「ジョブ型雇用」では臨機応変に対応できるチーム作りは難しい?

「ジョブ型雇用」では臨機応変に対応できるチーム作りは難しい?

  • @DIME
  • 更新日:2022/06/23

■連載/あるあるビジネス処方箋

前回から3回にわけて、「ジョブ型雇用」をテーマにメガベンチャー企業のメンバーズ(東京都中央区、社員数約1,800人、2022年3月時点)の人事担当役員・高野明彦氏にインタビュー取材を試みる。メンバーズは、主に企業のデジタルマーケティングを支援する。

前回(1回目)「メンバーズの人事担当役員にジョブ型雇用は本当に浸透するのか聞いてみた」はこちら。

ジョブ型雇用は、欧米企業でよく見かける。欧米企業は日本企業よりは、社員や従業員が担当する職務の内容や範囲、報酬(賃金)が明確で、厳格と言われる。採用の現場では、企業側と雇われる側との間で、職務の内容、範囲、賃金などが詳細に書かれたディスクリプション(職務記述書)を交わし、合意となる。

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高野明彦(たかの あきひこ)氏
株式会社メンバーズ取締役 兼 専務執行役員。1999年一橋大学卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。新生銀行を経て、2005年メンバーズ入社。2006年11月の株式公開を始めとし、リーマンショック後の全社変革プロジェクト、人事制度改革、中期経営計画の策定・実行、ミッション・ビジョンの策定・浸透プロジェクト、働き方改革、東証一部上場など全社的な重要プロジェクトの推進を数多く担う。2011年執行役員、2016年常務執行役員、2018年に取締役就任。

その場の状況で臨機応変に対応できるチーム作りとジョブ型雇用はマッチしにくい?

Q.採用時に担当する職務についてできるだけくわしい内容を決めるディスクリプション(職務記述書)の思想は、現在の一部の日本企業にはマッチする気がします。そのあたりは、いかがでしょうか。

高野:私たちもMBO(目標による管理)の一環として、それぞれの社員が担当する仕事の内容、ミッションなどのいわゆる職務内容は上司などとの話し合いできちんと決めています。

ただし、欧米企業のディスクリプションを作成はしません。業績が拡大していますから、各自が関わるプロジェクトや職務が随時変わります。成長が鈍化している企業よりははるかに速いスピードだと思います。

私は銀行に勤務していましたから、ある程度イメージができますが、例えば大手の金融機関ならばひとつの部署のミッションや業務内容は5年間変わらないことがありうるでしょう。こういうところならば、欧米企業のような詳細な職務記述書を作れるのかもしれません。

もう1つ言えることがあります。ディスクリプションに書かれたことだけを基本的にしていく人たちの集まりと、その場の状況に応じて臨機応変に対応していくチームがあるとします。どちらが、私たちの経営風土や成長などにマッチし、機能するか、より大きな効果を発揮できるかと言えば、私は後者だと思います。

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Q、在宅勤務が増えたこの2年間でジョブ型雇用を採用する大企業は、一気に増えているように思います。その動きの背景をどのように捉えますか?

高野:そのような大企業の中には、事業構造のリストラクチャリング策の1つとしてジョブ型雇用を考えている企業があるように思います。少子化やグローバル化が進む中、多くの大企業は業績が伸び悩む傾向にあります。

最近は新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、 DX (デジタルトランスフォーメーション)が浸透し、経営環境が大きく変わりつつあります。経営層は自社の人材ポートフォリオや人事制度がDXやグローバルな事業展開に求められるものとマッチしていない状況にどのように対応するべきか、と苦慮していると思います。

日本企業の多くが採用する職能資格制度では、通常は年功を重ねて一定の評価のもと、等級が上がり、給与が増えていきます。ジョブ型雇用にすると、各職務にあらかじめ決まっている賃金を支払うわけですから、ジョブ型の制度を導入した企業においては中高年の賃金を相対的に下げることが狙いだと捉えられているのではないでしょうか。年功や等級ではなく、職務やポジションで決まっている額を支給するのですから、確かに合法的に下げることはできるようになるのかもしれません。

一方ではジョブ型雇用を導入した大手企業において、同時に早期退職で特に中高年の社員の人員削減をしようとしているケースも見受けられます。捉え方によっては、ジョブ型雇用と早期退職制度はセットになっているともいえるのかもしれないと思います。

これらは単にコストカット、人員削減のためのリストラというよりは、極めて合理的な事業構造のリストラクチャリングを行っていると私は理解しています。さらに言えば、今後は従来の新卒一括大量採用から中途採用を積極的に行い、DXの時代に必要な人材や外国人の採用に重きを置くはずです。その方向に進んでいこうとする時に、例えば前述の年功序列的な職能資格制度は壁になっているのだろうと思います。職能資格制度は優れた面も過去にはあったのですが、現在は様々な課題の原因になっているのだろうと考えています。

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Q、特に正社員数が300人以下で、新卒や中途の採用力が大企業やメガベンチャー企業に比べて見劣りするベンチャー企業にもジョブ型雇用を導入する動きがありますね。

高野:それらの企業は、かねてから中途採用に重きを置いてきたケースが多いと思います。通常、中途採用はあらかじめ、こういう職務を担当してもらうといった考えで行っているはずです。その意味では、以前からことさらそのような言い方はしなくてもジョブ型採用に近い採用をしていたと言えるのではないでしょうか。弊社も同様です。ジョブ型雇用制度としてのジョブスクリプションや報酬の明確な紐づけがあるか否かは、各企業で異なるでしょうし、ない方が多いと思いますが。そこに世の中でジョブ型雇用という新しい潮流のようなワードが普及してきたので、呼び方として乗っかっただけではないでしょうか。

新卒採用でジョブ型雇用を前面に打ち出すと、差別化を図ることができると考えているケースもあるのかもしれません。私は、ジョブ型雇用と新卒採用はあまりマッチしないと捉えています。基本的にはジョブ型雇用は新卒者を雇い、定着させ、育成していく思想とは別物だと思います。私たちの会社は新卒採用したクリエイター人材を様々にローテーションさせながら長期的に育成することに重きを置きますから、相性が良くないと思っています。

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次回に続く

文/吉田典史

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