大谷なるか 夢の60本超えキング 大リーグ偏愛50年・福島良一も驚嘆

大谷なるか 夢の60本超えキング 大リーグ偏愛50年・福島良一も驚嘆

  • AERA dot.
  • 更新日:2021/07/22
No image

球宴前日のホームラン競争に参加した大谷(Getty Images)

打って、投げて、ほほ笑んで。世界最高峰の舞台で、これほどの偉業を軽々と楽しげにやってのけ、みんなに愛されたプレーヤーがかつていただろうか。後半戦に入っても34号本塁打を放つなど好調をキープし、異次元の活躍を続ける「2021年の大谷翔平」のすごさを、大リーグ評論家の福島良一さん(64)に語ってもらった。

【大谷選手の写真をもっと見る】

オールスターゲームのホームラン競争は1回戦で敗退しましたが、大谷選手は500フィート(約152メートル)超えが6本で史上最多。打球速度の平均は110.9マイル(約178.5キロ)で、出場8選手の中で最速でした。史上初めて「二刀流」としてスタメン出場した本番は、先発して最速100.2マイル(約161.3キロ)をマーク。打撃は残念な結果に終わりましたが、総合的にはじゅうぶん「歴史を作った」と言えます。

〈興奮冷めやらぬ様子で振り返る福島さんが、大リーグのとりこになったのは1968年。小学6年生のときだ。日米野球で来日したカージナルスと全日本の試合を後楽園球場で観戦し、華やかなアメリカン野球に魅せられた。高校2年のとき、父親に連れられ73年のオールスターゲームを本場で初めて見て以来、毎年のように渡米して大リーグ観戦を続けてきた〉

73年にオールスターゲームの観戦ツアーというのがありまして、そこに大リーグ通だったパンチョ伊東さん(伊東一雄、元パ・リーグ広報部長)が同行する予定だったんですけども、催行人員に達しなくて中止になったんです。でもどうしても見に行きたくて旅行会社の担当者にお願いをしたら、伊東さんが貴重なオースルターの切符を手配してくださって、父親と2人で見ることができたんです。ゲームが行われたのは北米大陸のど真ん中、カンザスシティーでその年開場したばかりの超近代的なロイヤルズ・スタジアム(現カウフマン・スタジアム)。本当に別世界でした。

まさか、こんな時代が来るとは夢にも思いませんでした。野茂で驚き、イチローでさらに驚いた。でも大谷ほどの、これほどの大きなスケールの驚きはないし、今後二度とないんじゃないかと思うぐらいです。

アメリカ野球の歴史を振り返るとき、20世紀最大のヒーローが二刀流の先駆者であり、20世紀を代表するホームランバッターでもあったベーブ・ルースです。大谷選手が比較されるのはまさにそのベーブ・ルースで、その間、100年もの時間が流れている。

イチローも100年前の歴史を掘り起こす記録を作ってきましたけど、ヒットとホームランの違いがあります。アメリカ野球の華は、やっぱりホームランなんです。ルースと比較されるのが日本人だというのが今も信じられません。松井秀喜の引退後、日本人のパワーヒッターで成功する人はもう出ないと思ったんですけども、いや、まるでスケールが違いますね。

ルースはまさしく子供たちのあこがれの的でした。同じように大谷選手も好青年で、みんなから愛されている。本当に理想的な選手といっていい。ルースの二刀流の全盛期は1918、19年、レッドソックスに在籍していたころでした。当時はほかにも二刀流選手が何人かいました。まだ選手の数が少なく、それほど競争がなかったからだと思います。

球団数が増え、分業化が飛躍的に進んだ現代野球において、二刀流を実現させている。まさに偉業というほかなく、「21世紀最大のハイライト」といってもいいかもしれません。こういったことができるのは、おそらく大谷選手しかいない。「大谷を超えるのは大谷しかいない」ということです。

今後、二刀流を目指す選手は出てくるでしょうけども、世界最高峰のリーグで大谷選手と同じレベルで成し遂げる選手は、まず出てこないでしょう。21世紀はまだ5分の1しか終わってませんが、確実に21世紀最大のヒーロー、最高のメジャーリーガーの一人だと思います。

ここまでの活躍は正直想像できませんでした。せいぜい、去年までのように一週間に1回先発登板して、その前後の日は休んで、それ以外の限られた日にバッターとして出場することを予想しましたけども、今年は休みなしのフル回転です。今のところけががなく、健康管理がしっかりできているのが大きい。

あと去年と違うのは打撃のパワーです。爆発的なパワーと打球速度、距離を生み出すテクニックを身につけた。ホームランを生み出すための打球の角度を意識した打法、独特のアッパースイングですね。今のはやりです。ただ、二刀流でこれだけの活躍をもう何年も続けるとは想像しにくい。27歳と、年齢的にも今が一番いいときだと思います。

もし、大谷選手が花巻東から直接、海を渡っていたら100%、ピッチャーかバッターのどちらかに振り分けられていたはずです。日本ハム以外の日本のプロ野球チームに入団していても、おそらくそうなっていたでしょう。その意味では、大谷選手の二刀流を認めた日本ハム球団の育成方針があったからこそ、今の大谷選手の活躍があると断言していいと思います。個人的には、当初はいずれピッチャーに専念すると思いましたが、バッターとしてこれほどの成績を残すと、当然、人気面も考えて、いずれ大谷選手はバッターに専念することになるでしょう。

後半戦の見どころですか? それはもう日本人初のホームラン王です。大谷選手は前半戦で両リーグトップを独走する33本。年間60本ペースです。過去に60本以上打った打者は5人いますが、うち3人(ボンズ、マグワイア、ソーサ)は、後に禁止薬物の使用が指摘された疑惑付きの記録でした。残る2人がルースと、61年に61本を打ったロジャー・マリスという選手です。

ルースの記録は二刀流時代ではありません。20年にレッドソックスからヤンキースに移籍したルースは打者に専念してホームランを量産し始め、27年に前人未到だった60本のホームランを打ちました。大谷選手が二刀流をやりながらルースを抜けば、完全にルースを超えたと言っていいでしょう。今から楽しみです。(構成 本誌・佐藤秀男)

ふくしま・よしかず 1956年生まれ。中央大学時代に「アメリカ野球愛好会」を結成。卒業後は旅行会社に勤めながら評論活動を始める。著書に「大リーグ物語」(講談社現代新書)など

※週刊朝日  2021年7月30日号に加筆

佐藤秀男

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加