どうなる「通勤手当」テレワーク化で起きる大変化

どうなる「通勤手当」テレワーク化で起きる大変化

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2021/09/15
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テレワークの普及に伴い、通勤手当の支給方法が変更になった社会人も多いのでは。給与にも影響する通勤手当の最新事情を紹介(写真:CORA/PIXTA)

コロナ禍で働き方が大きく変わり、場所と時間にとらわれない働き方が当たり前になってきています。もはや、満員電車で押しつぶされながら通勤していた頃には戻れないくらい、ウィズコロナの状況が続いていますが、そんな中、通勤を前提として会社から労働者に支給されていた通勤手当が見直されています。

そこで、今回は、労働者にとって意外に影響が大きい通勤手当について解説します。

通勤手当について見直してみよう

1. 通勤手当の支払いは義務ではない

多くの労働者にとって、会社から当たり前のように支給されている通勤手当。そもそも、通勤手当について、労働基準法ではどのような扱いになっているかというと、実は何も規定されていません。つまり、通勤手当は、労働基準法上、会社に支払いが義務づけられているものではなく、支給するかどうかはあくまでも会社の裁量なのです。

とはいえ、どこの会社も通勤手当を当たり前のように支給しており、そんな中で、通勤手当を支給しなければ優秀な人材を採用できないこともあり、多くの会社で支給しているのが実状です。

この通勤手当ですが、会社のルールブックである就業規則に支給のルールを定めた場合は、労働基準法上の「賃金」に該当することになります。つまり、就業規則のルールに従って労働者に支給することが労働契約上義務づけられ、会社と労働者との労働契約内容となるため、むやみに変更されることは許されなくなります。

2.テレワーク勤務で変化する通勤手当の取り扱い

在宅勤務をはじめとしたテレワークの普及により、通勤手当の取り扱いが変わってきています。具体的には、フル在宅勤務となり、原則出勤がないような場合は通勤手当が廃止されたり、在宅勤務と出勤を業務の都合により組み合わせている場合は、出社の頻度によって、定期代または交通費の実費相当分の低いほうを支給する、あるいは定期代は支給せずにつねに交通費の実費相当分を支給するといった取り扱いに変わってきています。

ただ、よく考えれば、今まで通勤手当として定期代が支給されていたのに、それが支給されなくなったり、定期代に代わって、交通費の実費相当分だけ支給されるのは、賃金が減らされることになるので、ふと疑問に思った方もいるかもしれません。

会社の就業規則を確認しよう

これについては、通勤手当のルールが自社の就業規則でどのように規定されているかによって異なってきます。一般的に就業規則では「通勤手当は通勤に要する費用として支給する」と定められているケースが多いです。そのため、実際に通勤していなければ、労働者はそもそも費用を負担していないわけで、実際にかかった交通費分だけを支給しても問題ないわけです。

一方、就業規則では、単に「通勤手当として、定期代を支払う」とだけ記載されているような場合は「通勤に要する費用」と記載されていないことから、通勤の有無にかかわらず支給されるものと解釈もできるため、説明もなく定期代が支給されなくなれば問題です。いずれにしても、通勤手当は、自社の就業規則のルールに基づき、支給されるものになるので、自社の就業規則をきちんと確認しておくことが大事です。

3.損をしないように、出社は計画的に

在宅勤務と出社を業務の都合により組み合わせている会社では、通勤手当の支給方法を出社の頻度に応じて、定期代と実費相当分の低いほうを支給しているケースがあります。つまり、前月1カ月の出社状況を確認し、出社が多く実費分より定期代のほうが安い場合は定期代を支給し、反対に出社が少なく実費分を支払ったほうが安ければ実費相当分を支給するやり方です。

出社の予定や日数を確認しよう

例えば、千葉から東京にJRで通勤している場合で、7月に出社した日が17日あったケースですと、通勤にかかった実費は1日1300円であるため、1300円×17日=2万2100円。一方、1カ月定期ですと1万9430円になるので、会社からは通勤手当として定期代の19430円が8月に支給されることになります。つまり、このケースだと事前に定期を買っていなければ2670円損することになってしまいます。そのため、この支給の方法ですと、前月の出勤の状況を踏まえて、単に金額が低いほうが支給されるため、本人が事前に定期を購入しているかどうかは考慮してくれません。そのため、出社の予定を計画し、それを踏まえて定期を購入するかを判断し、その後計画どおりに出社しなければ、損してしまうこともありえます。

なかなか、出社の頻度をコントロールするのが難しい方もいると思いますが、とくに遠方の方はご注意ください。なお、1カ月定期の場合は、JR東日本ですと、月におおむね15日以上出勤すれば定期を購入したほうがお得になるようです。鉄道各社によって、損益分岐ラインが異なるので、その点あらかじめ確認しておいたほうがいいでしょう。

4.通勤手当が減ると手取りが増える?

通勤手当の金額が変われば、社会保険にも影響が出てきます。実は、社会保険料や将来の年金額等を計算する際に使う「標準報酬月額」(なお、「標準報酬月額」の詳細は過去記事『給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!』をご覧ください)には通勤手当も含まれています。そのため、通勤手当が減ればその分「標準報酬月額」が低くなる可能性があります。

保険料や年金への影響もチェック

例えば、月給で基本給等が28万円、通勤手当が毎月2万円とされており、標準報酬月額が30万円だった場合。4月、5月、6月はほとんど在宅勤務だったので、基本給等は変わらず28万円だが、通勤手当が各月1000円だったとします。その場合、標準報酬月額の等級が1つ下がり28万円になり、10月から翌9月までは、標準報酬月額が28万円として計算されます。

ちなみに、標準報酬月額が30万円から28万円に下がった場合は、健康保険料が1万4760円-1万3776円=▲984円(協会けんぽ東京支部R3年度)。厚生年金保険料が2万7450円-2万5620円=▲1830円になるので、社会保険料は合計で月2814円安くなり、結果的に毎月の手取りが増えることになります。

なお、標準報酬月額は、通常毎年1回、4月から6月に支払われる給与で計算され、10月分から見直されます。したがって、基本給等に原則変更がなければ、通勤手当の金額によって毎月変動するわけではないのでご注意ください。ちなみに、標準報酬月額が下がれば、病気で休職中に支給される傷病手当金、産前産後休業期間中に支給される出産手当金や将来の年金等はその分、少なくなることになります。

(武澤 健太郎:大槻経営労務管理事務所社員役員、特定社会保険労務士)

武澤 健太郎

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