11代目シビック、乗ってわかった319万円超の価値

11代目シビック、乗ってわかった319万円超の価値

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2021/10/14
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11代目となった新型シビックの真価を探る(筆者撮影)

新型シビックの販売が好調な滑り出しだ。発売から1カ月を経て3000台を超える受注を獲得し、月間販売計画台数の3倍以上となる立ち上がりとなった。11代目となった新型の市場反応はどうなのか? 広報部に取材してみた。

「シビックという車名に愛着のある、50代のお客様から指名買いをいただくとともに、20~30代の若い世代のお客様や、これまで輸入車にお乗りのお客様からもご好評をいただいております。若い世代のご購入では、残価設定ローンをご利用いただくケースが多いです。2グレード構成(EXとLX)での販売ですが、上位グレード(EX)の販売が好調(78.4%)です。残価設定ローンをご利用いただくと月払い額がEXの4万4100円に対し、LXが3万9800円とわずか4300円の差に収まる(Honda Web上の「セルフ見積り結果」で試算。条件により価格は異なる)ため、より装備の充実したEXグレードをご選択いただけているのかと思います」。

ベースグレード319万円は高い? 安い?

一方、「車両価格が高いのではないか?」との声も聞かれる。確かに300万円前半(ベースグレード「LX」/319万円)の車両本体価格はこの御時世、安くはない。

先行発売している北米市場では装備を簡略化した安価なグレードがあるものの、日本仕様は標準装備の数が多い。よって、それらを合わせれば帳尻は合ってくるので、市場ごとの違いではなさそうだ。

では、ホンダのコンパクトカー「フィット」(1.3Lガソリンモデル「LUXE」/207万6800円)との比較ではどうか? いささか乱暴な比較だが、上記の前提グレード同士による単純比較では、新型シビックはフィットよりも111万3200円高い。車格が1~1.5クラス違うので「至極真っ当」というご意見はごもっとも。

パワートレーンでは、新型シビックの1.5Lターボエンジンに対してフィットはターボチャージャーの付かない1.3Lエンジンと異なる。パワートレーンの単体価格は公にはなっていないので、ここではわかりやすく次のように考えた。

ターボチャージャー追加によるエンジン強化や専用ECUの開発、インタークーラーなど補機類の追加、さらにはホイールやブレーキの大径化や足回り強化など機能を向上させるコストを「ターボ」代とした。

それらを踏まえたターボ代は、ズバリ40万円程度になると試算した。ちなみにフィットのガソリンモデル「BASIC」と、シリーズハイブリッドモデルの「e:HEV BASIC」では44万円の差額がある。

ここまでの結果、単純計算だが、111万3200円-40万円の71万3200円、新型シビックが高いことになる。

さらに、新型シビックとフィットの装備内容を近づけるため、フィットにメーカーオプションのHonda CONNECTディスプレイなどのメーカーオプションやディーラーオプションを加えてみた結果、28万6000円(工賃を除く)その差が縮まった。これでフィットとの差額は概算で42万7200円だ。ここまで、筆者考案のターボ代を除き、車両本体価格やオプション装備価格の比較はHonda Web上の「セルフ見積り結果」で試算している。

そこから、新型シビックには装備されていても、フィットには設定がない装備を考慮した。たとえば、昨今の注目装備である先進安全技術だ。

フィットは検知範囲5mほどの超音波ソナーを車体の前後左右に計8カ所を装備にする。対するシビックはフィットと同じ8カ所に加えて、検知範囲25mのミリ波レーダーを車体後部の左右にそれぞれ装備する。

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(写真:ホンダ)

これにより新型シビックには、自車後方からの接近車両を音と光でドライバーに教える「ブラインドスポット」機能や、後退出庫時に左右の車両の存在を音とナビ画面で知らせる「後退出庫サポート」機能が標準で装備され、注意喚起力が高められている。

上記のミリ波レーダー×2個に加えて、そもそも新型シビックのボディ構造には上位技術がたくさん使われ衝撃吸収力が高く、走行性能も大きく秀でる。そこにボディ大型化分の鋼板代、サスペンションの構造違い、剛性の高い各部品の使用、専用設計のHMIやインターフェース、ワンサイズ以上大きな前後のシート、各部の素材変更などを考慮すると、概算で42万7200円あった2車の価格差は縮まるどころか、大きく逆転する。

欲しい装備を入れていくと意外に高くなることも

つまり、車両本体価格のうえで新型シビックは高いと思われるものの、市場ごとの違い、そして性能差を勘案し装備類を整えたフィットとの比較で得られた結果を考慮すれば、日本市場における新型シビックの価格設定は、現ホンダのラインナップで考えれば順当な結果だ。

また、マツダ「MAZDA3」のハッチバックモデルにもいえることだが、欲しい装備、たとえばカーナビゲーション(新型シビックは標準装備)や、追加の先進安全技術など高価な装備を見積もり段階で選択していくと、同クラスの低価格な競合車との「車両本体価格上の差」は自ずと縮まってくる。

こうした装備を巡る価格のからくりは、昭和30年代の国民車構想の時代から自動車業界に存在し、それが各社の競争ポイントだった。

しかし、低迷した景気がここまで続くと、真っ先にカタログを飾る車両本体価格に目が奪われがちになる。いずれにしろ、新型シビックに興味をお持ちであれば、ぜひとも欲しい装備を吟味したうえで、競合車との比較を行っていただきたい。

ところでホンダは過去50年にわたり、人を守る先進安全技術の開発に積極的だ。1971年にはエアバッグの研究を開始するとともに、現在のHonda SENSINGにつながるレーダーセンサー技術の開発もスタートさせている。

そして2021年3月には、自動運転と公式に、かつ世界で名乗れる「自動化レベル3」技術を含むHonda SENSING Eliteを同社のフラッグシップセダン「レジェンド」に搭載して発売した。

このニュースは世界の自動車メーカー担当者を驚かせた。同時に、レベル3を実装(市販車へ装備)する目的を、「交通事故ゼロ社会と、すべての人への移動の自由を実現するきっかけになる」と定義し、ホンダは長い時間を費やし全力で国のあらゆる機関に働きかけた。

交渉と調整の結果、道路交通法や道路運送車両法など法律が改正され、金融庁管轄である保険制度も整えられてレベル3の販売が可能となり、公道で使用できることになったのだ。

新型シビックにはレベル3の自動運転技術は搭載されないが、新型シビックが標準装備する運転支援技術「Honda SENSING」は大幅に機能を向上させた。

ベテランドライバーが運転するかのように追従制御

ホンダ各モデルにはHonda SENSINGが搭載されるが、新型シビックでは光学式単眼カメラセンサーからの情報を、従来のHonda SENSINGよりもきめ細かく分析し、車両の制御に落とし込んでいる。

具体的には、前走車が4輪車であるのか、2輪車であるのか、さらにはトラックなのかを正確に認識することが可能になり、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)機能の前走車への追従制御では、ベテランドライバーが運転しているかのようなスムーズなアクセル&ブレーキ操作が行われる。

快適な運転操作をアシストする、車線間の中央を維持するようにステアリング操作を支援するシステム「LKAS」も進化。路面の車線区分線の認識能力が向上し、片側擦れていたり、道路工事でパイロンが連続して置かれていたりしても、それらをしっかり捉えて制御を継続する。

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(写真:ホンダ)

高速道路などでの運転支援機能「トラフィックジャムアシスト」のうち、ステアリング操作支援の作動範囲が広がった。従来は65㎞/h以上でステアリングの操作支援が作動していたが、新型シビックでは0㎞/hから作動。これにより、たとえば20㎞/h程度のノロノロ渋滞時であっても、LKASのアシストを受けながら走行することが可能になった。このように、新型シビックのHonda SENSINGでは、わかりやすくシステムに対する信頼感が増している。

そのHonda SENSINGに各種機能が加わり、「Honda SENSING 360」へと進化することが10月13日に公表された。

5つのミリ波レーダーと光学式単眼カメラ、そして8つの超音波ソナーによって自車周囲360度にわたる検知能力を誇り、これまでサポートしてこなかった事故多発シーンでも、事故低減効果が望めるという。これに関しては追って、取材レポートをお届けしたい。

新型シビックでは肝心の走行性能、とりわけ乗り心地が進化した。これは後席でも同様で、カーブ走行時でもロールや振動が少ない。そして走行時の車内はハイブリッドモデル並みに静かだ。

「サスペンションのチューニングとして、前輪の液封コンプライアンスブッシュの設定を見直し、後輪ではブッシュ容量を向上させたことで、タイヤが大きく素早い入力を受けた際、しなやかに受け止める能力が高まりました」(新型シビックの走行性能を担当する技術者)。

この言葉通り、路面の状況が急に悪くなったり、大きなくぼみを通過したりする道路環境では、強化されたボディとそれを受け止める足回りによって、身体に伝わる衝撃がずいぶんと小さい。残るわずかな衝撃も角がとれ、しかも多くが一発で収束するのでドライバーの目線がぶれない。がっつり受け止めて、しなやかに受け流す、そんなイメージだ。

6速MTモデルの購入比率が高い

昨今の日本では2ペダルのAT/CVTモデルの普及率が99%といわれるなか、新型シビックの初期購入者のうち35.1%(受注3000台として1053台)が6速MTモデルを選んだ。従来型にも6速MTの設定はあり、こちらでも購入比率が高かった。シビックに操る楽しみを求めるユーザーは多い。

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設計を見直した6速MT(筆者撮影)

従来型から設計を見直したマニュアルトランスミッション(MT)のシフトフィールは群を抜く。筆者の愛車であるマツダ「MAZDAロードスター」(現行のND型)もMTだが、それに近い好感触を抱いた。

ただ、1.5Lターボエンジンとの相性がやや悪い。ここが惜しい。正確には、エンジンの回転落ちが遅く、シフトダウン操作に対してエンジンの回転落ちを待つ、そんなシーンが多いからだ。

じつはこの症状、従来型のMTモデルから引き継ぐ弱点だ。新型の“待ち時間”は従来型の半分程度にまで減ったものの、シフト(前後)方向、セレクト(左右)方向ともに気持ちよい6速MTに加えて、適度なエンジンパワーと、爽快な動きを示す新型シビックを前にすると、やはり残念でならない。

「西村(筆者)さんには、従来型シビックからご指摘いただいていますが、この1.5Lターボエンジンは高出力(新型からハイオクガソリン指定のみとなり182PS・24.5kgf・m)と優れた燃費性能(WLTC値16.3㎞/L)だけでなく、燃料の多様性を保ちつつトップクラスのクリーンな排出ガス性能の確保など、いずれも相克する課題を乗り越えたと考えています。ただ、確かに回転落ちが遅く、MTでは顕著に感じられる。これはまだ課題として残っています」(エンジン担当の技術者)。

一転、大幅な改良が加えられたCVTと1.5Lターボの相性は抜群に高かった。エンジン回転数だけが先行しがちな山道の登り坂や、高速道路の合流シーンでもしっかりと回転数は抑えられ、求める速度までターボならではのトルクを活かした力強い加速が続く。

改良型CVTは、エコノミー/ノーマル/スポーツの3段階から選択できる「ドライブモード」を備えるが、筆者は素のエンジン性能をうまく引き出すノーマルモードが秀逸だと実感した。

CVTの巧妙な制御はMTとは違う気持ちよさ

一般的にCVTモデルの場合、ドライバーのアクセルペダルの踏み込み信号は最初にCVTに送られ、次にCVTが最適な駆動力を生み出すようにエンジン回転数を緻密に制御する。つまりCVTの頭脳が優秀でなければ、いくらエンジン性能が良くても爽快な走りは得られないのだ。

新型シビックのCVTは、市街地走行において低いエンジン回転数を保ちながら、ゆとりある走りを披露する。一方、山道の下り坂ではドライバーのブレーキ操作に呼応して変速レシオを低速側に固定し、エンジンブレーキを積極的に併用する。

今ではどのメーカーのCVTモデルにもこうした制御が用いられているが、新型シビックの、というより現行フィットから採用するホンダのCVT制御は非常に巧妙で、その意味でMTモデルとは違う気持ちの良さがある。

1972年に初代が誕生したシビックは来年(2022年)50周年を迎えるロングセラーモデルだ。世界での累計販売台数は2700万台を記録する。ハッチバックボディが主体の歴代モデルには4ドアセダンやクーペボディも用意された。

2001年にはホンダとして第2弾(第1弾は1999年の「インサイト」)となる「ハイブリッドモデル」や、走行性能を特化させ赤いホンダバッジで名を馳せる「タイプR」を設定した(初代は1997年)。

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今回、シビックシリーズとして11代目となる新型はパッと見では従来型のデザインを踏襲したかに思えるが、実車はずいぶんと違う。新型は各部が伸びやかでシルエットが上品だ。このあたりはぜひ、実車を確認いただきたい。

なお、新型シビックの追加モデルとして、2022年にはシリーズ式ハイブリッドモデルのe:HEV、そしてピュアスポーツモデルのタイプRの販売を控えていることがすでに公表されている。

(西村 直人:交通コメンテーター)

西村 直人

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