栄養失調、生活習慣病をなくせ! ベースフードが挑む主食革命

栄養失調、生活習慣病をなくせ! ベースフードが挑む主食革命

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/11/25
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発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「日本の起業家ランキング2022」で6位となったのは、ベースフードの橋本舜だ。

新たな食品ジャンルとして注目を浴びている完全栄養食の雄はどのように爆速成長を遂げたのか。

「炭水化物中心の主食を、栄養バランスがいい完全栄養食に変える」。こんなコンセプトを掲げて、年間販売食数を対前年比3.7倍に伸ばした商品がある。ベースフードのBASE FOODシリーズだ。2017年に、1食で1日に必要な栄養素の3分の1が取れるパスタ「BASE PASTA」のオンライン通販を開始した。19年にはパン、21年にはクッキーを展開し、シリーズの累計販売食数は1000万食を超えた。

この勢いをコロナ禍の特需ととらえる人もいるだろう。確かに、自宅で過ごす時間 や自炊の機会が増えるなか、手軽に栄養バランスを取りたい人たちのニーズにBASE FOODの商品特性やサブスク型のビジネスモデルがハマった感はある。しかし、代表取締役CEOの橋本舜は、この数字は想定していた通りだと言い切る。

「創業以来、どうすれば指数関数的に成長し続けられるかを常に考えてきました。この1年で何か特別なことをやったわけではないし、成長速度はずっと変わっていない」

もちろん、想定外もあった。コロナ禍で資金調達の環境が一時的に悪化し、「攻め」の戦略を取ることが難しくなった。19年に進出した米国市場からもいったん手を引いた。だがその分、顧客ニーズや広告のあり方、組織運営の見直しなどに注力した結果、「効率的に経営できる筋肉質な組織になった」という。

橋本の経営の根幹にあるのは、正しさへのこだわりと「カイゼン」だ。公式ホームページ経由の定期購買を中心にD2Cのビジネスを展開してきた理由はそこにある。

「正しいことを追い求め続けないと、お客様は継続して買ってくれない。組織が誠 実であり続けるための選択でした」

ベースフードでは「BASE FOOD Labo」という自社コミュニティサイトを運営している。そこでは登録会員を「研究員」と呼び、食を探究する仲間と位置づけている。21年10月時点で会員数は1万人超。顧客から拾い上げた声は新商品の開発や既存商品の改良に生かし、改善点は毎月「カイゼン報告」として公開している。

「創業以来一度も売り上げが停滞していないのは、直販を通じてお客様の声を拾い、『より正しい商品にできないか』を常に考えてきたからだと思います」

世界の人々の健康状態の改善へ
いまでこそ食の業界で注目を浴びる橋本だが、起業するまで食品業界とは無縁だった。東京大学を卒業後、新卒でDeNAに入社。オンラインゲームに始まり、駐車場のシェアリングサービス「akippa」や自動運転関連など、約4年半で複数の新規事業の立ち上げに携わった。

「知っていることをやったことは1回もないんです。akippaのときは車の運転の練習から始めましたし、AIもゼロから勉強しました。それでも、どの事業もうまくいった」

16年にDeNAを辞めて独立したときも、食品製造の知識や業界内のコネはほぼゼロだった。完全栄養食の主食をつくると決めてはいたものの、何をもって「完全栄養」とすればいいのかもわからない。そこで、まずは栄養士の資格をもつ友人に連絡し、1日に必要な栄養素と算出方法を聞くところから始めた。エクセルで栄養バランス管理シートを自作し、必要な栄養価を満たす食材の組み合わせをシミュレーションした。

「最初のパスタはココア、モロヘイヤ、唐辛子、煮干しなどを組み合わせてつくりました。苦くて、めちゃくちゃまずかった」

試さなくてもまずいとわかりそうなものだが、ひとまずかたちにしてからカイゼンを繰り返すのが橋本流なのだろう。

麺職人のような日々を過ごす傍ら、知り合いのツテをたどって食品会社の社員や料理人、学者など50人以上に話を聞いて回った。これが思った以上に役立ったという。

「食品業界は人材の流動性が高くないので、ほかの会社や業界のことをよく知らない人が多い。分野横断型で情報を集められたことは大きな強みになりました」

ちなみに、このころの社員は橋本ただ一人だった。採用したくても、人を巻き込む決断ができなかったのだ。「『栄養バランスがいいパスタです』と言っても投資家に理解してもらえず、先が見えない時期だったので誰にも声をかけられませんでした」。

知名度も実績もない。だが、「1食に必要な栄養素をすべて含んだパスタ」へのネット上の反応はすさまじかった。16年10月にクラウドファンディングで開発資金を募ったところ、223人から総額約110万円が集まった。17年2月にはAmazonの食品カテゴリーで人気度ランキング1位を獲得。市場が好反応を示せば投資家も動く。20年には約4億円の資金を調達した。

累計販売食数が1000万食を突破したいま、「世界初の商品ジャンルでゼロイチをやり切り、限界をぶち壊した。イチを10にも100にもできるという自信がある」と橋本は言う。その先に見据えるのは、グローバルスタートアップとしての地位の確立と、世界の人々の健康状態の改善だ。

「主食の栄養バランスがよくなって、栄養失調や先進国の生活習慣病を一掃できたら歴史に名を残せる」

そう意気込む橋本だが、取材の終盤にポツリとこう呟いた。

「会社が大きくなっても、僕個人は普通の人間でいたいんですよね」

歴史に名を残したい。でも普通でいたい。このアンビバレントな感覚が、地道にカイゼンを続けながら食の「普通」を変えていく力の源泉なのかもしれない。

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