QuizKnock 河村拓哉・須貝駿貴が語る「東大生が読んできた本」

QuizKnock 河村拓哉・須貝駿貴が語る「東大生が読んできた本」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2023/03/19
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東大発の知識集団QuizKnockの河村拓哉さん、須貝駿貴さんと、いま話題のミステリー小説『爆弾』が奇跡のコラボ。ミステリランキングのW受賞の上、本屋大賞にノミネートされた『爆弾』。「クイズ」の最先端で活躍する二人は、「クイズ」が爆弾の在り処を突き止める鍵となる『爆弾』をどう読み解いたのか。さらに、お二人の読書体験を交えながら、クイズとミステリー小説に共通する、謎解きの楽しみについても語っていただきました。お二人の読書体験には意外なものも!? ファン必読のインタビュー記事を特別公開!

前編では二人が幼少期から読んできた本や、QuizKnockの活動に役立つ本について語っていただきます。

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QuizKnock 河村拓哉さん

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QuizKnock 須貝駿貴さん

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※本インタビューは「小説現代2022年3月号」掲載の記事を再編集したものです。

QuizKnockの二人は本を読むのか

──先日、宇佐見りんさん『推し、燃ゆ』の読書会の配信をされていましたよね。お二人は普段から本を読まれているのですか?

河村 実はそんなに量は読めていないんです。だけど、色々な本を読みたいな、と思い、まずは読書を楽しめることを意識して、読書会をやっています。

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須貝 バトルもののライトノベルをよく読みます。「魔法科高校の劣等生」シリーズが大好きですね。『爆弾』のようなエンタメ小説は年に数冊読む程度です。

──河村さんはtreeで「河村拓哉の推し・文芸」(※1)という書評連載をされていました。そこで取り上げる本はジャンルが多岐にわたっていましたが、どういうジャンルの本が好きですか?

河村 ジャンルは意識的に気にしないようにしています。小説を読むことは、新しい世界に触れることなので、自分の知っている範囲のものに縛られるよりも、友達が面白いと言っていた作品を読む方が発見があります。クイズでタイトルだけ知っている作品も手に取ることが多いです。出題者が数ある作品の中から選んだということは、解答者に「これは知っていて損のないものだよ」とお勧めしてくれているのかな、と。『コンビニ人間』や『プラナリア』は、まさにクイズで知った本です。

幼いころに好きだった本

──幼い頃に比べて、好きな作品は変わりましたか?

須貝 幼い頃から好みは変わっていないですね。小さい頃から「ハリー・ポッター」や「ダレン・シャン」、「デルトラ・クエスト」などのファンタジー作品が大好きでした。ラノベを読むようになったのは高校生からで、最初に読んだのは『涼宮ハルヒの憂鬱』……いや、『灼眼のシャナ』だったかもしれません。

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その頃は特にバトルものだけではなく恋愛ものも読んでいましたが、24歳を過ぎたら突然恋愛ものが読めなくなりました。恋愛している二人を見ると、「何をやっとんねん、戦え!」と思うようになってしまって(笑)。

河村 小学生の頃にミステリーを貪るように読んでいました。森博嗣さんや京極夏彦さんの作品が好きで、いわゆる「児童書」にはあまり興味を持っていなかったですね。中学生になるとライトノベルに興味が出てきて、須貝さんと同じく『灼眼のシャナ』から入りました。

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──『灼眼のシャナ』とミステリーとはかなり雰囲気が違いますが、手に取ったきっかけは覚えていらっしゃいますか?

河村 当時インターネット上に、私淑している雑学サイトの運営者の方がいまして。「トリビアの泉」(※2)が好きな子供だったので、お気に入りのブログでした。その中の『灼眼のシャナ』を読みました、というエントリーを目にしたのがきっかけですね。

大学に入ってからは、夏目漱石や太宰治のような広く読まれている作品を読まなければならない、という教養への焦りが出てきたので、いわゆる文学を読み漁りもしました。

理系が愛した小説

──お二人とも専門が理系ですが、理系だからこそ小説のこの部分が楽しめた! という体験はありますか?

須貝 喜多喜久さんの「化学探偵Mr.キュリー」シリーズは、理系ならではの気持ちがわかるので実感を持って読めますね。たとえば「全合成をするのは極めて困難だ」というエピソードが出てくると、まさに今実験で友達が苦しんでいるなあ、と思い出していました。『桐島教授の研究報告書』や『死香探偵』など、喜多さんの作品はよく読んでいます。

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大好きなラノベの話をすると、『魔法科高校の劣等生』では「魔法は科学だ」と語られています。ある時、魔法の発動プロセスについて主人公が説明しているシーンを読んでいて、もしかしてこの世界観はプログラミングがベースになっているのかな?と気づくことができました。もちろん、どの作品も理系の知識がなくても楽しく読めますが、作品の見え方の深度は異なるのかもしれません。

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河村 理系だから小説に対する見方が変わる、という実感はあまりないですが、作品を隅々まで理解できるのはお得だな、と思います。例を挙げるとすると、『容疑者Xの献身』で石神というキャラクターが壁や天井の染みを眺めて四色問題を検証するというシーンでしょうか。僕は「四色問題は解けたもんじゃない」という知識だけは持っているので、これは石神なりの暇つぶしのパズルなのか、と空気感を摑むことができる。『吾輩は猫である』で物理の話が出るシーンでも突っかからずに読める。

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──では、理系だからこそ、作品内の間違いに気がつくこともありますか?

須貝 ある映画の鍵となるシーンで、銀の弾丸が磁場との干渉によって減衰せずに飛ぶというネタには少し疑問でしたね(笑)。

河村 僕も間違っているな、と気づくことはありますが、がっかりしたり、怒ることはありません。きっとその間違いは物語として必要なことなんだ、と思います。たとえばある未確認生物が出てくる物語では、そういう生物が現実に存在していることにしなくてはならない。物語の共通前提さえ飲み込めてしまえば、あとはただ楽しむだけです!

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QuizKnockにとって役立つ本は?

──QuizKnockの活動で、役立っている本はありますか?

河村 一番役立っているのは辞書ですね。

須貝 そうか、辞書も本だよな。繰る頻度は高いよね。

河村 調べものではなく、何かネタがないかな、と探すときに辞書をパラパラめくることが多いですね。

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須貝 僕は『なぜ科学はストーリーを必要としているのか』という本ですね。簡単に言うと、科学を伝えるのにもストーリーは大切だ、という本。ストーリーというのは小説的なことではなく、なぜ知ろうとしているのか、という歴史や背景のことです。そういうのを含めて伝えることで、初めて人はその話を聞こうと思ってくれる。そこは活動にも役立っていますね。

河村 先日、役立てようと思って『日本語の作文技術』という本を買いました。他にも神話の入門書などをとりあえず購入しておくことがあります。

須貝 神話の本は確かに面白そうだな。ラノベやカードゲームのキャラクターの元ネタがたくさん出てきそう。河村さんは本や小説を読めば読むほど、色々なことへのタッチポイントが増えているから読むジャンルが多岐にわたっているんだろうな。僕はラノベか喜多喜久さんか専門書しか読んでいない生活でした。

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──専門書でおすすめを一冊挙げるとしたら、何がありますか?

須貝 僕と同じ、物性物理を学んでいる人には通称「フェッター・ワレッカ」(※3)という本ですかね。翻訳もされていない緑色の専門書です。これに限らず、大学生は専門書を読んだ方がいいですよ。誰もが読めるものではないので、それを読み切ったとしたら、日本でもごく限られた人になる。大学の専門分野ってそういうことかなと思います。小説とは違う意味で、話の種にもなりますし。

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◇対談後編「『爆弾』のクイズは?QuizKnock 河村拓哉・須貝駿貴が語るクイズとミステリー」では「クイズを解く」ことがミステリーのカギともなる『爆弾』をどのように読んだのか、ふたりが好きなミステリー小説はなにかなどミステリー小説とクイズの交差点について深く伺っていく。

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爆弾』呉 勝浩
微罪で逮捕された男が、秋葉原の廃ビルで起きた爆発を“予言”した。あと二度あるという爆発を止めようと詰め寄る刑事。だが、男は巧みな話術でその正体すら掴ませない。そんな中、男が口にしたのは四年前に自殺した刑事の名前。警察が目を背けてきたそれが、事件を紐解く鍵か。タイムリミットが次々迫る中で巻き起こる、男と警察の頭脳戦。息をもつかせぬノンストップ・ミステリー!

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High School Quiz Battle WHAT 2022 公式問題集
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後編「『爆弾』のクイズは?QuizKnock 河村拓哉・須貝駿貴が語るクイズとミステリー」はこちら

(註)
※1 河村 拓哉による初の書評連載
※2 2012年に放送終了した雑学バラエティ番組(フジテレビ系列)
※3 Alexander L. Fetter, and John Dirk Walecka, Quantum Theory of Many-Particle Systems, New York, Dover Publications, 2003.

[アートディレクション]高倉健太(GLYPH Inc.)
[カメラマン]瀬田秀行
[ヘアメイク]藤原 萌
[スタイリスト]柴田 圭(辻事務所)
[衣装協力]AKM

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