若年世代を苦しめる「年金枯渇論」の重罪...公的年金の見通しを経済評論家が解説

若年世代を苦しめる「年金枯渇論」の重罪...公的年金の見通しを経済評論家が解説

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/01/15
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日本は少子高齢化が進展し、年金原資は現在の高齢者に使い尽くされてしまう。若者は年金を支払っても、自身の老後には受け取れない――。そんな危機感をあおる言説があちこちで聞かれます。しかし、実際に計算すると、多少の減額はあれど、やはり年金は頼れる老後資金となることに変わりありません。若い人たちのやる気を奪うこの言説は本当に罪深いといえます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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公的年金は受け取れない?極端な言説に注意

「公的年金は破綻するから、いまの若い人は老後に公的年金がもらえない」と考えている人は少なくないようです。評論家やマスコミ等は悲観的な話を好む場合が多いので、影響されている人も多いでしょう。あるいは「公的年金には頼れないから、自分で投資して増やさないと!」といいながら投資商品を売りつける輩の言葉を信じている人もいるでしょう。

たしかに、日本の公的年金制度は少子高齢化に弱いので、心配する人にも一理あります。現役世代が高齢者を支える現在の制度では、少子高齢化で現役世代が減って高齢者世代の人数が増えていくと、高齢者1人あたりの受取額が減ってしまうからです。

しかし、公的年金が受け取れないと考えるのは極端すぎます。「若干減るけれども、老後資金の最大の柱であることには変わりない」といった程度だと、筆者は考えています。

現役世代の人数、減少してもゼロにはならないので…

現役世代の人数が減っていくといっても、ゼロになるわけではないので、公的年金がまったく受け取れないということはあり得ません。

今後の少子化の進展具合にもよりますが、20年後の現役世代の人数は概ね正確に予想できるわけで、減ってはいきますが、それほど急激に減少するわけではありません。

一方で、20年後には団塊の世代の多くが年金受給者ではなくなっているでしょうから、それによる年金財政の負担軽減も考えれば、簡単に年金財政が破綻するわけではない、ということが理解できると思います。

専門家で年金破綻を懸念している人は「極めて少数」

年金問題の専門家で、年金破綻を真剣に懸念している人は極めて少数だと思います。それほど年金に詳しくないのに「専門家」としてマスコミに登場して、不安を煽るだけの人はいるかもしれませんが(笑)。

厚生労働省が5年に1度、将来の年金に関する試算を発表していますが、それによると将来の高齢者は現在の高齢者と似たような生活水準が維持できる、ということになっています。「現役世代の生活水準が上がっていくので、高齢者の割負け感はあるだろうが」といったイメージです。

前提として置かれている経済成長率などが若干楽観的すぎるかもしれませんが、筆者がみたところ、それほど不自然ではないようです。まあ、若干割り引いて考えればいい、といったところではないでしょうか。

国民年金の半分は税金、少子高齢化の影響は軽微

少子高齢化でも年金が破綻しないと考える理由のひとつは、「国民年金の半分は税金から支給されている」という点です。この部分は、現役世代が高齢者を支えるというしくみではないので、少子高齢化の影響をストレートには受けません。

税収の主な項目は消費税、所得税、法人税ですが、消費税は消費が減らなければ入って来ますし、法人税も日本企業が元気であれば入ってくるでしょう。所得税も、現役世代がしっかり稼ぐ分が納税されるのと並んで、元気な高齢者が働いて稼ぐことによって所得税を納める、ということも貢献しそうです。

高齢者を優遇する「シルバー民主主義」を信じよう

少子高齢化で財政赤字が拡大していくと心配している人も多いでしょう。仮にそうだとして、税金で公的年金を支え続けていけるのか、不安に思っている人も多いでしょう。しかし、筆者は安心しています。

それは、シルバー民主主義を信じているからです。政治家の多くは、高齢者に冷たい政策は採りません。なぜなら、彼らは人数も多いし投票にも行くからです。

一方で、若者は少子化で人数が減って行くうえに、投票率も低いので、若者に冷たい政策を採っても選挙で痛い目に遭う可能性は大きくないでしょう。そうであれば、若者より高齢者を優遇したくなる、というのがシルバー民主主義なのです。

シルバー民主主義は長い目で考えれば大問題です。子どもより高齢者を大切にする政策は少子化を促進してしまい、遠い将来の少子高齢化を加速してしまうからです。もっとも、それは本稿の趣旨とは異なりますので、別の機会に論じることとしましょう。

高齢者の投票以外にも、政治家が気にしているものがあるはずです。年金を払わなければ、生活保護の申請が激増して財政が破綻してしまうかもしれないからです。したがって、政治家は年金の支払い原資だけはなんとしても死守しなければならないのです。

負の側面ばかりではない「少子高齢化」

少子高齢化というと、困った面だけが強調されますが、よいことが2つあります。人々が長生きするということは、健康寿命もそれと平行して伸びると期待されますから、70歳まで元気で働ける人が増えるということです。

一方で、少子高齢化ということは労働力不足になりがちなので、70歳でも元気であれば容易に働き口が見つかるということです。

少子高齢化のせいで年金支給開始年齢が70歳になってしまうかもしれませんが、少子高齢化のおかげで70歳まで働いて生活費が稼げるようになるのであれば、差し引きすればマイナスの影響を過度に心配することはないでしょう。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

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塚崎 公義
経済評論家

塚崎 公義

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