アレクサンドリア・オカシオ・コルテスって誰?

アレクサンドリア・オカシオ・コルテスって誰?

  • JBpress
  • 更新日:2021/01/13
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民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(2019年7月26日撮影、写真:AP/アフロ)

https://www.vanityfair.com/news/2020/10/becoming-aoc-cover-story-2020

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通称AOCは過激派リベラルから変身

上のリンクの写真をご覧いただきたい。

ポピュラーカルチャーやファッション、時事解説、有名人との単独会見記事で一定の評価を受けてきた発行部数120万の月刊誌、「バニティフェア」(2020年12月号)の表紙だ。

モデルは、サテン(朱子織り)と思われる純白のスーツを着こなした美形の女性。お金持ちのヤングミセスか、あるいはパリパリのアラサー、女性起業家か、と思いきや・・・。

今注目の民主党リベラル派の下院議員センセイである。

キャッチには「AOC、彼女のこれからの4年」と書かれている。

AOCとは、今や米メディアでも定着しているアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(31=民主党、ニューヨーク第14区選出)の通称。

長ったらしい名前を嫌ったのだろうだろうが、若者を中心に今では都会居住の一般市民でも知っている。

民主党のエスタブリッシュメントを激しく批判、温暖化阻止の具体策として「グリーン・ディール」を提唱。過激派リベラルと党内エスタブリッシュメントからは敬遠されたが、そのフレッシュさがメディアの注目を集めた。

2018年、初陣の予備選では党の古参議員を破って大金星。その勢いに乗って本選挙では共和党候補に完勝。一躍有名になった。

ちなみに、米国で名前をイニシアルで呼ばれる政治家はそう多くはいない。

例えば、JFK(ジョン・F・ケネディ第35代大統領)、LBJ(リンド・B・ジョンソン第36代大統領。古くはFDR(フランクリン・D・ルーズベルト第32代大統領)がいる。

毀誉褒貶が激しかったドナルド・トランプ大統領も次期大統領のジョー・バイデン氏もイニシアルで呼ばれてはいないし、これからも呼ばれることはないだろう。

カバーガールになったAOCは、プエルトリコ系の移民2世。父親は病死。母親はスクールバスの運転手をして娘を育てた。

レストランのウエイトレスやバーテンダーなどをしながら、名門ボストン大学で国際政治や経済学を学び、優等で卒業。在学中はテッド・ケネディ上院議員事務所でインターンとして外交政策や移民問題を学んだ。

卒業後、プエルトリコ系低所得層の青少年向けの教育・社会活動をする中で貧富の格差是正や富裕層向けの優遇税制撤廃などの必要性を痛感。

民主社会主義を標榜するバニー・サンダース上院議員に傾倒し、自らも民主社会主義者であることを公言。

2018年の下院選挙に無謀にも立候補して見事当選した*1。

2016年には黒人やソマリア系イスラム教徒の初当選議員3人で「有色人種女性若手4人組」を結成した。2020年下院選では4人全員、再選された。

*1=2018年の予備選では10期当選の現職議員、ジョセフ・クロウリー氏に4000票差で勝ち、本選挙では有効票数の78.2%を獲得して圧勝。2020年の本選挙でも15万票と71.6%をとって共和党候補を破っている。

「エリー」に次ぎ「ヴォーグ」に再起用

AOCに限らず、最近、雑誌のカバーガール(カバーモデル)に女性政治家を使う出版社が目立っている。

ファッション雑誌の「ヴォーグ」は2月号にカマラ・ハリス副大統領を起用する。ハリス氏はファッション雑誌「エリー」の1月号の表紙にも登場している。

https://www.vogue.com/article/kamala-harris-cover-february-2021

(2016年の大統領選の最中には「ヴォーグ」は、ヒラリー・クリントン民主党大統領候補をカバーに使い、同誌としては初めて特定の候補を正式に支持表明して話題になったことがある)

米雑誌が女性政治家をカバーに使うことについて業界関係者はこう解説している。

「ファッション誌はやはり女性読者層の政治への関心を意識せねばならないし、かといって70代、80代の高齢者は使えない」

「話題性があり、今後注目度が増しそうな若手や中年の女性政治家を使いたい。むろん美形でないとだめ。ハリス氏などを2大ファッション雑誌が起用したのはその表れ」

「『バニティフェア』はそれに加えて、AOCを徹底分析したベテラン・ジャーナリストの分析記事を載せることで、これまで過激派リベラルの跳ね上がりととらえられていたAOC再評価を試みている」

「『アレキサンドリア・オカシオ・コルテスという政治家は、自分は次に何をするかについて沈思黙考中。いずれ、自分を批判している人たちに挑戦状を叩きつけるに違いない』と書いている」

「彼女は、チャーミングだし、カリスマ性もあり、政治理念もしっかりしている。まだ若いし、未熟な面もあるが、磨けばダイヤモンドになる逸材。出版社はそこに目をつけたのだろう」

「政治的には中道派の『バニティフェア』がカバーガールに選んだことはAOCはもはや過激派跳ね上がりではないことを認めたようなものだ」

https://www.shethepeople.tv/news/kamala-harris-vogue-cover-american-female-politicians-cover-girls/

共和党大物議員にも臆せずツイート

AOCは再選後、派手な動きを見せている。

新型コロナウイルス感染が止まらぬ中、開発されたばかりのワクチンを早速打っている。バイデン次期大統領やナンシー・ペロシ下院議長らとほぼ前後してだ。

米市民の中には副作用を警戒してワクチンを受けたがらない者もいる。特に共和党支持者の中には多いとされている。

AOCとしては民主党の新しい指導者候補として名乗りを上げたのだろう。米議会史上、最悪の暴徒乱入事件直後にもAOCは動いている。

最後までトランプ大統領の「不正選挙・陰謀説」を支持してきた共和党の大物議員、リンゼイ・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出)に対し、こんなツイッターを送り付けている。

1回当選の民主党陣笠議員が(まだ)上院では多数党与党の重鎮に意見しているのだ。物怖じせぬAOCの面目躍如というべきか。

「セネター・グラハム、前に進みましょう。ゴー・フォワード」

むろん、「もうトランプ大統領を罷免するか、辞任させるか、だめなら弾劾手続きを始めるかして動きましょうよ」と上の句があることは言うまでもない。

2024年、民主党トップ追い落し目指す?

「バニティフェア」は、AOCが4年後、具体的に何をするのかについては予想するのは控えている。

ところがAOC自身、1月4日公開の政治ニュースサイト「パンチボウル」とのインタビューで2024年には下院から上院への鞍替えする意図があることをほのめかした。

「パンチボウル」は今年1月にスタートしたサイト。政治専門サイトの「ポリティコ」のベテラン・ジャーナリスト3人が立ち上げた。

AOCは、ニューヨーク州選出のチャック・シューマー民主党院内総務(70)*2の任期が切れる2024年の予備選に立候補するかもしれない、と示唆したのだ。

「私は何ももったいぶったりしているわけじゃありません。米議会をどうするか、政治プロセスをどう変えていくか、そのために自分はどうすべきかを今熟慮中なのです」

「温暖化問題、健康保険制度、賃金格差是正など国民が望んでいる懸案を解決するためにどんな効果的なことができるかを考えています」

https://thehill.com/homenews/senate/532501-ocasio-cortez-on-challenging-schumer-im-trying-to-decide-what-is-the-most

*2=下院議員9期ののち、上院に鞍替えして当選4回。2016年の上院選では得票総数の70.61%を獲得して圧勝している。2017年には引退したハリー・リード民主党院内総務の後釜に。ユダヤ系が連邦議会の院内総務に就任したのは同氏が初めて。

AOCは、そのためには党トップのシューマー氏にチャレンジするというわけだ。むろんシューマー氏が4年後には74歳になることも計算に入れているはずだ。

これまでの下院選でも「大物食い」を立証してきた「強運」のAOCだが、選挙では7割の票を独占してきたシューマー氏を倒せるのか。

一方、2024年には1期しかやらないとほのめかしてきたバイデン氏に代わってハリス副大統領が民主党候補として立候補するだろう。

ハリス氏もAOCも米政治の檜舞台に立つことは十分考えられる。

気づくのは、雑誌がカバーガールに起用する女性議員はみな民主党という点。しかも人種的にはAOCはプエルトリコ系、ハリス氏はインド系と黒人の混血。白人はいない。

今、政治学者の間で「Multiracial Democracy」(多民族民主主義)という政治用語が頻繁に使われ始めている。

建国以来続いてきた「白人民主主義」から非白人が影響力を与える民主主義への転換期を迎えたという意味合いで使われている。

現に2020年の大統領選挙では非白人票が勝敗を決めた州が多くあった。ジョージア州での上院補選はその好例だった。

何やら非白人のカバーガール2人の登場はそうした政治環境を投影しているようにも思える。

2人が大統領、上院議員になった暁には、「バニティフェア」(2020年12月号)や「ヴォーグ」(2021年2月号)にはプレミアがつくことは間違いないだろう。

高濱 賛

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