元軍がたった1晩で撤退した本当の理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/20
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"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

「文永の役」の真実

1274年の今日(旧暦の文永11年10月20日)、「文永の役」で前日に博多湾に姿を現した元軍が撤退していきました。大挙して博多湾に押し寄せた元の軍勢は、なぜ一夜にして撤退したのでしょうか? 通説では、のちの神風思想に通じる暴風雨の襲来、とされてきましたが、実際はどうだったのでしょう?

南宋を滅ぼし、高麗の軍事組織・三別抄(さんべつしょう)の反乱を平定した元の皇帝フビライ(1215-1294)は、元への帰順を無視し続ける日本に対して、侵攻を命じました。

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元の第三代皇帝、フビライ・ハン photo by gettyimages

1273年より進攻の準備を進めた元は、翌年の10月3日に朝鮮半島の合浦(がっぽ、現在の馬山)を出航、対馬、壱岐を蹂躙したのちに、肥前松浦沿岸に接近。いく度かの襲撃を経て、10月19日に博多湾に上陸を開始したのです。軍勢は元軍(蒙古・漢人)を中心に、多数の高麗将兵から構成されていました(本記事では「元軍」としました)。

どこに上陸したのか?

さて、この時の元軍の上陸地点について、蒙古襲来の詳しい資料として有名な寺社縁起『八幡愚童訓(はちまんぐどうくん)』では、上陸地を息の浜(現在の福岡市博多区東公園付近)とし、それが長く有力な説とされてきました。

しかし、博多湾の地形を検証すると、当時海側に突き出た百道浜(ももちはま)の先端は岩礁が多く、また百道浜より東側では水深も浅いため、大型の船が進入して投錨するには不自然です。

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1894年当時の海図をもとに作成した元寇当時の博多湾の水深 (『日本史サイエンス』をもとに作成)

著名な竹崎季長の『蒙古襲来絵詞』をはじめとした日本側武士の記録や報告などの資料を合わせて考えると、博多湾西側の今津から侵入した元軍は、百道浜西方に投錨、上陸を開始したと考えられるのです。

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『蒙古襲来絵詞』に描かれた竹崎季長(右端の馬上の武士)と蒙古軍兵士たち photo by National Diet Library Digital Collections

したがって通説に比べると、上陸して博多の街を陥落させるには、距離的に不利となります。

上陸するだけで一苦労

そして、船団や船の規模を考慮したうえで上陸作戦をシミレーションすると、上陸艇が兵馬を上陸させ母船に戻るのに1往復1時間がかかり、全軍を上陸させるためには10往復10時間が必要だと想定されます。朝、夜明けとともに上陸を開始しても、日のあるうちに全ての将兵と軍馬を上陸させることは非常に困難です。

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『蒙古襲来絵詞』での上陸艇と思しき元軍の船 photo by National Diet Library Digital Collections

上陸作戦がスムーズに行われなかったのに加えて、日本の武士団による損害もあり、元軍の形勢は早々に撤退に傾いていったのではないかと思われます。

また、冬の到来とともに玄界灘は季節風によって荒れるため、航海は非常に危険になります。11月という季節の変わり目を迎え、蒙古軍には十分な時間がありませんでした。元の公式歴史書『元史』における、行きの倍近い帰路の日数は、冬を迎えつつある玄界灘の航海がいかに厳しいものだったかを物語っています。

上陸から進軍までの困難、撤退を急がざるを得ない時間的な限界などから、元軍は早々に撤退していかざるを得なかったのではないか、と考えられるのです。

元軍(蒙古)の軍船についての興味深い検証は、ブルーバックス ・ウェブサイトの『CGで完全再現したらわかった! 元寇で押し寄せた蒙古軍船の弱点』でもご紹介しましたが、こうした史実を科学的に検証してみると、実に様々なことが見えてきます。

日本史サイエンス蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る

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